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魔銃

セシルがリーゼの予備武器を探して店内を物色してくれている間に、カノンも店内の品物を眺めていた。


店内の武器を見て分かったのだが、どうやらここはマイナーな武器が多いらしい。


カノンが持っているような一般的な剣もあるにはあるのだが、数が少なく最低限置いてある感じだ。


そしてその代わりに、刀や細剣…レイピアと言った方が分かりやすいか?


とにかく、そんな扱いの難しい武器から、カノンの身長を優に超えるような大剣、果てはモーニングスターのような変わり種の武器も数多く展示されている。


「……凄いね…」


カノンが思わずと言った感じでこぼした。


『あぁ、扱いは難しいが強力な武器ばかりだな……』


というより宿で紹介してもらったとはいえ、よくこんな店を紹介したな……。


いや、リーゼの腰にぶら下がっていた刀を見たからここを紹介したのかもしれないな。


「……あれ?あれも武器?」


不意にカノンが何かを見つけた。


カノンはそれに近づいて、首を傾げる。


『…………』


カノンが見つけたそれを見て、俺は思わず言葉を失ってしまった。


見たことはある。


実物は流石にないが、それでもそれなりに有名なものだったしな。


しかし、こんなファンタジーな世界に来てまで目にする機会があるとは思ってもみなかった……。


「ハク?」


俺の様子がおかしいのを察してか、カノンが首を傾げた。


『……あぁ、大丈夫だ。しかし……』


「これって……何?」


「ん?……あぁ、それ?あたしが作った新兵器だよ。まだ売れてないけどね」


カノンが見ている物に気が付いたセシルが手を止めて近づいてきた。


「これも武器なんですか?」


カノンがそう聞くと、セシルはニヤリと笑う。


「うん。これは魔銃。魔力を撃ち出すことが出来るんだよ」


そう言ってセシルが手に取ったそれは、見た目は完全に拳銃だった。


リボルバーのような回転機構は見当たらないが、かといって自動拳銃のような構造でもなさそうだ。


ただし、グリップ部分に魔法陣が掘られていて恐らく使用者の魔力をリアルタイムで吸収して撃ち出すことが出来るのだろう。


魔力を使うから弾丸もいらないし薬莢を排出するギミックも必要ない。


その分構造が簡素化できるから強度もだせる。


この世界の製鉄技術でも十分に使える代物に仕上がっているだろう。


「魔力を…撃ちだす?」


拳銃という知識のある俺と違い、カノンではしっくりこないようだ。


まぁ仕方ないか……。


「あぁ、分からないよね。そもそも魔銃なんてあたしのオリジナルだし持ってる人もいないんじゃないかな?」


ここで売れていなければそうだろうな……。


「興味があるなら試し撃ちしてみる?」


そう言って魔銃をカノンに差し出すセシル。


「え?……でも…」


「あ~、別に試したから買えってわけじゃないよ?新しい武器だからとにかく大勢の人に使ってみてもらって感想を聞いてみたいってだけ」


確かにそれは大事だ。


そういう事なら納得も出来る。


『カノン、どうする?』


いつもはカノンから聞いてくるが、今回は俺から聞いてみることにしよう。


「え?……えっと…一回だけ…」


カノンがそう答えると、セシルはとてもいい笑顔になった。


「ありがとうね。じゃあついてきて…ってリーゼちゃんも見に来なよ」


そう言って店の奥に入っていくセシルを、カノンとリーゼは慌てて追いかけた。



















店の奥には、少し広い部屋があった。


その部屋の中央には、木の棒が立っている。


部屋の隅に同じような棒が積まれているので、どうやら武器を試したりする部屋らしい。


「一応説明すると、ここの引き金を引くだけ。引いた瞬間に魔力が吸われて、それを使って……」


そういいながらセシルは魔銃の引き金を引いた。


それと同時に魔力の弾丸が無音で飛び出し、棒の脇をすり抜けて後ろの壁に……あれ?


「…………と、とまあこんな感じで……」


冷や汗を搔きつつ説明を続けるセシル。


「凄い…?」


カノンは弾が当たった壁を見ながら首を傾げた。


壁にはキズ一つ入っていない。


威力はそうでもないのか?


まぁ、魔力感知で確認してみた所、一発撃つ際に使用されている魔力は1だった。


これではフレイムアロー程度の威力も出るわけはない。


まぁ、逆に言えば俺の魔力なら1万発以上連射できるわけではあるのだが……。


正直、子供が石を投げた程度の威力じゃないのか?




因みに、セシルが的を外したことについては誰も触れようとしない。


というか、触れない方が良いかもしれない……。


「カノンちゃん、やってみる?」


「え?えっと…はい」


差し出された魔銃をカノンが受け取り、セシルに教えて貰いながら構える。


「このまま狙いを付けて……うん。撃ってみて?」


「は、はい」


カノンが引き金を引くと、無音の弾丸が飛び出し、木の棒はスルーしてそのまま壁に小さな穴を空けた。


「え?」


それを見たセシルが唖然としている。


あれ?


感覚的にも持っていかれた魔力は1だけだ。


何でさっきと威力が違うんだ?


同じ銃を使っているし、違うのは魔力の保有者くらい……。


そこで俺は以前ソルに聞いた魔力の純度の話を思い出した。


そういえば俺は竜で、魔力の純度は高いはずだ。


そうすると、同じ数字でも変換できるエネルギーが大きいという事か……。


それを知らないセシルが魔銃を分解して中の魔法陣を凝視しているのを後目に、俺は一人納得していた。


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