表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
164/317

作戦

カノンは門番から地図を受け取った後、そのまま地図に載っているルートを進む。


地図に載っているルートは、段々と人通りの少なくなる場所へ進んでいくルートだ。


そして最終的に、袋小路へとたどり着く予定になっている。


この地図は門番の男が書いてくれた。


長い事王都に住んでいて学園の門番をやっているらしく、この辺りの地理は大体把握しているとのことだった。


カノンが門番と共に門の中に入った時、丁度マルガレーテ達も戻ってきたのだ。


そこで、カノンから今の状況を説明し作戦会議が開かれた。


そして決まった作戦というのが、カノンが1人で裏路地に入っていくというものだった。


勿論、マルガレーテ達も間接的にだがサポートしてくれる手筈になっているし、そもそも学園の前で、学園の関係者が標的になっていることだ。


学園自体も動いてくれるように門番たちも動いてくれている。


裏路地に入っていくカノンの背後を見てみると、付かず離れずの距離を保ったまま尾行してくる不審者が一名。

最初は誰かに雇われたチンピラかと思ったが、様子を見るにそんな感じではなさそうだ。


まず、カノンの背後、カノンの視点では死角になるとはいえ、俺の目にはしっかりと見えているのに気配察知には全く引っかからない。


その上魔力感知や嗅覚探知でさえ、まともな情報を拾えないのだ。


見えている相手に各種探知スキルが全く効果を発揮しない。


これは初めての経験だった。


見えているのに見えない。


そんな意味の分からん表現が正しいだろうか?


恐らく、カノンだけでは尾行にさえ気が付かないだろう。


門の前では、まだ気配察知には引っかかっていた。


しかし、尾行となった段階で完全に気配やそれ以外の感知要素も消えてしまったのだ。


一体どんなスキルを使っているのか……。


とはいえ、これは少し相手への認識を改める必要があるだろう。


最初はアサシンモドキかと思ったが、どうやらガチの奴だったらしい。


俺がいる時点で不意打ちは成功しないとは言え、油断できる相手ではないだろうし、そもそもこんなあからさまな行動をしているカノンを警戒して、今日は様子見で終わってしまうかもしれない。


もしそうなったら作戦を練り直す必要があるだろうな。


一応気配察知で周囲の警戒はしているが、あれと同じレベルの奴がいる場合はまずいしな。


俺が見えている範囲なら俺が対応するし、カノンも自分の視界の範囲からの襲撃なら撃退、それが無理でも時間稼ぎは出来る。


しかし、あれだけの隠密っぷりで死角から攻撃を受けた場合、対処できるかどうかは怪しいところである。


「ハク、付いて来てるの?」


不意に、カノンがそう聞いてきた。


『あぁ、しっかりとな』


「気配が全くないんだけど……」


そう言いつつカノンが振り返る。


っと、その瞬間、俺たちを尾行していた男が物陰に隠れた。


というか、カノンが振り向く直前には隠れていた。


恐らく、体のわずかな動きで察知したのだろうが、カノンは封印者(シーラー)専用、というか俺の能力専用の防具を着ていて、流石に露出が多めなので普段はマントを羽織って服は全く見えない。


つまり、マントを羽織っている体の輪郭が分からない状態でも振り向くという予備動作をしっかりと判別しているという事だ。


あれ?


思ったよりやばい奴に目をつけられてるんじゃないのか?





















そんな俺の不安をよそに、カノンはついに行き止まりに辿り着いた。


そして、おもむろに地図を広げ首を傾げる動作をする。


まぁ、地図を持ち出したと言っても目的地はここだし、この動きも予定通りだ。


要は、カノンが道に迷って困っていると言った様子を見せれればいい。


それならこんな場所まで来たことにも納得が……いや、行かないな。


普通はもっと早く気が付くだろうに……。


まぁどっちにせよ、カノンを攫うにせよ殺すにせよ向こうにとっては今がチャンスなのは間違いないだろう。


案の定、気配も音もなくナイフを持った男がカノン目がけて走ってきた。


これも予定通りだが……。


これは正直、この男の能力を過小評価していたかも知れんな。


尾行されている間ならまだしも、攻撃に移った瞬間にすら気配も何も感じない。


これなら間違いなく気付かれる前に急所を一突きにされて終わりだろうな。


相手が俺たちじゃなかったらの話だが。


男のナイフが音もなくカノンの羽織っているマントを貫通する。


その瞬間、カノンの背中からゴブリンの手を作り、ナイフを掴む。






……………………。





痛っててててえぇぇぇぇぇ!!!


いつものスライムの感覚で掴んだら無茶苦茶痛かった。


まぁ、スライムとは違って神経も通っているしな……。


というか、刃物を鷲掴みはダメだ。


ゴブリンの手がぱっくりと切れた。


しかし、ある意味好都合だった。


いきなりの衝撃にカノンの肩がわずかに跳ね、そしてナイフの持ち手越しに伝わる手ごたえ。


男の表情が和らいだのが分かった。


こうなったらこの際痛いのは我慢する。


そしてそのままゴブリンの手を増やし、ナイフが抜けないようにがっちりと掴んでしまう。


それとほぼ同時に、カノンが口を開いた。


「ハク?お願いね?」



衝撃が伝わったことでカノンにも状況が分かったようだ。


『任せろ』


俺は短く返事をすると、マントの隙間からスライムを出す。


禁止を言い渡されてはいるが、ここで男を殺すのはまずいし短期決戦にしないともっとまずい。


なら、この能力が一番向いているはずだ。


カノンには後で謝ろう……。


そう思いつつ、スライムを塊に変えて男の頭を包み込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ