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マルガレーテとアオ

「アオちゃんと出会ったのは半年くらい前でしょうか?出会ったと言っても卵から生まれたって言い方が正しのでしょうが」


「キュ?」


マルガレーテが思い出す様にいう。


卵か。


そういえば俺は卵なんてあったっけ?


その卵という単語にカノンが反応を見せた。


「卵ですか?そんなものどうやって……」


カノンはどうやって竜の卵なんて手に入れたのか、そっちが気になったようだ。


確かに普通は見ることも難しいだろうしな。


「なんと言ったらいいのか……一言で言えば拾った……ということになるんでしょうか?」


悩みながらマルガレーテが説明をしてくれた。


それによると、マルガレーテが竜の卵を拾ったのは王都の近くではなく実家の近くだったらしい。


マルガレーテの実家、正確にはマルガレーテの家の領地は、レセアールの隣、アレーナ村を抜けた先に広がっているそうだ。


そして、その領地はさほど広いわけではないのだが、大部分が海に面しており漁業が盛んでかなり裕福な集落の多い場所らしい。


マルガレーテが卵を拾ったのは数年前、海岸に瀕死のスカイドラゴンが打ち上げられるという事件があったらしい。


事件と聞くと大げさに思えなくもないが、竜は生態系の頂点に位置している生き物だ。


そんなものが瀕死の状態で海岸に打ち上げられているという状況は、緊急性も含めて事件以外の何物でもなかったのだ。


そして、しかも、瀕死とは言えスカイドラゴンもまだ生きている。


周囲には領主の私兵や冒険者までが配備され、厳重な警戒態勢がしかれていたそうだ。


そんな厳重な警備を掻い潜って、スカイドラゴンに近づいたものがいた。


何を隠そうマルガレーテだ。


…………。


「マルガレーテさん?私が言うのも変ですけど……どれだけやんちゃだったんですか……」


ここまでの説明を聞いたカノンから呆れたような声があがる。


同感だけどな……。


「い、いえ。あの頃は怖いもの知らずだったと言いますか……」


マルガレーテがそんなことを言うが、怖いもの知らずにもほどがあると思うんだよ……。


『意外と無鉄砲……活動的だったのか……』


「ハク?それ言い換えても意味ないからね?」


カノンから冷たい突っ込みが入ったが気にしない。


「あ、あの頃は好奇心旺盛だったんです……」


自分で言い出したことなのに真っ赤になって撃沈するマルガレーテ。


そこからマルガレーテが復活するまで、話は中断となってしまった。












暫し後に復活したマルガレーテから聞いた続きだが、マルガレーテが近づいた時点では瀕死とはいえ一応スカイドラゴンは生きていたようだ。


そして、自身に人間、マルガレーテが近づいてくることに気が付いたスカイドラゴンは、わずかに身じろぎをしたらしい。


どういうつもりか、敵だと思って反撃しようとしたのか、もしくは……。


話は変わるが、スカイドラゴンには決まった巣は存在しないらしい。


普段は雲の高さを飛び続けており、餌を探す時だけ標高の高い山に下りてくる。


それ以外に地上に降りてくることもないようで、なんと寝るときすら飛んでいるのだという。


そして、そんな生態でどうやって卵を産むのかと言えば、単純に抱えているだけらしい。


スカイドラゴンのメスは卵を産むときに腹部の鱗が生え変わり、新しい鱗には卵を抱える突起があるらしい。


その突起に卵をひっかけたまま生活し、子供が生まれてくるのを待つのだという。


マルガレーテが出会ったスカイドラゴンは、まさに卵を抱えた個体だったのだ。


スカイドラゴンが身じろぎをしたとき、一つの卵がマルガレーテの方に転がってきた。


そして、マルガレーテがその卵を拾い、それを見届けるかのようにスカイドラゴンは永眠したのだという。





「私が受け取った卵以外は、すべて割れてしまっていました。私には、あの竜が子供を私に託したのだと、そう思えたのです」


そういいながらアオの頭をなでるマルガレーテ。


「話を変えますが、カノンさんと白竜さんは竜の卵がどのように孵化するのかご存知ですか?」


『どうって……どうなんだ?』


一瞬、普通に温めれば孵るのかと思ったが、このファンタジーな世界でそれもないだろう。


「私も知りません」


カノンも知らないようだ。


「私も最初は知らなかったのですが、竜の卵は周囲の魔力を吸収して成長するんです。本来は母親の魔力を浴びて数か月程度で孵化するのでしょうけど、私達人間の魔力では力不足だったようで……ようやく生まれたのが半年前の事です」


なるほど……、ということはアオは生後半年……。


その赤ん坊相手に俺はムキになって互角の空中戦をしていたのか……。

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