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捜索

「こんにちは~」


明るい声でそんな挨拶をしながら詰所の中に入っていくカノン。


カノンの手に魔銃さえ握られていなければ、女の子が何かの用事で詰所を訪ねてきただけの微笑ましそうな光景なのだが……。


いや、扉を破ってる時点で微妙か……。


「って、あれ?誰もいないね」


中に入ったカノンが不思議そうに呟く。


確かに、中には誰もいない。


『まぁこの中に居る可能性は低かったみたいだしな』


そもそも、騎士団のギリアムが言っていたではないか。


詰所の中に人気がないと。


この詰所は、日本で見られるような大きな窓のある詰所とは違う。


窓があるにはあるが、それも最低限で部屋からなら窓の近くに移動さえすれば外の様子を確認できるが、逆に外からは建物の中の一部しか見えない。


その上感知系のスキルを妨害する魔法陣があるということもあって、詰所の中の人の有無はおろか、その部屋の構造さえまともに分からない状態なのだ。


しかし、騎士団の方は既にこの建物の中に人がいないことに気が付いていた様子すら見せている。


どんな手段を使ったのかは不明だが、半分以上は確信していたのだろう。


断言こそしていなかったが、この建物の中に人がいない前提で動いていた気がする。


とは言っても、最初からこの建物の中にあの男がいなかったのかというと、そうでもないような気がする。


その場合は、ここに男が戻ってきた場合に備えて最低限の人員を残したうえで捜索に回らないといけないはずだ。


それをせずに、逆に数名の騎士を他に派遣して大部分をここに残しているのは、最初は確かにここに居たはずの男が騎士団を見た瞬間に居なくなったからだろう。


この建物の中から忽然といなくなったのなら、何らかの手段で探知をしてこの中にいないことを確認したとしても、それすら上回る方法で隠れている可能性も捨てきれない。


寧ろ、居なくなったと見せかけて、騎士団が捜索のためにここを離れた隙を見計らって逃げ出すという方法も十分に考えられるわけだ。


ならば、この学園から外に出るための手段である各門に見張りを配置し、そこから出てきた時点で騎士団は動き、その可能性が無い場合はリーオと交渉して何とか中に踏み込むという手段を取っているだろ。


というか、もしかするとカノンが来たときは丁度その交渉をする、もしくはしている最中だったかもしれない。


騎士団としては、身動きが取れなかったところに丁度、今回の当事者でありある程度の戦力にもなるカノンが現れたのだ。


自分たちではこの建物の中を改めることが出来ない以上、カノンに確認してもらおうと考えても不思議ではない。


いや、騎士団として、それでいいのかとは思わないでもないが……。


まぁというわけで、この中にいないということ自体は俺も想定内。


寧ろ、本番はここからだと言っても過言ではないだろう。


「ハク、どうする?」


『この中で隠れている可能性も十分に考えられるが、もしかすると隠し通路の類があるかも知れん。探してみた方が良いだろうな』


「そっか……。リーゼさん、誰か出てきたら教えてください」


カノンは後ろにいたリーゼを振り返ってそういい、中に進んでいった。










詰所の中には、小さいが給湯室のような部屋と、間仕切りが置かれた部屋の二部屋があるだけだった。


カノンが破った扉はその間仕切りのすぐ横にあり、間仕切りも向こうには窓があった。


ここの窓は外の様子を確認するための小さな窓だったようだ。


この感じなら、間仕切りさえ無ければ部屋の中もほとんど見えるはずなのだが、無理やり間仕切りで隠しているように見える。


まぁ、人の出入りが多いと休憩もまともに出来んかも知れんし、実際窓から様子を見れさえすれば仕事には支障はないだろうから、問題はないだろう。


寧ろ、適切な対策ともいえるのかも知れない。


「隠し通路……あるのかな?」


カノンが部屋の中を見ながら呟く。


まぁ、書類を収める棚と机がいくつかある程度で物がほとんどない。


必要性という意味では妥当な部屋というか職場かも知れんな……。


とはいえ、この

建物の構造的には隠し通路に出来そうな場所は限られている。


『あるとしたらどこかの床か……給湯室の壁だな』


「分かるの?」


俺の言葉にカノンが不思議そうに首を傾げる。


『あぁ、まず、この建物は塀と繋がっている。というより、壁の一面が塀になっていると言った方が良いのかもしれんな。で、この建物の壁から隠し通路を伸ばそうとしても伸ばせない。伸ばしても隠しじゃなくてただの渡り廊下になっちまうからな』


「そっか。隠せるのは地面だけってことだね」


俺の説明にカノンは納得したように呟いた。


『もしくはこの塀の中かって話だな』


実はこの学園の塀はかなり厚みがある。


一番薄い場所でも1メートルは超えるだろう。


だから、中に通路が通っていても不思議ではない。


というわけで、この塀の壁に当たる給湯室の壁も捜索対象なわけだ。


「なるほどね……あれ?」


俺の説明に相槌を打ちつつ給湯室に足を踏み入れたカノンだが、何かの違和感を感じたらしく首を傾げた。


『どうした?』


「今、床が沈んだ気が……」


ここの床は石のタイルが使われている。


普通なら沈むことなどありえない。


カノンが不思議そうに剣を取り出し床を叩く。


コンコン


そんな、少し透き通った音が響いてきた。


これは……当たりかもしれんな……。


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