封印者とは
少し恥ずかしそうにしているカノンにはクラス全員の視線が集まっている。
まぁ、その視線が原因で恥ずかしいのだろうが……。
しかし、カノンの横にいるロバートは平常運転のようだ。
「カノンさん、ありがとうございます。っとまぁ、このように封印者には封印している魔物の能力を行使する能力があります。カノンさんの場合は竜種を封印しているので竜装スキルという形で発現していますね。因みに、アイリスさんの場合は獣装と言って、獣人のような姿になれるはずですよ」
ロバートによる簡単な説明が終わったところで、カノンは竜装を解除してマントを羽織る。
「せんせー!質問していいですか?」
ロバートの話が途切れたタイミングで、生徒の一人が手を上げる。
「はい、構いません」
ロバートが促すと、その生徒は口を開いた。
「実技の時カノンちゃんはスライムみたいなもの出してたけど、あれも封印者の能力なんですか?」
よく覚えていた、というか、よく見ていたものだ。
その質問にロバートは少し困惑した様子を見せる。
「正直言ってしまうと、私にはわかりません」
その回答に、質問した生徒だけでなく他の生徒からも不穏な空気が流れる。
「先ほども説明した通り、封印者の能力は様々です。少なくとも、同じ能力を持った封印者は存在しないと言っても過言ではないでしょう。何故だと思いますか?」
「…………封印者の数が少ないから?」
生徒の誰かがそんな事を呟く。
「はい、それもあります。封印者になる条件は簡単であり難しい。魔物を自分の中に封印するだけと言ってしまえば簡単かもしれませんが、その為の前提条件がとても厳しいものです。しかもその条件は後天的には満たせない。そういった理由から、この国にも封印者は10人もいません」
ロバートの説明に驚きの声が上がる。
ここまで詳しい説明はされていなかったのだろうか?
「その条件は授業でやったはずですが、覚えている人はいますか?」
あぁ、やってはいたのか……。
ロバートの質問に、クラスの一番後ろ、マルガレーテの手が上がる。
「一つ目は魔弱であること、二つ目が魔力許容量が非常に高い事。以上の二つです」
流石マルガレーテ、知っていたようだ。
「はい、その通りです。この条件のうち、魔弱というのは珍しいとはいえ普通に存在します。問題となるのはもう一つの魔力許容量の方ですね。まず、基本的に魔弱の人の魔力許容量はとても低いです。そもそも魔力を殆ど持っていないのですから。しかし、ごくまれに魔力の許容量のみが異常に多いことがあるのです。その場合のみ、封印者の為の前提条件が整うわけですね」
そこで言葉を切ったロバートはカノンの方を見る。
「っとまぁ、そんなわけで私もまったく知らないのです。カノンさん。もしよろしければ皆さんに説明していただけませんか?勿論、冒険者として口外したくないことは無理にとは言いません」
あぁ、カノンに直接聞くことにしたな。
カノンは少し迷うそぶりを見せたのち、口を開いた。
「えっと……あれはハク……私の中の竜の能力です。ハクは封印されていても多少の能力が使えます」
大まかにはぼかしたものの、要点は抑えた説明だった。
カノンの説明を聞いた生徒の一人が手を上げた。
「あの、カノンさんにとってそのハクって言う竜はどういう存在なんですか?」
その質問が出た瞬間、ほぼ全員の視線がカノンに集中した。
なるほど。
人と竜。
マルガレーテとアオという前例こそあるものの、どうしても気になってしまうようだ。
寧ろ、こういった事を気にしてくれる事こそ、健全な教育がなされている証拠だな。
俺たちの事を武器や道具としか見ていないのなら、こんな質問は出てはこないだろうし。
カノンなら即答してくれるかと思ったのだが、さっきまでよりも真剣に悩み始めてしまった。
しかし、すぐに考えがまとまったのか、ゆっくりと口を開いた。
「ハクは……命の恩人です。そして、私の大事な相棒です!」
命の恩人……。
確かに命を助け合った事もあるが、俺が嬉しかったのはその後ろだ。
カノンがはっきりと言い切ってくれた。
正直とてもうれしい。
俺がそんな感傷に浸っていると、いつの間にやらカノンから詠唱が聞こえ始めた。
『え?おい?カノン?』
この詠唱は……。
嫌な予感がしつつももう止める暇はない。
いつの間にかカノンの魔法は完成していた。
「召喚!」
カノンの声が聞こえるのと同時に、俺の意識は光に包まれた。




