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カノンの考え

「はーい、どうしたの?」


さっきと同じことを言いつつカノンの前まで走ってきたアイリス。


というか、本当に来たな……。


「あ、えっと……少し相談したいことが……」


想像の通りに現れたアイリスに苦笑しつつもカノンが口を開く。


「相談?今日の宿なら考えてるわよ?」


相談という単語に、アイリスは今日の宿の事だと思ったみたいだ。


というか、考えてあるって……。


「あ、えっと、そのことじゃないんですけど……宿はどうなったんですか?」


否定はしつつもそっちも気にはなったらしい。


というか、そりゃ気になるよな。


俺も気になってたし。


「結論から言うと、この学園の寮に泊めて貰えることになったの。ここなら安全だし、貴族の子も多いこの学園なら私の家も文句は言って来ないでしょうしね」


あぁ。


確かにここには寮があるから一時的になら大丈夫なのだろうが……。


『特例なんだろうが……よく許可が下りたな……』


「あ、それはカノンちゃんが被害者で、加害者が学園の職員だったから学園からの賠償みたいなものよ。最初は学園の紹介で宿を手配してもらうって話をしてたんだけど、私たちが襲われた宿もそれなりにセキュリティの高い宿だったし、それ以下の宿は紹介できない。かといって、それ以上の宿は貴族専用みたいな感じだから、この学園の寮に泊まってもらうって発想に辿り着いたのよ」


自慢げに言うアイリス。


なるほどな。


そういう事なら特例にも納得がいくが……。


学園の中にまで入ってくる暗殺者もいないだろうしな。


「じゃあ……今日からはこの中に?」


カノンがそういいながら寮の密集している場所を見る。


「そういうことね。あ、部屋の準備に少し時間がかかるみたいだけど、あと一時間もすれば用意してもらえるはずだしそれまで訓練場でも覗いてみる?」


訓練場ってこんな時間まで人がいるものなのか?


もう日が暮れそうな時間だが……。


『こんな時間まで授業があるのか?』


「授業じゃないわよ。生徒の自主練で日暮れまではみんな頑張ってるのよ」


一部の生徒だけどね。


そんな心の声が聞こえた気がするのは気のせいだろうか?


















学園の寮の近くにある訓練場では、数人の生徒が魔法の練習をしていた。


流石に人数は少ないが、自主的に練習している生徒というだけあって中々レベルは高いようだ。


実際、使っているのはレベル1相当の魔法なのだが発動は安定してるしコントロールも問題なさそうに見える。


普通、魔法の発動自体はスキルがあれば出来るが、その精度は魔力操作のレベルに依存しているし、カノンのように魔力制御でもない限り訓練なしに実用レベルにはならない。


俺?


俺の場合は人間じゃないし、カノンは最初から魔力操作がカンストしてたからな……。


普通は学生レベルなら魔力操作はレベル1か2程度、優秀な生徒でようやく3と言ったことろだろうな。


そして、今生徒たちがやっているのは魔力操作の訓練と言った方が正しいだろうか?


レベルの低い魔法を連発して、魔力の操作を練習しているのかもしれんな。


「カノンちゃん、今この子たちがなんの練習してるか分かる?」


不意にアイリスがカノンに問題を出してきた。


「えっと、魔力操作ですか?」


カノンも俺と同じ結論に至っていたらしい。


その答えを聞いたアイリスは嬉しそうな顔をした。


「正解。私達は魔弱だから最初からレベルが高かったけど、普通はこうやって魔法を制御する訓練を重ねて地道にレベルを上げていくしかないの。この学園の訓練は基礎を押さえてるから、見ていて損はないわよ」


確かに、カノンの訓練はアイリスの指導を受けた召喚術以外は我流だし、こういった訓練を見るというのも勉強にはなるだろうな。


しかし、そう考えると、やっぱりこの学園に入学した方がよかったんじゃ……。


『なぁ…カノン?』


「ハク、私は冒険者を続けたいから」


言い切る前に否定された。


何故か頑なに冒険者にこだわるんだよな。


「でも、この学園の依頼は無駄にはしないよ。学べることはしっかり学んでいくから」


そう言いつつ訓練場に視線を戻した。


まぁ、こういった依頼自体珍しいし、せっかくの機会だ。


しっかり吸収していってもらいたいな。


「ほう、中々いい心がけだね」


カノンが決意している後ろから、いきなりそんな声が聞こえてきた。



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