寮生活
『で、何で俺は召喚されたんだ?』
「キュ?」
首を傾げるアオを後目にカノンに聞く。
「え?だってアオちゃんがハクを呼んで欲しいって……」
「ごめんなさい白竜さん。この子あなたの事気に入ったみたいで……」
カノンの言葉から俺が何を言ったのか大雑把に理解したであろうマルガレーテから謝罪が入るが、まぁいいや。
どうせその内召喚されていただろうしな。
ついでにもう話しかけてもいいか。
『あー、気にしないでくれ』
「え?……もしかして白竜さん?」
突然声を掛けられて一瞬驚いた顔をしたマルガレーテだが、すぐに目の前にいる俺だと分かったようで不思議そうな顔を向けてきた。
「これが念話ですか?頭の中で声が聞こえるような……不思議な感覚ですね……」
おぉ……。
詳しい感想を聞いたのは初めてだな。
『まぁそういう事だ。俺は念話で話ができるからな。で、アオの事なら気にしなくてもいいぞ。って痛い痛い!尻尾を噛むな!』
マルガレーテと話をしているとアオがいきなり尻尾に噛みついてきた。
「アオちゃん!?何してるの!?」
マルガレーテが慌てて引き離す。
「キュ……」
そしてマルガレーテの腕の中で不満げに鳴くアオだが……。
『俺、何処に気に入られる要素があったんだろうな?』
むしろ、模擬戦とは言え粘液で絡めとったり岩に閉じ込めて落としたりと、嫌われる要素しか思いつかないんだが……。
「あー、前にも言ったかもしれませんが、アオちゃんは同じ竜に会うのは初めてで……親近感のようなものを感じているのかも知れません」
申し訳なさそうに説明してくれるマルガレーテ。
『親近感か……俺も感じてないことはないが……』
「そういえばハクもアオちゃん以外の竜には会ったことないんだよね?」
カノンが思い出したように言う。
『あぁ、むしろ俺自身、他の竜と一緒にしていいのか分からん』
なんせ竜には違いないがキメラドラゴンは竜魔法も持っていないし、通称最弱の竜だ。
「キュ?キュキュ!」
そんな愚痴のようなものをこぼした俺に、アオがすり寄ってきた。
慰めているつもりなんだろうか?
「キメラドラゴンでも竜には違いありませんよ。少なくともアオちゃんはそう思っているようですし」
そんなアオの様子に微笑みながら、マルガレーテはそう言ってくれた。
『ありがとな』
「キュ?キュ!」
アオだけに念話を送ると、うれしそうな声がした、
うん。
正直話の中身理解しているのか微妙な気はするんだが……。
まぁいいか……。
そのままカノンとマルガレーテは話し込んで、何故か俺たちの出会いの話をカノンがしていた。
話を聞いていると少し恥ずかしくなってくるな。
「……なのでハクは私の命の恩人なんですよ」
自慢げに締めくくったカノン。
「まさに運命のような出会いですね」
マルガレーテは目をキラキラさせながら感慨深そうに口にした。
こういった、運命とか好きなのだろうか?
『運命かどうかはさておいて、確かに奇跡だったのは違いないだろうな……』
まぁ俺も当時を思い出して俺も奇跡を信じたい気持ちにはなっている。
「奇跡には違いないんだろうけど、ここまで来ると運命って言われても私は信じるよ」
カノンがそう言ってほほ笑む。
っと思ったら、すぐにマルガレーテに視線を戻した。
「で、そっちはどうなんですか?」
わくわくした様子のカノンがマルガレーテに詰め寄る。
「え?そっちとは……私とアオちゃんですか?」
食い気味のカノンに苦笑しつつも、カノンの勢いに押されているように見える。
「はい、私、興味があったんです!二人はどんな出会いだったんだろうって!」
珍しく興奮したカノンが叫ぶように言う。
「え、えっと……あまり面白い話ではないのですが……よろしいですか?」
「ぜひ聞かせてください!」
即答である。
かくいう俺も、興味がないわけではないのでカノンを止めないのだが……。
俺たち以外に人と竜のコンビを見たことはなかったので、どうしても気になってしまったのだ。
え?
盗賊にいた亜竜?
あれはダメだ。
道具として使っているのをコンビとは言わん!




