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セレンとマルガレーテ

セレンとマルガレーテを互いに紹介した後は、そのままセレンの泊っている宿までセレンを送ることになった。


その道中、アオがセレンの事を気に入ったのかセレンの腕の中に納まり、何故かそれに対抗する様にカノンが俺を召喚したりと色々あったが、何とかセレンの宿までやってきた。


その道中で聞いた話だが、入学は一か月後でどうしてもレセアールに帰るには厳しい期間なので、このまま一週間ほどこの宿で過ごしそのまま少し早めに学園の寮に入るらしい。


その間の費用はカノンの両親が出してくれているらしいが、それを聞いたカノンは顔をこわばらせていた。


そして、何とか早めにレセアールに戻ることに決めたのだった。


そんなわけで宿の前で、カノンはセレンに暫しの別れを告げる。


「じゃあセレン、学園生活頑張ってね」


そう言ってカノンはセレンの手を取る。


「うん……頑張る……カノンちゃんは?」


「私はもう少ししたらレセアールに戻るつもり。で、その後は雪の迷宮に行ってみよっかなって」


「雪の迷宮……冒険者の人の?」


「うん、興味があったからね。条件も満たしてるし行ってみよっかなってね?」


「私も頑張るから……何年かかかるけど……その時は……」


「うん。一緒に冒険しよ」


セレンの言葉を遮ってカノンが言うと、セレンがわずかにほほ笑んだ。


嬉しそうなセレンがこちらに視線を向ける。


「ハクさんも……ありがとう…」


『おう。学園生活頑張れよ。カノン共々応援してるからな!』


直接お礼を言われるとは思ってなかった。


まぁ、こういうのも悪くないか。


「セレンさん。もし学園で困ったことがあったらいつでも訪ねてきてください。微力ながらお助けしますので」


「ありがとう…ございます…」


マルガレーテにそう言ってもらい戸惑うセレン。


しかし、少しほっとした様子も見せていた。


「じゃあ元気でね?」


「うん」


そんな短い言葉を最後にカノンはセレンに背を向ける。





「ほらアオちゃん!帰りますよ!」


「キュー!!」


後ろからそんなやり取りが聞こえてくるが……。


「ハク?」


『なんだ?』


「いつも通りだね」


『まったくだ』


何処か締まらない。


しかし、俺たちらしくていいかもしれない。















セレンと分かれたカノンは、アイリスの元に向かっていた。


レセアールの事は気になるが、今はアイリスの助手をしているのだ。


勝手に帰るわけにも行かない。


このまま帰るにしろ仕事を完遂してから帰るにしろ、アイリスへの相談は必須だという結論になったのだ。


まぁ、成り行きで着いてきただけで事態を殆ど把握できていないマルガレーテに今の状況と今後のカノンの動きを説明しつつ学園を目指していた。


「なるほど……カノンさんの懸念も最もだとは思います……しかし…」


カノンの説明を聞いたマルガレーテは一定の理解を示してくれたが、複雑な顔をしている。


「それはカノンさんがやるべきことではない気がするのですが……」


確かにそうだ。


いくらカノンの両親が絡んでいるのかも知れないとはいえ、今は縁を切っている。


そもそもこういった事態は領主軍などの仕事であるのは間違いない。


まぁ、カノンがそれで引き下がれるとは思っていないが……。


「それはそうかもですけど……村の人たちは何も知らないかも知れません……せめて連絡さえ出来れば……」


最悪ロンにでもこのことを伝えて探ってもらう……のは難しいか……。


ギルドは慈善事業ではないし、嫌な予感がする程度で動いてくれるわけがない。


まぁ、ロンはあの二人の事をよく知っているし、もしかすると動いた方が良いという判断をしてくれるかも知れないが、それでも個人的な判断を下していい立場ではないだろう。


どちらにせよ、一旦ロンに相談できれば……。


待てよ?


そういえば前にロンが言ってなかったか?


ギルド専用の長距離通信の魔道具の話……。


いくら何でもCランクのカノンが頼んで使わせてもらえるとは思えないが……。


もしかするとアイリスなら……。


『カノン、何とかなるかも知れんぞ?』


「何とか?」


『ここからレセアールまで連絡できるかも知れないって話だ』


「どうやって!?」


俺の話にカノンが食いついてきた。


『少し落ち着け!どちらにせよアイリスには話をしないといかん』


「……うん」


完全に落ち着いたとは言えないが、手段がある可能性が浮上した段階では充分に落ち着いているだろう。


「何か思いついたようですね。もし私に出来ることがあるなら遠慮なく言ってください。協力は惜しみません」


カノンの様子を見守るようなマルガレーテに少し安心感を覚えつつ、カノンは頷くと学園まで急ぐのだった。

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