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特殊クラスの授業

アオにじゃれつかれること数分。


教室の扉が開き教師が入ってきた。


何か見覚えのある気もするが……。


「ハク?あの人どこかで会った?」


カノンも同じだったようだ。


『俺もそんな気がしてるんだが……いまいち思い出せんな……』


あったことはあるはずなんだが……。


そんな事を考えている間にも教師は準備を終え、口を開く。


「えっと、今日は特殊クラスについてのおさらいを行います。で、皆さんも気づいていると思いますが今日はゲストが授業を見学します」


教師の言葉に教室内の視線が一斉に後ろにいるカノンに向く。


「えっと、この授業を見学させてもらいます。よろしくお願いします」


座ったままで軽く会釈をするカノン。


「カノンさんの事は皆さんも知っていると思います。最初の授業で素晴らしい模擬戦を見せてくれました」


教師の言葉を聞いて、ようやく思い出した。


リーオに出番を取られていた教師で確か名前は……ロバート…だったか?


俺の記憶があいまいなのか、ロバートの存在感が薄いのか……。


そんな事を考えている間にも、ロバートは話を続ける。


「さて、皆さん知っての通りカノンさんも特殊クラスの冒険者です。せっかくなので、今日は彼女のクラスについての話から始めましょう」


そう言ってロバートは黒板に何かを書いていく。


一番上にはクラス。


そしてその下のは封印者。


「ではまず封印者(シーラー)についてですが……マルガレーテさん。封印者(シーラー)の定義を説明してください」


いきなり話を振られたマルガレーテだが、特に動揺したそぶりを見せることなく立ち上がった。


「はい。封印者(シーラー)とは、魔物、もしくはそれに類する者を自身の中に封印している場合に発生するクラスです」


マルガレーテはそこで言葉を切って座る。


「ありがとうございます。その通り、封印者(シーラー)とは自分の中に魔物などを封印している人の事を指します。では、封印者の特徴として、どのような能力を行使することが可能だと思いますか?」


先ほどのマルガレーテに対する質問とは違い、今度はクラス全員への問いのようだ。


しかし、誰も答えようとはしない。


「……答えなんてないんじゃないか?魔物によって能力も変わんだろ?」


クラスの誰かがそんな事を呟いた。


確かに、封印者(シーラー)の能力は封印されている者の影響をもろに受ける。


カノンとアイリスで全く違う能力を使えるのがいい例だろう。


しかし、今回の問いに関しては今の呟きはかなりいい線を行っていると思うぞ?


封印されている中身によって能力が変わる。


そこまで理解しているのであれば、答えは分かっているも同然だろう。


案の定、ロバートは少し笑っている。


「確かにその通りです。しかし今の言葉の中に正解はありますよ?」


ロバートの言葉に生徒たちが考え込む。


やがて、前の方にいた一人の生徒がゆっくりと手を上げた。


「……封印している魔物の能力……ですか?」


その回答を聞いたロバートが笑顔を見せる。


「そうですね。封印している魔物によって様々な能力を行使できる。これが封印者(シーラー)の特徴です。せっかくですし、カノンさん」


「は、はい!」


まさか呼ばれるとは思っていなかったカノンが慌てたように立ち上がる。


「もしよろしければ能力を披露していただけませんか?」


あぁ、確かにこういうのは実例を見せるのが早いからな。


「は、はい。大丈夫です」


カノンはそう返事をすると、そのまま教壇へ向かう。


というか、俺忘れられてるぞ?


緊張しすぎだ。


『アオ?少し離してくれないか?』


「キュ!」


どちらにせよこのままでは動けないので、アオに頼んでみる。


するとアオは素直に離れてくれた。


俺は翼を広げて他の生徒たちの頭上を飛び、カノンの元まで移動する。


『カノン、俺を忘れるなよ』


「あ、ごめん」


俺に声を掛けられてようやく俺を召喚したままということに気が付いた様子のカノン。


せっかくなので、生徒たちの視線が俺とカノンに集中している中、俺は召喚を解除してカノンの中に戻る。


カノンは俺が戻ったことを確認すると、羽織っているマントを脱いで小さく口を開いた。


「竜装」


カノンが呟くのと同時に、カノンから魔力が溢れる。


そして、カノンの体には所々に純白の鱗が現れ、瞳孔の形も変わった。


その変化を目の前で見た生徒たちが、一様に息をのむ。


カノンに見とれるような、そんな静まり返った空間の中で、その中心にいるであろうカノンだけが恥ずかしそうにしていたのだった。



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