カノンの追及
「オーガってどんな魔物なの?」
そう聞いてきたのはカノンだ。
あの後カノン達の元に戻った俺たちは、オーガを発見したことを伝えた。
そして、多少の迷いもあったがそのまま狩りに行くことになったのだ。
その理由はいくつかある。
まず、オーガは力は強いがスピードはない。
一般人や低ランクの冒険者からしたら脅威ではあるが、Cランクになれる実力があれば一対一なら後れを取ることはないらしい。
そもそもカノンはスピード特化だ。
正面から数体を相手にしても問題はないだろう。
マルガレーテ達に関していえば、アオがいることを考慮して考えれば三人で一体は倒せるはずだ。
実際、マルガレーテ達はもっと人数の多い時に遭遇したこともあり、その時は教師の手助けもあったとはいえ倒せたらしい。
なので少人数、尚且つ即席チームという事を踏まえて少し悩んだものの、いざとなれば俺たちが引き受ければ問題ないと判断してオーガの元に向かっているわけだ。
で、さっきのカノンの質問に答えると……。
『見た目は二本の角があるごつい人型の魔物だな。大きさは……距離があったからはっきりとは言えんが多分3メートル程度じゃないか?』
「ハクならどう戦う?」
お?
それを聞くか?
『上空からブレスで消し飛ばして終了かな?』
「聞いた私がバカだった……」
何故か呆れたような返事が返ってきた。
一番安全だし安定して倒せると思うんだが……。
「白竜さんはなんて言ってるんですか?」
俺の声が聞こえてないマルガレーテが首を傾げる。
「空からブレスで消し飛ばすって言ってます」
それを聞いて苦笑する三人。
「あぁ……確かに出来るんでしょうね。アオちゃんでもオーガを吹き飛ばすくらいは出来るはずですから」
「キュ~!」
あぁ……。
あの風のブレスか。
確かに模擬戦の時のような手加減もなしで攻撃されれば吹き飛ぶだろうな。
アオの場合、自分が地面に足を付けていないと不安定になるという欠点があるが、些細な問題だろう。
「アオちゃんのブレス凄かったですよね。ドラゴンらしい戦い方って初めて見た気がします」
カノンの言葉が俺の心に突き刺さる。
言われてみれば……。
俺はドラゴンらしい戦い方ってしたことあったっけ?
「それにハクがスライムばっかり使うから変な二つ名付いちゃうし……あ!」
そこまで言ってカノンが何かを思い出したように声を上げた。
「そういえばハク?マルガレーテさんとの戦いの後からちょくちょくスライム使うようになったよね?」
『あ、あぁ……そういえば……』
半分無意識で使っていたような……。
「私、前に何ていったか覚えてる?」
『えっと……スライム…禁…止…』
決して忘れていたわけではない。
マルガレーテとの模擬戦は使う必要を感じたので使ったが……そのあとアオに噛み千切られた時ってスライムの必要なかったような……。
あれ?
これは少しまずい?
「うん。覚えていてくれてよかった。じゃあ聞かせてくれるかな?何で使ったの?」
あ…これあかん奴や……。
カノンの表情がとてもいい笑顔になってる。
『え……えっとだな……』
「あ!マルガレーテさんと戦った時は別にいいよ?物理無効はスライムじゃないと使いにくいだろうし、空でアオちゃんと戦うなら必要だってわかってるから。私が聞きたいのはそのあと何で使ったかだからね?」
カノンの後ろではソフィアが青い顔をしており、その横のセシリーも顔色が悪い。
マルガレーテでさえも、心なしかカノンと距離を取ろうとしている気がする。
「……ハク?答えて」
俺がどうでもいいことを考えて現実逃避をしようとしたが、カノンは有無を言わせぬ迫力でいう。
うん。
観念するか。
『そのままの流れで……つい……』
とは言ってもこれ以外に答えようはないわけだが……。
『別に模擬戦で見られてるしいいかな……と……』
恐る恐るそう答えた。
「うん。分かった。じゃあそっちはもういいよ」
そんな言葉を聞いて、俺は安堵した。
良かった良かった。
そっちは許してもらえた……そっち?
「さっきスライム使ったよね?それもちゃんとした理由があるんだよね?あ、アオちゃんに追い付くためとかはいいからね?別に見失うわけじゃなかったんでしょ?それにハクなら他にも追い付ける手段はあったはずだよね?」
うん。
そういえばさっき使ったな。
確かに少し考えれば追い付く手段などいくらでもある。
風属性で加速できるし、そんな事をしなくてもアオのあのペースがそんな長時間続くとも思えないので失速してから追い付くというのも手ではあった。
ならなんでスライムで砲身を作ってウィンドボムで加速したか?
何となく、強いていうならロマンだろう。
さて、こんな回答で許してもらえるものか……。
「ハク?答えて?因みにロマンとか言う答えはいらないからね?」
先読みされた!?
『いや……えっと…そのだな……』
もうあきらめた方が良いんじゃないかと思いつつ、カノンへの言い訳を必死で考える俺であった。




