夜の女子会…の被害者
夕食を食べ終えたカノン達は野営用のテントを張り、その中に入っている。
因みにカノンの収納にもテントは入っていて、王都までの道のりでは世話になった。
今回は学園が用意したテントを使用しているので収納に眠ったままだが……。
そして、カノン達は女子だけで楽しく話をしたいとのことで、俺は召喚されて追い出された。
……最近俺の扱い雑になってきてないか?
まぁカノンが喋れば俺に筒抜けになってしまうしたまには内緒話をしたいだろう。
俺が封印されてからプライバシーも何もあったもんじゃなかったからな。
「キュ~?」
そして当然のように俺の隣にはアオがいる。
こいつ、俺が召喚されて追い出されるとそのままついてきてしまったのだ。
『お前……マルガレーテのそばに居なくていいのか?』
仮にも従魔だろうが……。
「キュキュキュ!」
大丈夫らしい……。
『そもそも俺に付いてきても何もないぞ?』
そもそも行くところも……せっかくだしアイリスを問い詰めるか?
カノンに対しては警戒をしているだろうが俺だけなら大丈夫だろう。
そう思って気配察知を使ってみると、あっさりとアイリスの気配を見つけた。
これは……教師陣と一緒にいるな……。
『教師たちの方に行ってみるが……お前も来るか?』
「キュキュ!」
元気な肯定の返事が返ってきた。
よし。
なら一緒に行くとしよう。
『アイリス~、居るか~?』
「げっ!」
いるかも何も目の前に来てみたんだが、俺の姿を見たアイリスがそんな反応を返してきた。
『おいおい……流石に傷つくぞ……』
「え?ご、ごめんなさい!ってハクだけ?カノンちゃんは?」
どうやらカノンに見つかったと思ったらしい。
俺だけと見るや否や安心した様子で聞いてきた。
『あぁ、カノンならそこに……』
ガタッ!
俺が言い終わる前にアイリスが全力で立ち上がった。
『冗談だ……』
「し、心臓に悪い……」
胸を押さえつつアイリスが呟く。
『カノンなら生徒たちと話してるだろうさ……』
「あ~、なるほど、それで追い出されたんだ~」
ニヤニヤとした顔を向けんな。
『で、何で逃げたんだ?』
なんだか腹が立ってきたのでストレートに聞いてみる。
「え……あ~、泊まりになるって言い忘れてて……カノンちゃん絶対怒ってるよね?」
恐る恐ると言った感じで言うアイリス。
まぁ、怒っているかどうかで言えば……。
『怒ってはいたな。まぁ今は楽しそうだしもう気にしてないとは思うが……』
実際に聞いたわけではないが、恐らくもう大丈夫だとは思う。
『そもそも既にソルには叱られてそうだしな』
『おや?よく分かりましたね?』
『大体予想は付くさ。そもそも説教をするのが一人増えたってだけだろ……』
「カノンちゃんの場合は嫌な圧力があるのよ……あの子何者なの?」
何者って言われても……。
『今まで虐げられてきた普通の村娘じゃないのか?』
その反動でああなっていると言われても納得できそうだが……。
「まぁ魔弱だと大なり小なり周囲からの目もあるしね。村だったからマシだったとは思うけど」
そう言ってため息を吐いたアイリス。
『その辺りの事はよく分からんのだが、やっぱり町の方だと影響が大きいのか?』
聞いてから失敗したと気が付いた。
アイリスも封印者になる前は魔弱だったはずだ。
アイリスにしても思い出したくもない過去もあるだろう。
しかしアイリスは苦笑しつつも口を開いた。
「そうね~、やっぱり周りの目って気になるわよ?だってみんなが普通に使ってる魔道具も自分は使えない。魔道具って人の生活の一部だし不便は感じるわよ。まぁ私の場合は使用人もいたからマシだったかも知れないわね」
『そういえば貴族だったな……』
「そういえばって……忘れられてた?」
『いや、普段のアイリスを見てると実感がわかないってだけだな』
正直アイリスが貴族だと言われても反応に困る。
まぁ鑑定でフルネームを見た時点で疑ってはいないが……。
「そう言われると反論できないのよね~。でも私も昔は貴族っぽかったのよ?」
何故か得意げな顔をするアイリス。
『そうなのか?』
『いえ、私と出会った時には既にこんな感じでしたよ?寧ろ私もアイリスが貴族だと知って驚きました。それまで私が知っていた貴族とは全く違いましたから』
ん?
『ソルはアイリスに封印される前にも人と関りがあったのか?』
『これでも神獣ですので多少はありましたね。まぁその際のトラブルでアイリスに封印されることになった訳ですが』
何それ?
凄く気になる話が聞こえてきたぞ?
「ハク?興味持ってる所悪いけどその話はまたの機会でお願いね?」
『あ、あぁ。分かった』
いつものふざけてもいい空気じゃなくて、本気の拒絶のような気がした。
その時に何かあったのか?
人に言えないような何かが……。




