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二回戦

約20分ほどの休憩をはさんで、今度はアイリスの出番となった。


休憩時間の方が長いとは思うが、それは仕方がない。


カノンと張り合ったニコが完全に回復するまでそれだけかかってしまったのだから。


因みにそれ以外の生徒は、5分も休めば復活していたし、途中から手を出さなくなってしまったのですぐさま二回戦を行える生徒もいた。


それはそれで問題になりそうだが、教師も何も言わないことにしたようだ。


話を戻して、アイリスと対峙するのは生徒たち全員。


カノンは生徒からの懇願によって、手出しはしないことになってしまった。


いや……、最初は手出しするつもりだったんだよ。


でもさっきの異次元の戦いで戦意を喪失した生徒たちが、泣いて懇願してきたのだ。


これには教師も思う所があったらしく、最初の予定を曲げてカノンの参戦をなくしたのだ。


というわけで、カノンは邪魔にならないところで、逃げるアイリスとそれを追いかける生徒たちを眺めているのだが、不思議なことにさっきよりも全員の動きがよくなっている。


「さっきは手加減してたのかな?」


それを見たカノンが不思議そうに呟いた。


『いや、どっちかって言うと、やけになってるって感じか?』


実戦ではまずやらない無茶苦茶な動きも多々見られる。


怪我するリスクのない鬼ごっこという事を、ようやく理解したのだろうか?


もしくは、実戦を想定した動きではアイリスを捉えることすら不可能だと悟ったのか……。


生徒全員がバラバラに近いとはいえ攻めているおかげで、アイリスは休む暇はなさそうだ。


まぁ、アイリス自身は楽しそうな顔をしているのでまだまだ余裕なのだろうが……。


しかし、その生徒たちのおかげでニコにとっても有利な状況になった。


『ニコもさっきより攻めてるな』


「うん、他の生徒さんを利用してるね」


興味深そうにニコがアイリスに迫る様子を眺めるカノン。


既に開始5分ほどが経過している。


さっきから何度かニコがアイリスに迫るのだが、流石はアイリスと言うべきが、カノンよりも危なげなく躱している。


しかも、カノンは速度特化の魔装を使っていたというのにアイリスが使っているのは獣装だ。


白虎の特性もあるのだろうが、それでも元々の能力が高いからこそできる芸当だろう。


しかし、それを追いかけているのがニコだ。


彼女は他の生徒が攻めて、アイリスがその対応をしている隙に迫って仕掛ける。


さっきまでとは動きが違う。


「ニコさん、さっきは本気じゃなかったのかな?」


カノンがそんな事を呟く。


しかし、それは違うと思う。


『いや、一人だけで戦うときの本気ではあっただろうな。さっきはあいつ以外誰も攻めてこなかったから孤軍奮闘になってただけで……』


実際、カノンよりも格上のアイリス相手に、さっきのカノン相手の時より攻める頻度が多い。


カノンのように、自分だけを見ている相手でない限り、そのスピードで攻められるのだろう。


「もしかしてニコさんって、周りを使うのが上手?」


カノンがニコの戦いを見つつそんな事を言う。


『それはあるだろうな。周りにあるものは全て使ってる。しかも、あのやけくそな動きに自分が合わせに行ってるんだ。難易度は高いぞ』


そもそも、同意もなしに周りの生徒を陽動に使うなど、自分が相手に完璧に合わせないと成立しない。


利用とは言ったが、協調と言った方がしっくりくるかも知れないな。


実際、結果だけを見ていると利用しているように見えるが、動き自体に目を向けると見事な共闘に見えなくもない。


共闘相手がニコの事を全く気にしていないことから目を背ければ……。


『さて、カノンはこの勝負どうなると思う?』


何となく、カノンに聞いてみる。


カノンはこの鬼ごっこをどう予測しているのか、それが気になっただけなのだが。


「アイリスさんが勝つ。そうしか思えない」


カノンから帰ってきたのは、アイリスの勝利を確信した言葉だった。


まさか、アイリスが負けるわけないって妄信している訳じゃないよな?


しかし俺の心配は杞憂だった。


カノンはアイリスを観察しながら口を開いた。


「アイリスさん、ニコさんの動きを全部見てる。分かりにくいけど全く油断してない。ニコさんの陽動も、通じているようで通じていない」


なるほど、よく見ているようだ。


確かにアイリスは、陽動に気を取られているように見える場面でもニコの動きには気を配っている。


ニコを一番の脅威と判断しているようだ。


陽動が上手くいっているのならいざ知らず、既にばれている陽動で負けることはないだろう。


寧ろ、陽動が上手くいっていると誤認しているニコが勝つことは不可能だ。


恐らくこの勝負、アイリスがAランク冒険者としての実力を示して終わるのだろうが、生徒たちの心が折れないか、それだけが心配になってしまうのだった。




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