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真相

「これを見るまで忘れてたわね」


資料をテーブルに投げ出したアイリスが思い出したように呟いた。


「これ、私何もしてませんよね?」


カノンが呆れたように呟く。


まぁ、あの時は確かに何もしていなかった。


正確には、何かをする前にアイリスによって撤去されたわけだが……。


そう考えると、恨まれるのはアイリスではないのだろうか?


『で、何でカノンが恨まれたんだ?直接手を出したのはアイリスだろ?』


「まぁそうなんだけど、多分私相手に仕返しとかできないって分かってるからカノンちゃんに恨みの矛先が向いたんじゃないかな?あれから見たらカノンちゃんは多少腕が立つだけの子供で、闇ギルドで依頼をすれば簡単に始末できるって思っても不思議じゃないわね」


確かにそれはあるかもしれんが……。


『そもそも暗殺依頼なんて簡単に出せるものなのか?』


そんな依頼が簡単に出せるのなら暗殺し放題じゃないのか?


「出せるわよ?お金さえあれば」


あっさりと答えたアイリス。


どうもとんでもない金額が必要らしいが、出せないことはないらしい。


まぁ、平民に払える金額ではなさそうだし、貴族でも簡単に出せるような金ではないだろうしな。


そもそも依頼を受けるかどうかはギルド次第。


ギルドが敵対するとまずいと判断すれば依頼を受けることはない。


例えば、アイリスを暗殺しようとしても、本人の戦闘能力は兎も角として、Aランク冒険者に手を出そうとすれば冒険者ギルドも黙っていない。


そうなれば冒険者ギルドとの全面戦争にもなりかねないのだ。


そういった場合には闇ギルドも依頼を断ることになる。


そして、一般人を標的にするにしてもリスクもあるのでとんでもない金額が必要になってしまう。


その為、闇ギルドの仕事はほとんどなく、少ない依頼の殆ども諜報などがメインとなるらしい。


「……その人って、依頼を出すだけのお金を持っていたってことですか?」


今まで何かを考えていたカノンが口を開いた。


「えぇ、そうなるわね。あれも貴族のはずだから家にはお金はあるでしょうけど……個人資産として考えればそんな大金を持っていたとは思えないわね」


ということは、そのお金をどこかで調達したという事か……。


『問題があるとすればその金の出所か……』


「貯金?」


カノンがそんなことを呟いたが、そんな大金を溜められるものだろうか?


「それはないと思うわよ?いくら貴族でも所詮は学園の守衛だもの。カノンちゃんの方が稼いでいると思うわよ?」


そんなに賃金安いのか?


いや、カノンの稼ぎが異常なのか……。


「まぁ多分、家のお金使ったんだと思うわよ?どうやって使ったかは分からないけど」


アイリス曰く、貴族の家の資産を管理しているのはその家の主人と使用人の中で財務を担当している者というのが一般的らしい。


なので、貴族の一族だろうが家の金は勝手に使えないのが普通らしい。


「クラウス?その辺りの情報は?」


そばに立っているクラウスにアイリスが聞く。


「はい、冒険者ギルドより提供された情報にはありませんでした。現在冒険者ギルドおよび騎士団より捜査員が派遣されている筈です」


まぁそうなるか……。


男の素性までは依頼された側にも分かるだろうが、その金の出所までは関与していないだろうしな。


『そもそもその金の出所次第では別の勢力が黙ってないだろ』


「それはそうなんだけどね。下手するとこの男、家から追い出されるだけじゃなくて捕まるからね」


『それ以前にもう捕まるだろ……』


暗殺の依頼をしたんだ。


流石に無罪放免はないだろう。


そう思ったのだが、アイリスは少し難しい顔をしている。


「それは微妙なところなのよね……。直接襲ってきた闇ギルドの方は兎も角、こっちは学園を首程度かも知れないわね」


理由は口に出さないが、何となく察する。


この世界、この国において、命の重さは平等じゃないからな……。


「ま、はいそうですかって従う気はないけどね」


そう言って立ち上がったアイリスは、カノンに書類の束を手渡す。


「これ収納に入れておいてくれない?」


「は、はい」


カノンは言われるがまま書類を収納に仕舞う。


『おいアイリス?どうするつもりだ?』


嫌な予感がする。


「決まってるじゃない、Aランク冒険者の力を見せてやるのよ!」


そう言いつつ握りこぶしを作るアイリス。


あぁ、これ完全に怒ってるな……。


そしてカノンよ……。


お前もお前で何で当然とばかりに頷いてるんだよ……。


『で、どこに行くって?』


「まずは冒険者ギルドね。そのあとできれば騎士団の詰所も行きたいけどそっちは難しいかも」


まぁあくまでAランク冒険者の肩書だからな……。


騎士団は冒険者とは別だし……。


勢いで立ち上がったアイリスと、それに続くようにカノンが立ち上がると同時に扉がノックされ、先ほどのメイドがやってきた。


「あの、アイリス様?お茶をお持ちしました」


「……えっと、とりあえずお茶飲んだら行きましょうか……」


「あ、はい」


そっと座りなおすアイリスとカノン。


出鼻はくじかれたが、勢いで突き進んでもいいことはないし丁度いいだろう。



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