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路地に潜む不審者

寮は学園の敷地内にある。


敷地内に入るには学園の関係者でないと手続きが面倒であり、カノンも例外ではなかった。


正確には、カノンが自由に出入りできるのはアイリスの手伝いをする場合のみだ。


寮まで行って薬草を収穫して戻ってくるまで30分ほどかかると言われ、その間カノンは門の脇で待っていた。


近くには門番の男性もいるし、彼はマルガレーテ達とのやり取りをある程度は聞いていたのでカノンが門の近くでうろうろしていても何も言わない。


因みに今いる門はカノンが通る門とは違うのでここの門番はカノンの事を知らない。


しかし、マルガレーテ達の友人だと思ってはいるようで、たまにこちらを確認するようなそぶりを見せていた。


「…………あれ?」


不意に、カノンがそんな声を上げた。


そして、気配察知を発動させる。


そんなカノンにつられて俺も気配察知を発動させると、向かいの路地からこちらを監視している気配を感じた。


『お?監視か?』


「監視って言うか……多分殺意向けられてる気がする……」


カノンが面倒そうに呟く。


「お嬢ちゃん、ちょっといいかな?」


面倒と言いつつ警戒心全開のカノンに、門番が声を掛けてきた。


「は、はい?」


路地の方の気配に注意を向けていたカノンは、少し驚いた声を上げる。


「いや、さっきからお嬢ちゃんの事を見ている奴がいるみたいだ。よかったら門の中で待ってたらどうだい?」


心配そうに声を掛けてくれた門番の男は、カノンの方を見つつも路地の方を警戒しているようだ。


どうやらこの門番も路地に潜む不審者に気づいているらしい。


そして、狙いがカノンだと予想してカノンに声を掛けてくれたんだろう。


しかしカノンは困ったような顔をする。


「そうしたいんですけど……このままだとマルガレーテさん達も危なそうですし……今はこっちも場所を把握できますから……」


カノンは最初から自分の事は心配していない。


自分一人なら逃げるにせよ戦うにせよどうにかできるのは間違いないとの判断だ。


しかし、マルガレーテ達を危険に巻き込むのは許容できない。


だからこそどうしたものかと考える。


「ハク?ハクはどうしたらいいと思う?」


不意にそう聞かれ、俺もどうしたものかと悩む。


『手っ取り早いのは捕まえることなんだが……』


今の段階で捕まえた所で、犯罪になるわけでもない。


明らかに敵意は感じるが、まだ何もされていないのだから。


「…………いつから見られてたんだろう?」


『さぁ……流石に街中だと分からんな……』


これが森の中など滅多に人の居ない場所なら話は早いんだが……。


そもそも何でカノンは目をつけられてるんだ?


『所でカノン、あの不審者に覚えはあるか?』


「全くないよ。でも完全にこっち狙ってるよね?」


まぁそうだな。


学園の中をってわけじゃないだろうし……。


問題は、マルガレーテ達に被害が及ぶ可能性があることだ。


だから、一旦カノン一人で行動してみるという手も存在する。


その場合、カノンだけがターゲットになるのでマルガレーテ達は安全だろう。


しかし、マルガレーテ達と一緒に居る場面を見られている場合、彼女たちにも危険が及ぶ可能性がある。


となると、一番の策はマルガレーテ達には安全な場所に居てもらうか護衛を付けることか……。


護衛に心当たりはないが、安全な場所なら心当たりがあるしな。


『カノン、三人はとりあえずこの中で待っててもらった方が良いだろう。俺たちが安全を確認してから外に出るしかない』


「なるほどね、確かにそれなら……」


俺の言葉にカノンが納得したように呟く。


この中とはそのまま学園の敷地内の事だ。


この中に入るには門番が立っている門か、守衛の居る通用口を通るしかない。


しかも、学園の教師の中には戦いを教えている者もいるのだ。


この辺りでは一番安全だろう。


『まぁそのためには一旦三人と連絡を取らないとな』


「うん」


カノンは短く返事をすると、門番の男に視線を向けた。


「えっと、お願いがあるんですけど……」


「ん?なんだい?」


カノンを心配してかさっきから近くにいてくれた門番は、カノンの言葉に首を傾げる。


「さっき中に入った三人と話がしたいんです。何とかできませんか?」


カノンにそう言われ、門番は少し考えるそぶりを見せた。


「うーん……そうだな……でもここじゃまずいよね?彼女たちは多分この門から外に出るだろうから、休憩室でも使うかい?」


門番が言うには、門の内側には門番たちのための事務所を兼ねた休憩所があるらしい。


そこは学園の敷地内なので不審者も手出しはできない。


なのでマルガレーテ達が現れたらそちらに向かうように伝えるので、そこで待っていたらどうかと提案されたのだ。


確かにそれが一番安全かもしれない。


「はい、お願いします」


カノンもそう思ったのか、即答していた。




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