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事前調査

カノン達はロンの部屋にやってきた。


例によって、ノックをせずに入ったカノン達は、ため息をつくロンを急かして話を聞こうとしていた。


「はぁ……最近みんなノックをしてくれなくなってきたのはどういうことなのかな?」


『いや~、申し訳ないな』


「全然そんな事を思ってない声だって突っ込みはしないでおくとしようか……っと、その前に、カノンさん、Cランクへの昇格おめでとう」


「は、はい。ありがとうございます」


少し嬉しそうなカノン。


「で、通信魔道具での件に関してなんだけど……」


それだけ言って真剣な表情になったロンに、カノンとリーゼも自然と表情を引き締める。


「結論から言ってしまうと、すぐにどうこうって事は無さそう……というか、多分予定が狂ってるかな?」


『予定が狂う……つまり…セレンたちが試験を受ける、もしくは合格すること自体が予想外だったって事か?』


「うん。試験に落ちて戻ってくるまでが前提だったみたいだね」


俺の言葉にロンが頷く。


「って事は、やっぱり何か企んでたって事でしょうか?」


カノンの問いにロンは頷いた。


「うん。それは間違いないね」


そうしてその内容をロンは口にした。


要約すると、落ちて戻ってきたセレンをネタに、再び村人に対して優位に立とうとしていたようだ。


二人はセレンの村での生活を知っていたので、まさか試験に合格するとは思ってもみなかったようだ。


そこで、せっかくお金を出してやったのに落ちて帰っていたという落ち度を村側に持たせて、それを盾に優位に事を運ぼうとしていたようだ。


しかし、そんなことをしなくても今まで通りでもなんとかなったと思うのだが……。


『しかし……それだけのためにそこまで手の込んだことをするかね?』


「……私との約束があるから……って考えたんだけどそれもない気がするんだよね…」


『だよな。あの二人にとって、あんな約束はないようなものだろ?』


「それについては情報を得ているよ。なんでも、今のカノンさんと対立するのは分が悪いって思ってるみたいだね」


俺とカノンが頭をひねっていると、ロンが答えを出してくれた。


しかし……。


「分が悪い……ですか?」


『あの二人と戦ったのは一回だけで、そこまで圧倒的な感じでもなかったと思うんだけどな……』


確かあの時って、カノンは基本的に防御以外何もしていない。


まぁ、煽ってはいたか?


けどその程度だ。


警戒されるようなことはしていないと思うんだが……。


「まぁカノンさん達からするとそんな印象なんだろうけどね……。実際戦ってみた二人はもっと得体の知れない恐怖を覚えたと思うよ?」


ロンの説明によると、あの二人は戦う少し前のカノンの能力を把握しており、カノンの実力の伸びを誰よりも実感しているはずだ。


それに加え、俺の能力による得体の知れない攻撃。


こんなものを相手にするのはいくら何でも無茶苦茶だと結論付けたようだ。


「特に大きいのは、カノンさんがこのまま成長を続けた場合だろうね。自分たちはもういい年だから成長にも時間がかかる。そもそもあの二人に自分が成長するって発想があるかどうかは別にしても、もうカノンさんに追い抜かれている可能性は考えたんだろうね。だからカノンさんとは敵対したくない。でも今の状況は嫌。その結果があの計画だったんじゃないかな?」


なるほど……。


『カノンと敵対しないためにはカノンとの口約束を守るしかない。かといって、今までの優位に立っていた生活……あれ?』


まてよ?


確かカノンとの約束って今まで通りに戻るって事だけだよな?』


それだけなら別に変化なしで問題ないんじゃ?


「多分、カノンさんが怖くてだと思うんだけど、あの一件以降村の人への態度が軟化していたようなんだよ。だから、自分たちが威張れる大義名分が欲しかったんじゃないのかな?」


そういう事か……。


「…………」


ロンの話を聞いて黙り込んでいるカノンは、どうしたいのだろうか?


『カノン?お前はどうしたい?』


「……ハク、アレーナ村に行こ。もう一回話をしてくるから」


無表情のカノンがそう呟く。


あ……。


これあかん奴だ……。


カノンは無表情のままリーゼの方を向く。


「ひっ!」


カノンの無言の圧力にリーゼから悲鳴に近い声が漏れた。


「リーゼさんは待っててください。少し喧嘩してきます」


「はい!」


びしっと姿勢を正して返事をするリーゼ。


そんな二人の様子を、ロンはただただ自分も巻き込まれないことを祈りながら小さくなっているのだった。



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