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見学

翌日、朝から始まる入学試験のため、学園は休みとなっているため、殆どの生徒が町へ繰り出したり、部屋で寝ていたりする中、カノンは学園の闘技場へ来ていた。


あの後部屋に戻ってからマルガレーテに聞いてみた所……。


「見学ですか?普通に出来ますよ?」


とあっさり言われたのだ。


どうやら、実技試験に関しては見学希望の生徒もいるらしく、そのため学園の関係者には公開されているらしい。


因みに、生徒たちが見学をしたい理由だが、有望な新入生を見つけて自分たちの研究会に誘うためらしい。


研究会とは、部活動のようなもので、放課後などの時間に生徒たちが思い思いの魔法や技術、スキルなどを研究している場所のようだ。


言ってしまえば、部活動の勧誘のために有望そうな人物の目星をつけ、実際に入学したときに勧誘するため、今のうちに品定めをしておこうという事だろう。


そんなわけで、今この場には上級生らしき生徒を中心に少なくない人数が見学に来ている。


「でもカノンさんが見学したいだなんて……少し意外でした」


カノンの横でそう言って笑うのはマルガレーテだ。


彼女はどうせ暇だからと、カノンに付き合ってくれのだ。


そんな彼女の言葉にカノンが苦笑を返す。


「あはは……少し…気になってることがあって……」


そう言って再び試験をしている闘技場に視線を戻すカノン。


『やっぱりアインの事気になってるんだな』


最初は俺の興味本位で見学できるかどうかを聞いただけだった。


しかし、カノンは見学が自由にできると分かった瞬間にここに来ることを決めていた。


「……正直言って分からない」


しかし、カノンからはそんな返事が返ってきた。


『分からない?』


「アインの事、気にならないって訳じゃないんだけど、でもなんだか見ておかないといけない気がして……」


歯切れが悪そうに苦笑するカノン。


第六感って奴だろうか?


『まぁ、見ておいて損はないだろう……っと、あれアインじゃないか?』


闘技場の一角を指す。


「あ……そうだね」


カノンが心底嫌そうにうなずいた。


俺たちの視線の先にいるのは、アインで間違いない。


あのトラブルメーカーが少しは成長していることを祈りつつ、その試験の行方を見届けることにした。








「なんか……変わってないね」


試験の様子を見ていたカノンが残念そうに呟く。


試験内容は、闘技場に置かれている的目がけて魔法を撃つのと、教師陣+αとの模擬戦となっている。


模擬戦と言っても、あくまで実戦に近い形での現在の実力を確認するのが目的で本格的な戦闘ではない。


因みに、+αの部分にアイリスも入っていたりする。


現在アインが行っているのは魔法を撃つだけの試験なのだが、見ている限り前にカノンと戦った時から全く進歩していないようにしか見えない。


威力に関しても、こうやって同年代の子供と比べるとよく分かるのだが、平均よりやや下と言った所だ。


まぁ、あくまで優秀な子供が集まっているので平均に近いだけでも十分だろうが。


アインの潜在能力の優秀さはよく分かったが、それも全く生かしきれていないだろうな……。


「…………」


不機嫌そうな表情でアインに視線を向けるカノン。


『どうした?』


「あんなのなら……セレンが試験受けた方が絶対いいに決まってるのに」


あぁ……。


確かにセレンの身体強化はレベルが違うからな。


ここの授業を見ていても、セレンと同じだけの身体強化を使いこなせる生徒はそれほど多くはなかったし。


この中にも、セレンと同じだけの技術を持つ子供が何人いるのか……。


そう思いつつ闘技場全体を見渡していく。


すると、アインの居るのとは反対側で、一人やけに動きのいい受験生がいた。


『カノン?向こうにやけに動きのいいのがいるぞ?』


「え?あ、本当だ……あれ?」


丁度教師陣との模擬戦だったようで、変則的な動きで試験官に向かっていく少女らしき姿を見て、カノンが目を見開いた。






「セレン!?何でいるの!?」


珍しく取り乱したカノンの声が、周囲に響いた。


え?


『あれ、セレンなのか?』


アインとは違い、距離が離れているので識別ができない。


しかしカノンの表情は、本人と確信しているうえでの驚きに違いない。


しかし……試験は受けないはずじゃなかったのか?


それがどうしてこんなところに……。





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