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迷った学生

「みんなー!連れてきた……あれ?」


飛び出してきたのはブレザーのような服を着た少女だ。


そして道に出たことなのか見知らぬ冒険者がいたことについてなのかは分からないが目を見開いて固まった。


そしてその後ろから、同じくらいの少年が現れた。


「おいソフィア!だからこっちは逆だって言っただろ!!」


あぁ、やっぱり目的地は森の方の人の気配がたくさんある場所だったか。


「だってこっちだって思って……じゃなくって!すみません!魔物が来ますので逃げてください!」


少年に文句を言おうとしていた少女が慌ててカノン達に訴える。


「えっと……魔物ってどんなの連れてきたんですか?」


そういいながらちらっと俺の方を見るカノン。


『オークだな。数は3匹でもうすぐ出てくるだろう』


一応気配察知の情報を伝えておく。


「お、オークです!危険なので逃げてください!」


「逃げてって、貴方たちはどうするの?」


リーゼが二人に聞く。


「僕たちも逃げます。僕らじゃ勝てないので」


潔いのは結構だが、街道沿いにオークを野放しはあまりよろしくないだろう。


「はぁ、ハク、お願い」


ため息とともにカノンが俺をオークが出てくると思われる森に向ける。


……一応念のため言って置くが俺は大砲ではないからな?


それを見たリーゼは二人の手を掴んで引っ張る。


「離れるよ。ここじゃ巻き添えになるから」


優しい声でそういうと戸惑う二人を引っ張って俺の射線上から退避する。


これであの二人が巻き添えになる可能性は消えたな。


あとは……。


『カノン、戦ったら中に戻るぞ?』


「……分かった」


だから何でそんな不満げな顔をする!?


『魔力消費を抑えて拡散気味に……』


今回撃つブレスをイメージする。


範囲攻撃のように威力は控えめで射程距離も短く。


範囲内を電撃で焼き尽くすイメージで……。


イメージを固め終わるのと同時に茂みの中からオークが出てきた。


『じゃあ練習台になってもらうぞ……はぁ!』


気持ち掛け声、実際にはただの鳴き声ではあるが、気合を込めた声と共にブレスを撃つ。


「「「ブォォォォォォォォォ!!!!!!!!」」」


俺の視界に入った瞬間にオークは断末魔の叫びと共に焼け焦げていく。


そして数秒でブレスの電撃は収まり、それと同時に俺は光に包まれてカノンの中に戻った。
























「えっと、大丈夫でした?」


ウェルダン気味に焼け焦げたオークの死体を収納に仕舞ってカノンが後ろに避難していた二人に声を掛ける。


「え……あ!はい!ありがとうございました!」


オークが焼け焦げていく姿を見て茫然としていた二人は慌ててお礼を言う。


「どういう状況だったのか教えて貰ってもいいかな?」


リーゼが二人に聞くと、少女は気まずそうに顔を逸らす。


「あ~、なんて説明したらいいのか……」


困った顔でそう前置きをして少年が説明してくれた。


説明によると二人はグレゴール魔法学園の生徒らしい。


今まで名前を聞いていなかったのだが、アインが受ける学校で、ロンがカノン達を推薦しようとしていた学園らしい。


で、この二人は魔法学科と戦技学科という、将来騎士や軍隊に入る子供を教える学科の生徒らしい。


今日は課外授業で魔物を倒す練習をしていたのだが、獲物であるオークを釣ってクラスメートの所まで戻る最中に道に迷ったらしい。


で、人の気配を見つけて飛び出したら俺たちだったと……。


「本当にすみませんでした。この馬鹿…ソフィアが気配を頼りに突っ走ってしまって……」


「すみません。まさか同い年の人が他にもいるなんて思わなくて……」


少年にそう言われしょんぼりする少女。


どうやら気配察知に関してはある程度のレベルにあるようだ。


その気配察知で自分と同じくらいの年の人間の気配を見つけ、そちらに向かってみたらカノンだったわけか。


「けどどうやってみんなと合流するんだ?森の中じゃ分かんねーぞ?」


少年がそう言って森の方を見る。


『カノン、その心配はないって伝えてくれ』


「え?……あ、なるほどね……。大丈夫そうですよ?森の中からこっちに向かってきてるみたいです」


カノンがそういうと二人は驚いたような顔をした。


「え?分かるんですか?」


「はい、この距離なら問題なく」


そう答えるカノンに少女から尊敬のまなざしが飛ぶ。


「じゃあ大丈夫そうだし私たちは行きますね?あ、オークはどうします?」


いつもの癖で収納に仕舞ったはいいが、流石にこのまま持っていくのは気が咎めるらしい。


ルール上は問題はないのだが、それで二人がさぼっていたと言われては寝覚めが悪い。


「あ、どうぞ持って行ってください。私たちは何もできませんでしたから」


「え……でも…」


そういう二人に対してカノンはどうしたものかとリーゼの方を見る。


「あ~、処分できないのなら持っていくけど……誰か収納が使える子っていないの?」


「収納なら僕が使えますけど……流石にオーク三体は……」


ん?


収納ってそんな容量少なかったか?


「じゃあ一体か二体なら入るかな?」


「二体なら……ギリギリだと思います」


「じゃあ二体置いておくね」


そう言ってカノンに目配せする。


カノンは頷いて収納から二体のオークを出して目の前に置いた。


「じゃあ私たちは行きますね」


「二人とももう迷わないようにね」


そう言ってカノン達はその場を後にする。


後ろで二人が何度も頭を下げていた。
























その後半日ほどで、王都を囲む外壁が見えてきた。


レセアールやムードラと比べてもかなり大きい。


「わ~、凄いね」


カノンがそんな事を言いながら壁を見上げる。


「流石王都って感じだね」


その横でリーゼも頷く。


で、俺がさっきから気になっているのはその壁をくぐるための検問らしき場所から伸びている長い列なんだが……。


『待ち時間も長そうだな』


「……ハク、気にしないようにしてたんだよ?」


カノンから恨み節が飛んでくる。


『目を逸らせて如何にかなる事じゃないだろ……』


「待ち時間は……3時間もあれば入れるかな?」


行列の長さをみながらリーゼが呟く。


3時間か。


この国最大の都市だとしたら、まだましな方かもしれないな。


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