あいさつ回り
学園を出発したカノン達は、その足でギルドまでやってきていた。
ここのギルドマスターたちにも世話になったし、帰る前に礼くらいは言っておかないといけないからな。
というわけで、そのままギルドに到着したカノン達は、ギルドの中に入った。
「お?あんときの嬢ちゃんじゃねぇか!」
それと同時にカウンターの方からそんな声が聞こえてきた。
「え?」
『あれは……』
タイミングが良いというかなんというか、カウンターに居たのは、ここのギルドマスターであるザルツだった。
「ギルドマスター?」
「おう!久しぶりだな!今日来たってことはこのまま王都で活動を続けていく報告か帰る報告のどっちかって所か?」
「え、えっと……はい。帰る報告です」
流石に学園の予定くらいは把握しているらしいな。
カノンが簡単に帰ることを伝えると、残念そうな顔を見せた。
「そうか…確かレセアールだったな?向こうでも頑張れよ……っと、忘れる所だった」
そんな事を言いつつカウンターの向こうに消えていくザルツ。
「なんだろう?」
『さぁ?』
ザルツは一分ほどで戻っていた。
その手に書類らしきものを持って。
「待たせたな。これを渡すのを忘れていてな」
そう言って書類の束を差し出してきた。
「これは?」
「今回の一件の報告書の写しだ。正確には報告書の中から被害者に公開してもいいって内容を抜粋したものだけどな」
なるほど、つまりカノンが知っても問題ない内容がまとめられている訳か。
「えっと…いいんですか?」
「勿論だ。むしろ、貰ってもらわないとこれをまとめた奴の苦労が報われんからな」
そう言って豪快に笑うザルツだが、それはつまりこれの為に時間を潰す羽目になった職員がいるという事か。
なんとも気の毒な……。
まぁ、今回の件の詳細が見られ 分かるのならまぁいいか?
「あぁ、その報告書は騎士団から上がってきた情報を元にしてるから向こうには行く必要もないぞ?」
「あ、はい。ありがとうございます。お世話になりました」
「おう!嬢ちゃんたちも頑張れよ」
「はい」
ザルツの激励に見送られ、カノン達はギルドを後にするのだった。
「カノン?何でここでもギルドマスターと知り合いになってるの?」
ギルドから次の目的地に向かう際中、リーゼがそんなことを呟く。
「え?気がついたらいつの間にか?」
カノンがそう答えるが、確かにいつの間にかって感じではあるよな……。
『考えると、俺たち普通の冒険者とは言えないような事ばっかりだよな……』
「……そう言われると……」
「だからカノンに追い付くの大変なんだよね……」
これまでを振り返って俺に同意するカノンと、そんなカノンを後目に遠い目をするリーゼ。
「そういえば……あのアインって子、試験受けてたんでしょ?どうだった?」
ふと、思い出したようにリーゼが聞いてくる。
そういえばアインの試験はリーゼは知らないんだよな。
「あ、セレンは合格で、アインは……補欠?だったみたいだけど…」
『あぁ、一応アインも合格ラインには滑りこめたっぽいな』
あの後話を聞いたら、繰り上げ合格になっていたっぽい。
まぁ、セレンとは違う学科になりそうであるが……。
セレンは身体強化特化の近接型で、アインは魔法特化になりそうだからな。
「……ん?ちょっと待って?セレンって…あの子も受けてたの!?」
『そういえば言ってなかったっけ?セレン、強くなってたぞ?』
「うん。というか学園の人と比べても身体強化は上手だよね~」
『多分セレンが合格した理由の一つはそれもあるんだろうな。あんな才能を放っておくわけがないだろうし』
「でもアインは?」
『多分、潜在能力の評価では互角、もしくはアインに分があるだろうな。けど、あの試験は生まれ持った能力をどう生かすか、どれだけ扱えるかも見ていたから、才能だけで合格できるような試験にはなってなかったな』
それでもアインが補欠に引っかかったのは、その才能のおかげかもしれない。
寧ろ、もしアインが努力家だった場合はもっと違う未来があっただろうに。
まぁ、まだ若いんだしこれから頑張ってくれればいいかな?
「そういえばアインって子、セレンに負けて悔しがってたりしなかったの?」
「悔しがるって言うか……現実を思い知ったみたい…」
『まぁ…あのまま自分を見つめなおしたら少しは変わるんじゃないか?』
「なるほど……、じゃあ少し楽しみだね」
「楽しみ……かな?」
リーゼの言葉にカノンは少し首を傾げるが、ほんの少しだけ嬉しそうな声になっていた。
「確かに……アインが変わればセレンも助かるだろうし…」
あ、そっちの意味だったのね……。




