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意思の疎通

「どうしよう?」


アイリスに置いて行かれたカノンがそう呟いたグラウンドには、数人の生徒が残っているだけだった。


リーオもどこかに行ってしまったのでカノンとリーゼは勝手が分からない場所で困っていた。


「カノンさん?」


カノン達が困っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


「マルガレーテさん?」


さっきカノンと戦ったマルガレーテがカノン達に声を掛けてきたのだ。


「よければこの学園を案内しますよ?学長先生の許可は取りましたので」


いつの間に……。


いや、その前に……。


「あれ?次も授業があるんじゃ?」


「あ、それは大丈夫です。もう年度末ですので学科を受けるのは単位が足りない人だけです。私は受ける必要はありません」


なるほど、だからリーオの許可も下りたのか。


「じゃあ……お願いします」


ちらっとリーゼの方を見たカノンは、リーゼが頷いたのを確認するとその申し出を受けた。


「はい、こちらこそお願いします」


「キュ~」


お?


スカイドラゴンも一緒か。


何処かを飛び回っていたのかマルガレーテの近くに降りてきたスカイドラゴンをカノンが不思議そうに見る。


「どうしました?」


「あ、普段から一緒にいるんだって思って……」


「あ、そういう事ですか」


カノンの言葉にマルガレーテは納得したように呟く。


「私達テイマーは戦うときに従魔を召喚するか、普段から一緒にいるかの二種類いますから。私はアオちゃんと普段から一緒です。そういうカノンさんはあの白竜さんを召喚してるわけじゃないんですね」


何故か意外そうにそう聞いてきたマルガレーテ。


「でも普段から一緒にいますよ?」


そう言って自分の胸に手を当てるカノン。


まぁ、召喚されなければカノンの中から動けないからな。


その代わりカノンは俺を抱き枕にするために召喚術の練習を頑張っている気がしなくもないが……。


「あ!でもせっかくアオちゃんもいますしハクも呼んじゃいますね」


ん?


カノンよ……何でとてもいい笑顔で名案だと言わんばかりの語気の強さでそんな事を言ってるんだ?


そもそもここで召喚術なんて使って大丈夫なのか?


俺がそんなことを考えている間にもカノンは詠唱を始めていた。


あぁ……手遅れか……。


まぁ魔力には余裕があるから別にいいんだが……。


「……!召喚!」


カノンが召喚術を発動させるのと同時に俺はカノンの前に召喚された。


『こんな場所で召喚して大丈夫なのか?』


「大丈夫じゃない?アオちゃんもいるんだし?」


『あれはそもそも前提が違うだろ……』


実体のある竜と、本体は封印されていて一時的に召喚されている俺は前提からして違いすぎるぞ?


「あぁ、召喚については大丈夫ですよ。そんなことを言い出したら魔力体の体を持つ魔物を従魔にしているテイマーも駄目になりますから」


あぁ……それでいいのか……。


「キュー!」


スカイドラゴンが俺を見てなぜか嬉しそうに俺の周りを飛び回る。


「えっと、どうしたんでしょう?」


「多分嬉しいんじゃないでしょうか?」


カノンがそれを見て口にした疑問にマルガレーテが答えた。


「嬉しい?ですか?」


「はい、アオちゃんは自分以外の竜を見たことがありませんから。さっきもカノンさんの中の白竜さんの気配に反応してましたし」


そういえば戦う前はじっと見られてたな。


というか今も俺をじっと見ながら飛び回ってるが……。


何となく翼の一部をスライムの触手にしてスカイドラゴンの前で猫じゃらしみたいに左右に振ってみる。


「キュ?キュ~!」


『あだっ!』


釣れた。


というか速攻で食いつかれてそのまま食いちぎられた。


「ハク……何してるの……」


「アオちゃん!食べちゃダメ!」


カノンから呆れたような視線が突き刺さる。


ついでにマルガレーテよ……。


もう少し言い方を考えないか?


「キュキュ!」


何故かとてもうれしそうなスカイドラゴン……なんか面倒になってきたしアオでいいか……。


そんなアオを見ながらマルガレーテがため息を吐いた。


「たまにアオちゃんの考えが分からない時があります」


「あ~、私もハクの考えはたまに……」


『それは心外だぞ?』


「心外も何も事実じゃない!」


軽い突っ込みを入れてみたら倍になって帰ってきた。


カノン…最近強くなってないか?


そして、そんな俺とカノンのやり取りを不思議そうに見ているマルガレーテが、少し考えるそぶりを見せたのち口を開いた。


「カノンさん?もしかして白竜さんと会話が?」


「え?はい…ハクの念話ですけど……」


マルガレーテには念話を送っていないので彼女から見るとカノンの独り言に聞こえそうな行動ではあるが、俺と明確な会話をしていたことに気が付いたようだ。


というかあっちも同じじゃなかったのか?


さっきもアオの声を通訳してくれてたし……。


「あれ?さっきアオちゃんからハクにって……」


「私はアオちゃんの言いたいことが何となく分かるだけです。明確な意思の疎通は出来ません」


少し残念そうにそういうマルガレーテ。


なるほど、ある程度の意思の疎通しかできないからこういった場合は本当の意味で考えが読めないという事か……。


しかし、その状態でもある程度の意思疎通ができるというのは凄いと思うが……。


俺たちも念話が無ければカノンと会話どころか俺の存在を認識してもらえたかどうか……。


いや、いやでも認識はされただろうな。


最初から物理的なサポートをしてたんだし……。




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