カノンの戦い方
「あ~、疲れた」
模擬戦が終わってカノン達の所に来たアイリスが開口一番そんな事を言う。
リーオはアイリスと入れ違いに生徒たちと教師の元に行き、恐らくカノンの事を説明しているのだろう。
先ほどから生徒の一部がこちらをちらちらと見ている。
『どういう模擬戦だったんだ?』
そんな視線にカノンは居心地が悪そうだが無視してアイリスに聞いてみる。
「え?魔法だけで私に当てられたら生徒の勝ちで、全員が魔力切れになったら私の勝ちってルールでやってたんだけど?」
何だその無茶苦茶なルールは……。
「……私もやろうかな?」
そういいながらアイリスをちらっと見るカノン。
ん?
カノンが避けるんじゃなくてカノンが魔法を撃つのか?
「カノンちゃんに魔法撃たれると流石に避けきれない気がするわね……」
そういえば回避はしていたが防御はしていなかったな……。
魔法で撃ち落とす様子もなかったし……。
『あのスペースなら俺のブレスを拡散させれば行けるか?』
「ハクまで何言ってるの!?それ避けるの無理よね!?」
まぁ避けられない方法を考えたわけだしな。
そもそもあんなルールは圧倒的な実力差があるからいい訓練になるのだ。
Aランク冒険者と学園の生徒では問題ないかもしれんが、実力だけならBランク程度の能力のあるカノンが相手ではハンデが大きすぎるだろう。
「一応言っておくけど、さっき参加していたのは魔法が苦手な生徒だからね?成績上位の生徒はさっさと叩きのめしたし」
それは成績上位の生徒が弱いのか、アイリスが強すぎるのか……。
多分後者だけども……。
「その人たちって強いんですか?」
「そうね~、私からしたらまだまだだけど普通に考えれば強いわね」
アイリスの評価を聞いたカノンの目が一瞬輝いた気がした。
あれ?
何かカノンが戦闘狂になってきていないか?
「あ!最初に言っておくけどその子テイマーだからね?スカイドラゴンの子供を連れてるから」
竜を使役か……。
前の盗賊の親玉を思い出すが……。
「スカイドラゴン?ってどんな竜なの?」
カノンが隣のリーゼに聞く。
竜関連ならとりあえずリーゼに聞く方針なのだろうか?
「え~っと…確か飛行能力に優れた竜で空中戦では最強と言われてるね。能力も飛行スキルやその補助が出来るスキルに偏っててどんな強風の中でも飛び続けられるって聞いたことがあるけど……」
ということは魔法の属性は風に偏っていそうだな……。
空中戦で最強の竜なら俺では勝てない可能性もあるな。
そもそもこっちは最弱の竜だし……。
元々のステータスはスライム以下だし……。
あれ?
心の目から汗が……。
「ハク?」
俺の様子が変わったことにカノンが首を傾げているが落ち込んでいる俺にはその声は届かない……ことにしている。
「そういえばカノンちゃんは誰と戦うの?」
空気を読まないアイリスの声。
もしかして空気を呼んであえて聞いたのかもしれんが……。
「そういえば誰なんでしょう?」
『聞いてなかったな。むしろどういうルールかも聞いた記憶がないぞ?』
結界の注意点は聞いた気がするが……。
それくらいか?
「なら今選んでるんでしょうね」
そういいながらグラウンドの方に目をやるアイリス。
グラウンドではリーオが生徒を集めているのは見ていたが……あれ?
生徒の何人かが手を上げている。
まさかカノンと戦いたい連中じゃないよな?
かなりの人数が居るしこれだけいると不殺じゃやりにくいぞ?
「……カノン、まさか全員と戦うの?」
「さ、流石に全員は……」
リーゼの嫌な予想にカノンが苦笑する。
『まぁ……なんでもありならやりようはあるんだが……』
「出来るんだ……」
そりゃ出来るさ。
高高度まで上昇して広範囲の魔法を使うとかブレスを使うとか、可燃性の粘液をばら撒いて焼き尽くすのもいいな。
『なんでもありならな』
「あ…悪いこと考えてる声だ」
カノンから呆れたような声が返ってきた。
『そもそも俺たちの戦い方って不意打ちも罠もなんでもありだろ?』
「そんなこともないと思うけど……確かに落とし穴とか色々やってたけど……でもハクだけじゃない?」
そう言われると……。
『因みにカノンはどうするつもりだ?』
「え?魔銃で打ち抜く?」
なんでもありが魔力量に任せたごり押しになっただけじゃないか?
確かにあの魔銃で俺の魔力量なら高威力の弾幕を張れるだろうけど……。
最近何となく感じていたけど、俺たちの戦い方って力任せが多いよな……。
まぁその力押しでBランク相当の戦力を持ってるからここまで何とかなったんだろうが……。
『基本戦い方は独学だしな……』
スキルによってはアイリスの指導を受けてはいるが、封印者の戦闘スタイルは封印している魔物などによって変わるので細かい戦い方は独学になるのは必然か……。
「うん。でもこのままじゃだめだし、ここならいろんな戦い方が見れそうだよね」
そこまで考えていたのか……。
珍しくアイリスの提案に乗ったと思っていたが……。
そういう事なら俺も全力で戦い方を見て盗んでいくとしよう。
本当なら入学した方が良いような気もするが、カノンはそこまでする気はないようだし、この短いチャンスは物にしないとな。
っと、リーオがこちらを向いて手招きしている。
カノンが自分を指さすと頷いたのでカノンはリーオの元に向かう。




