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通路の先へ

通路の中をカノンが進んでいた。


結局、この地下通路自体は学園にも存在を認識されている以上余計な危険はないとの判断となったのだ。


実際、地下通路には罠の類もなければ最低限の明かりもない。


いや、ランプのようなものは等間隔に配置されているが灯りは付いていないのだ。


真っ暗とはいえ、まったく先が見えないほどじゃない。


そもそもこういった時にこそ魔法は使うべきだと思う。


というわけで、カノンの周りには光の球がいくつか浮かんでいたりする。


いつの間にか持っていた光属性をカノンと共有し、カノンが発動させている。


しかし、光属性なんてどこで手に入れたっけ?


全く記憶にないんだが……。


まぁ、魔法を使えるゴブリンとかはスキルを確認する前に倒しているし、最近俺自身のスキルもまともに確認していないので仕方ないかもしれんが……。


っと、そんな事よりもこの通路だ。


「なんかあからさまじゃないかな?」


カノンが足元を照らしながら呟く。


足元には一組の足跡が奥に向かって続いている。


通路自体は石、もしくは地属性の魔法で土を固めたものなのだろうが、普段誰も入らないためか地面には埃が積もっている。


その埃にはしっかりと足跡が浮かび上がっている。


確かにここまで分かりやすいと罠を疑うことも出来なくはない。


しかし……。


『確かに怪しいのは間違いないが……今回に関しては問題ないと思うぞ?多分だが、後がないんじゃないのか?』


「後がない?」


『そもそもあの抜け穴自体、意図して用意されたものではないだろう』


正直言って、これは最初から引っかかっていた。


カノンを殺すことに関して、闇ギルドの話を聞く限り衝動的な動機なのは間違いない。


そうなると、こんな非常口を用意している時間はなかったはずなのだ。


かと言って、別の目的のために用意されたとするにはこんなものを必要とする大事な目的があって騎士団やギルドに目を付けられるような愚を犯すとは思えないし、そもそもそれだけ頭が回るならもっと理性的な嫌がらせをしてくるだろう。


話が逸れたが、そんなわけでこの入り口を用意していたとは思えない。


だとすると、何らかの理由で地下通路の天井が崩落、その直上にあった詰所の床が崩落し、それを見つけた男が利用したと考えるのが自然かもしれない。


問題は、この入り口が出来た、もしくは見つかったタイミングだが、意外と最近、というかついさっきな気がしていたりする。


穴を見た時に思ったが、急ごしらえな感じがした。


穴の周りがボロボロなのはいいとして、ここに降りるための道具や設備が何もなかった。


それなら、騎士団から逃げる方法を考えていた男が運よくここを、見つけて逃げ込んだと考えてもつじつまは合う。


そんな話説明すると、カノンはわずかに首を傾げた。


「でも……上手く穴が空いたとしたってそんな怪しいところに入るかな?」


『その疑問は尤もだが、人間追いつめられると視野が狭くなるからな……』


特に、後がないというときには……。


「な、なんだか実感籠ってるね……」


カノンから引きつった笑みが返ってきた。


『あ~、まぁ、なんだ……だから追いつめられれば危ない橋も平気で渡るかもってことだよ。そもそも逃げなければ騎士団に捕まる。逃げれば運が良ければ助かる。そんな選択肢だしな』


因みに、運が悪ければ死であることは間違いない。


まぁ、死ぬよりも捕まった方がましだろうし、ハイリスクハイリターンを選んだのだろうが……。


「でも……殆どまっすぐだね。今どのへんだろう?」


カノンが足跡を追いながら首を傾げる。


これまでの道中、分岐は存在したのだが、その全てをまっすぐに突き進んでいた。


そのおかげで、詰所からはかなり離れたと思うのだが……。


『地上の様子が分からないからな……アイリスとリーゼが俺たちを追いかけているはずだが……』


この地下通路、感知系のスキルが殆ど仕事をしてくれないのだ。


ためしにアイリスがカノンの気配を掴めるか実験してみたのだが、アイリスでも真下に居ればともかく少しでも離れると感知できなくなってしまった。


しかし、感知する方法が全くないわけではなかった。


リーゼの竜感知だけは正常に機能していたのだ。


なので、地上ではカノンの中の俺の気配をリーゼが感知し、付いてきているはずだ。


しかし、以前になったようにソルと念話での連絡は出来ない。


俺とソルがお互いの場所を感知できないので念話の飛ばしようがないのだ。


「……あれ?足跡消えてる?」


そのまま進んでいると、突然足跡が消えた。


『消えた……っていうより……壁の中に続いてるのか?』


足跡は壁に向かって伸び、そのままなくなっている。


こういうときって壁に何かあるよな……。


「この壁壊せばいいのかな?」


カノンがそう言いつつ手のひらの火球を浮かべる……ん?


『待て待て待て!!』


思わず念話で叫んでしまった。


「ひゃ…何?」


突然響いた俺の声に小さな悲鳴を上げたカノンが怪訝そうに呟く。


『こんな場所で壁壊すな!下手すると生き埋めだぞ!』


壁だけならいいが、余波で天井が崩れたら目も当てられない。


「じゃあどうするの?」


『こういうのは任せろ』


こういった事は慣れている。


どや顔出来ないのが残念だ。





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