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真夜中の奇襲

その日の夜。


カノンとアイリスが寝静まったころ、俺とソルはほぼ同時に不審な気配を感じ取っていた。


いや、正確には、ソルは気配察知なり他の感知系のスキルで感知できたのだろうが、俺は感知できなかった。


しかしその代わり、窓の外からこちらを覗く人影を見てしまったのだ。


時間にして数秒だけだが、気配もなくこちらを窺うような不気味な出来事は昼間にもあったばかりだ。


嫌でも警戒する。


『ソル?気づいてるよな?』


『はい、ハクさんはカノンさんを起こしてください。ただし、寝たふりは続けるように』


『分かった……カノン?』


念話でカノンに呼びかけるが返事はない。


『おーい!カノン!起きろ!!』


全力で叫ぶように念話で呼びかけても周りには聞こえないというのは便利だな。


「………ん……どうしたのぉ……まだ暗いよ~?……」


眠そうな反応が返ってきた。


起きたか。


『敵だ。その内踏み込んでくるかも知れんから寝たふりしていつでも動けるようにしていてくれ』


「……敵?」


敵という言葉にカノンは一気に目が覚めたようで、気配察知を発動させた。


「……昼間と同じ?」


『多分な。人数は不明だが……』


『人数は恐らく三人です。しかし、全員が暗殺者で間違いないでしょう。気を付けてください』


三人か……。


なら侵入された段階でこっちから仕掛けるか……。


もしくはカノンに襲い掛かる瞬間か……。


パリーン!


俺がどう戦うかを考えていると、いきなり窓が割られてそれと同時にカノンのベッドに音もなく駆け寄る男の影が見えた。


『ハクさん!』


ソルの警告が聞こえる。


『分かってる!』


俺は短く返すと、布団越しにナイフを振り上げた男に向かってマンイーターの蔓を伸ばす。


「っ!?」


いきなり自分の周りに伸びてきた蔓に男が慌てて距離を取ろうとするが、簡単に逃がすか!


俺は男の後ろに回り込ませていた蔓で男を締め上げるべく蔓を動かした。


ぶち


しかし、俺の蔓はそんな音と共にちぎれた。


『なんだ?今のは……』


斬れたのではなくちぎれた蔓に違和感を覚えつつ、カノンと布団の間に薄く広げたスライムを使って布団を跳ね上げる。


「な!?」


さっきは驚いたものの声を出さなかった男だが、流石に声が漏れたようだ。


それもそのはず。


その布団はまるで意思を持つかのように男を包み込み、その上からマンイーターの蔓が締め上げたのだから。


そして、俺が布団を跳ね上げた直後、カノンもベッドから飛び上がる。


いや、本当に寝たままの姿勢からの跳躍で、壁際の何もない空間に向かって剣を振り下ろしたのだ。


カノンの身体能力、最近進化してるよな……。


ガキン!


そんな音と共に、たった今まで見えなかった男の姿が現れた。


カノンの剣をナイフで受け止めている。


相変わらず気配すら感じんが……。


とはいえ、これで三人のうち二人は確認できた。


もう一人は……。




いた。


アイリスに組み伏せられている。


相変わらず本気を出すと凄いな……。


っと、こっちはこっちで終わらせようか。


俺は布団で締め上げている男の内側にスライムを伸ばし、そこから麻痺針を作って刺しまくる。


「っ!!!!!」


チクリとした痛み程度だとは思うのだが、それでも何回、いや、何十回と刺されれば我慢できない痛みだろう。


念のため、体を直接締め上げつつ、顔をスライムで覆ってしまう。


「!!!!????」


何やら声にならない声を出しているが無視だ。


これで残るはカノンの相手だけ……。


カノンの方を見ると、竜装を発動しているカノンの剣をナイフだけで受け止め、さらに押し返しつつある男が目に入った。


カノンが竜装を発動させれば大概の大人相手でも押し負けることはないはずなんだが……。


しかもナイフで競り勝ってるって、いったいどんな怪力の持ち主なんだよ……。


しかし、それももう終わりそうだ。


俺の手が空いた以上、俺も参戦するのだからな。


俺は布団を縛っている蔓を延長させ、男の後ろ側に回す。


そして、男の足首を掴むと全力で後ろに引っ張った。


「っ!」


『な……化け物が……』


思わず声が漏れる。


全力で引いたはずの蔓が、耐え切れずにちぎれたのだから……。


男はわずかにバランスを崩したが、それでもカノンとは拮抗している。


しかし、それで隙は作れたようだ。


カノンは男とつば競り合いをしていた剣から左手を離し、そのまま男のナイフを握る。


ナイフの刃を握ったせいでカノンの手に血がにじむ。


「っ……」


僅かに声こそ漏らしたが、カノンはそのまま自分の剣と男の剣を収納に仕舞った。


いきなり武器が消え、力の逃げ場がなくなった男はバランスを崩し、たたらを踏む。


「これで!」


その隙にカノンが収納から取り出したのは魔銃だ。


男の肩目がけて引き金を引いた。


バシュ


そんな音と共に男の肩に魔力弾が命中し、その衝撃で男が吹き飛ぶ。


「ハク!今!」


カノンの声が聞こえると同時に男を蔓で締め上げ、ついでに麻痺針も刺せるだけ刺す。


もう一つおまけにスライムで全身を覆ってしまえば制圧完了っと……。


「……ふぅ」


カノンは周りを見渡し、襲撃者が全滅したことを確認すると大きく息を吐いた。




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