課外授業
翌日、昨日と違ってすんなりと学園の中に入れたカノンは、アイリスに付いてグラウンドに来ていた。
今日は課外授業があるらしく、カノン達はその引率兼護衛をすることになるらしい。
そして、集まっているのは30人ほどの生徒たちで、中にはマルガレーテの姿もある。
因みにこのクラス以外にももう一クラス課外授業があるらしく、現地で一回集まる予定らしい。
そして、生徒とは別に一人、このクラスの担任らしき教師もいる。
昨日リーオに出番を取られて空気になっていたような気が……。
「アイリスさん。おはようございます。本日はよろしくお願いしますね」
そう言ってアイリスに近づいてきたのは30歳くらいの男性教師だ。
「えぇ、こちらこそよろしく」
アイリスは軽く返事を返し、そのままカノンの方を振り向いた。
「カノンちゃん。彼がこのクラスの担任でロバートって言うの。影は薄いけど優秀だから安心してね」
「は、はい……」
アイリスの紹介にカノンが苦笑を返す。
というか、何に安心しろというのか……。
「ロバートだ。カノンさんとリーゼさんは初めまして……じゃないと思うんだけど……」
「え?……えっと……」
ロバートにそう言われ、カノンが困ったように頭を抱える。
『カノン…昨日リーオに出番を取られた……』
「……あ!……あ?」
思い出しそうで思い出さなかったらしい。
「あはは…まぁそんな反応になるよね……」
「あ!ごめんなさい」
「いやいや、気にしてないよ、昨日は学長とマルガレーテさんのインパクトが強かっただろうしね」
「は、はい…」
まぁ確かにインパクトは強かったしな。
「気を取り直して……今日アイリスさん達にお願いするのは引率というよりも護衛がメインです。基本はこのクラス単位での移動になりますが、現地では数人単位に分かれて行う実習もあります。その際、我々教師だけでは全員の護衛は不可能ですのでその際の護衛をお願いします」
なるほど、確かにこの人数は数人で見守れるようなものではないな。
三人増えても変わらんと思うが……。
そんな説明を受けたのち、生徒の前で簡単な紹介をしてもらって出発となった。
王都の外に出る際に使った門はカノン達が通った物で、そのまま街道を二時間ほど歩いた場所にある森で課外授業を行うらしい。
そして、森の入り口には既に20人ほどの集団がいた。
恐らくもう一つのクラスなのだろう。
「もう到着していましたか……」
ロバートから意外そうな声が漏れる。
「ロバート先生、遅いですよ」
そんな声を掛けてきたのは見覚えのある女性教師だった。
「あれ?」
そんな彼女を見てカノンが首を傾げる。
「カノン?王都に入るときに話した人だよ?」
リーゼにそう言われ、カノンは納得したような顔をする。
「あ!あの時の人!」
「え?あ!その節はどうもありがとうございます」
カノンがいることは知らなかったのか、女性教師はカノンを見て驚いた顔をした。
「セラフィム先生、こちらアイリスさんの助手をしていただくカノンさんです。カノンさん、彼女はセラフィムさん。魔法学科の教師です」
「あ!そういえば前回は自己紹介を忘れていました!」
自己紹介をされて前にあった時に名乗り忘れていたことを思い出したようだ。
「ではセラフィム先生?予定通りここからは班に分けて行動してもらいますがよろしいですか?」
「はい……と言いたいのですが……こちらの欠席で人数が変わる班があります」
申し訳なさそうにそういうセラフィム。
「そうですか……具体的には?」
「同じ班員が休んでいますので二人ほど余ります」
「ではこちらから一人出して……そこにカノンさんに行って貰いましょうか。カノンさん?よろしいですか?」
「え?は、はい。私は大丈夫ですけど……」
カノンはそういいつつアイリスの方に視線を向ける。
「別に私はいいんだけど、一応カノンちゃんを選んだ理由を聞かせて貰ってもいいかしら?」
アイリスにしては珍しく少し声が鋭い。
カノンの不利益にならないように気を使っているのだろうか?
「はい、私のクラスからはマルガレーテさんに行って貰おうと考えてます。なのでカノンさんとマルガレーテさんが残り二人をサポートする形でちょうどいいかと思います。残りは教師とアイリスさんとリーゼさんにお願いしようと考えています」
「なるほどね、それなら…私はいいわよ」
アイリスが良いと判断するのなら大丈夫だろう。
「アイリスさんが大丈夫なら私も大丈夫です」
カノンがそういうと、ロバートは頷いてセラフィムに何かを言ったのち生徒たちの方に向かっていった。
引率というより同じくらいの年同士一緒にって感じではあるが、カノンにとってはいい経験になるだろう。
護衛に関してもカノンの能力があるのなら問題は無さそうだしまぁ気楽にいくことにするか。




