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二人の訓練

「はぁ…はぁ…ありがとうございます」


カノンと向かい合って肩で息をするマルガレーテ。


「こちらこそ、ありがとうございます」


対するカノンは大して息は上がっていないが、多少の疲労はあるようで一息ついている。


最初はカノンとマルガレーテは別々で訓練をしていて、途中から一緒の訓練をしていた。


そして、最後の仕上げに軽い模擬戦をしたのだが、その模擬戦の段階で既に息の上がっていたマルガレーテと、疲れは見えていたがそれでも普段やっている訓練だけあって、問題なく動けるレベルだった。


それもあってカノンの圧勝で終わった訳だ。


「カノンさんは今日はどのような予定ですか?」


息を整えつつマルガレーテがカノンに聞いてきた。


それにカノンは困ったような顔をする。


「それが……何も聞いていないんです……」


そういえばアイリス何も言ってなかったな。


「私は一限目の授業は出ないといけませんのでそろそろ失礼しますね」


「はい、私も依頼が無ければ行ってみます」


そういいながらシャワーを浴びるために部屋に戻っていくマルガレーテを見送ったカノンは、訓練場から出て教師用の寮に向かう。


寮の場所自体は聞いていたので、部屋は分からないが誰かに聞けばアイリスの部屋、もしくは居場所を教えて貰えるだろうとの考えだ。


まぁ、アイリスの事だしひょっこり現れるだろうとは思っているが……。





















「ここ?」


『そのはずだ』


結局、寮に行ってもアイリスはいなかった。


ただ管理人に聞いた所、職員寮の裏手にある広場で体を動かしているそうなので、その広場までやってきた。


最初は広場と聞いたので小さな公園のようなものかと思ったのだが、どうやら違ったようで、隅っこの方にベンチが置いてあるだけで後は何もない開けた場所だった。


そこでは教師らしき数人が訓練をしていて、そのどこかにアイリスも混ざっているような気がしている。


『お?あれじゃないか?』


広場を見渡していると、不意にそれらしき人影が見えた。


隅の方で模擬戦をやってる二人組だ。


「あ、そうかも……ってリーゼさんかな?」


アイリスらしき人影と模擬戦をしているのはリーゼのようだ。


カノンはすぐに二人に向かって駆けて行った。










「アイリスさん?」


駆け寄りつつアイリスに声を掛けるカノン。


「え?あらカノンちゃん。おはよう」


アイリスもカノンに気が付いたようで返事をしてくれた。


「おはようございます……えっと…リーゼさんは……」


アイリスの前で地面に突っ伏しているリーゼに視線を移すカノン。


「ぁ……カノン……おはよう……」


それだけ言うと再び沈黙してしまったリーゼ。


さっきまでは無事だったんだ。


うん。


カノンが駆け寄っていく間にアイリスの一撃で撃沈していただけで……。


『……大丈夫なのか?』


「…………」


「……アイリスさん?」


リーゼに声を掛けるが返事がない。


そしてその様子を見たカノンからアイリスへ視線が飛ぶ。


「だ、大丈夫よ……多分……」


最後の多分が引っかかるな……。


『で、何でこうなってるんだ?』


気にはなるがまずは原因を確認しないことには話が進まん。


しかしアイリスは少し難しい顔をする。


「リーゼちゃんには口留めされてるんだけど……逆効果になりそうだしいいかな……」


独り言のようにそう呟いたアイリスは、カノンに向けて真剣な表情をした。


「リーゼちゃんには口留めされてたんだけど、本人は気を失ってるようだし教えるね」


そう言ってアイリスは事の次第を説明してくれた。


結論から言うと、リーゼはアイリスに教えを乞うていた。


どうやら、最近リーゼはカノンと自分を比べて、自分の能力の低さを気にしていたそうだ。


更に、カノンと一緒に依頼を受けていく中でカノンの成長速度を実感し、このままではカノンと一緒のパーティではいられなくなると危機感を抱いてしまったらしい。


しかし、カノンや俺にそんな事を相談できるわけでもなく、役に立てることを探しつつ、密かに訓練をしていたようだ。


とは言っても、自分一人でやる訓練など限界がある。


そんなときに、アイリスと相部屋になった。


これはチャンスとばかりにアイリスに頼み込んだらしい。


しかし、カノンに追い付こうと思えば普通の訓練では不可能だ。


というわけで、さっそく今朝からアイリスによるスパルタ訓練が行われていたらしい。


「って訳よ。で、カノンちゃんには心配かけたくないから内緒にして欲しいっていわれてたの」


そういいながら倒れたままのリーゼに視線を送るアイリス。


アイリスの説明を聞いている間に、カノンによって突っ伏した姿勢から仰向けにされ、そのまま枕代わりにカバンを頭の下に敷かれている。


そして、アイリスの説明を聞いたカノンは戸惑った様子ながら納得したように頷いた。













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