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いいコンビ

アイリスの懇願により、カノンが折れて俺を召喚することになってしまった。


そして当然の如く俺の意思は関与していない。


いや、一応は是非を聞いてくれるのだが、ここで拒否など出来るわけもなく……。


そしてそのまま三人の抱き枕と化した俺が解放されたのは、魔力が少なくなって俺の召喚が解かれた時だった。


その後少し残念そうに、しかし満足げに眠っている三人に対し、俺は睡眠こそ必要としないまでも寝ずにどうやってこの精神的疲労を回復させようかと悩む羽目になってしまった。


『大変そうでしたね』


疲労回復の方法を考えていた俺に、ソルが話しかけてくる。


三人が寝ているので、この部屋で話が出来るのは俺とソルだけだ。


『大変で済むか……カノンが泣きそうな顔しなけりゃ拒否してる』


『そうは言いますが、本当に嫌なら何が何でも逃げると思いますよ?』


珍しくソルが冗談っぽく言う。


『そうか?そんなつもりはなかったが……』


『カノンさんもそうです。ハクさんが本気で嫌がったのならやめていると思いますよ?』


あぁ……まぁ……それは否定できないな……。


多分もっと強く拒否していれば引き下がってくれはしただろう。


『お二人は仲がいいですからね。私たちはそういった関係ではないので少し羨ましかったりします』


おや?珍しくソルの本音を聞いた気がするぞ?


『俺としてはそっちも中々いいコンビだと思うぞ?』


確かにアイリスの保護者的な立ち位置にいるのは確かだが、それを抜きにしてもいい関係を築けているとは思う。


何となく、見ていてすっきりする組み合わせだ。


封印者(シーラー)とはそういうものですからね。本来なら絆を紡ぐことのない異種族の間で生まれた絆。それが封印者(シーラー)を形作る根源ですから』


『そういわれると……そうなのかもな……』


俺が元々人だったから失念していたが、確かに本来なら俺とカノンは殺し合いをしていても不思議じゃない関係だった。


人と竜という、異なる種族だからだ。



実際、もしカノンが魔弱じゃなくて普通に戦えたとして、その時に俺と遭遇していたらどうなっていただろうか?


多分、逃げるか戦うことになっていただろう。


あの時の俺のステータスでは間違いなく人には勝てないので、運が良くて相打ち、最悪俺は死んでいたかもしれない。


そもそも、今のカノンのままだったとしても、サーベルボアに追われている状況で俺が思わず助けたり、カノンが俺をかばって重傷を負ったりしなければこんな関係になることはなかったと断言できる。


多分、俺はカノンに見つかった時点で逃げていただろうし、カノンも逃げただろう。


そう考えると、今の俺たちがあるのは奇跡的な事なんじゃないだろうか?


そもそも、カノンがいなければ俺は既に第二の人生…竜生?を終えていた可能性もあり得る。


カノンを助けて、助けてもらってカノンが死にかけて……。


助けたい一心で使えそうなスキルを使った結果が封印だったが、この助け合いという形が俺たちの関係そのものだったのだろう。


今ではカノンに封印されていないことなど考えなくなっているし、召喚されているときでも少し違和感を覚えてしまう。


そして何より、何があったとしてもカノンは守ってやりたいし、カノンがしたいことがあるのならそれを出来る限りそれをかなえてやりたい。


カノンがどう思ってくれているのかは分からないが、今の関係が続いて行けばいいと思っている。


カノンもそう思ってくれていると嬉しいんだが……。


















side カノン


ハクが何かしている。


多分ソルさんと話しているんだと思うんだけど……。


寝ている私たちに気を使ってかソルさんと念話だけでやり取りしているから内容は分からないんだけど、何かを懐かしんでいるような感覚が伝わってくる。


ハクも分かっているとは思うんだけど、私とハクはお互いの感情の変化がよく分かる。


理由は分からないけど、封印のせいなのかな?


懐かしんでいるってことは、昔の事を思い出しているのかな?


私と出会った時の事だったら嬉しいな。


もしかすると、その前の事かも知れないけど……。


そんなことを考えていると中々寝つけるはずもなく、目を開けると目の前でリーゼさんがこちらを見ていた。


私たちのベッドは隣同士だ。


私から見て、リーゼさんと反対側にはアイリスさんがいる。


って、なんでリーゼさんはこっちを見てるのかな?


直接聞いてみようかな?


でも声に出すとハクに聞こえちゃうし……。


ハクみたいに念話が使えたら簡単なんだけど私は持ってないし……。


何とか使えないかな?


……魔力を糸みたいに伸ばしたらどうかな?


そう思って私とリーゼさんの間に魔力を伸ばす。


前に奴隷の刻印を解除したときに一度触ったことのある魔力だったからか、あっさりと出来た。


……ってあれ?


やってみたけど意外といけそう?


『リーゼさん?聞こえますか?』


「!?」


私が話しかけてみるとリーゼさんはとても驚いたような顔をしてこっちを見た。


『……あれ?念話出来てます?』


『あ……この魔力の繋がり念話なんだ……』


不意にリーゼさんの声が頭の中に響いた。


あれ?


ハクの念話と少し違う?


もしかしてスキルになってるのかな?


……鑑定っと…


----------

魔力会話Lv1

魔力パスをつないだ者同士で念話が出来る。魔力パスは最大一つまでで、距離は1メートル以内


----------


変なスキル生えてた……。


でもこれってリーゼさんからも念話出来るって事?


ハクの念話と違うのは多分ハクは何人でも同時に話が出来るけど自分からだけで、こっちは一対一だけど相互に会話できるって感じかな?


『すみません、新しいスキル覚えちゃいました。リーゼさんからも話できますよ』


一応謝っておこうかな。


『えっと……こんな感じかな?』


リーゼさんが戸惑いつつも念話をくれた。


『はい、そんな感じです』


『カノンさん、進化したね……』


呆れたような声が聞こえてきた。


なんでだろう?




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