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ソルのお説教

「アイリスさん」


着地したカノンは竜装を解除して呆れたような声でアイリスに話しかける。


「カノンちゃん!助けて!」


すがるように言うアイリスだが、その場から動こうとはしないのでソルからお説教を受けている最中なのだろうか?


『無視していただいて構いませんよ。後2時間ほどで終わりますから』


「あ、はい」


「じゃあご飯の用意でもして待ってます」


有無を言わせぬ迫力のソルに、カノンとリーゼはそろって頷く。


そして残り時間を聞いたアイリスは絶望を通り越して全てを悟ったような穏やかな顔でうなだれた。


『あぁ……とりあえず……食料でも探すか?』


俺が提案すると、カノン達は頷いてその場を離れた。


別に食料は用意している。


しかし、何か適当な理由でもつけて離れないと俺たちまで巻き込まれそうだったので逃げることにしたのである。


アイリスを置いて森の中に入っていくカノンの背中からアイリスを見てみると、正座したまま何かつぶやいている。


しかし……、ソルがここまで怒るとは……。


さっきの聖炎以外にも何かやらかしていたのだろうか?


「何やったんだろう?」


「後で聞いてみる?」


二人がそんな話を始めた。


『それはやめてやれ、流石に可哀そうだ』


意味もなくアイリスのトラウマになりそうな説教の内容を蒸し返すこともないだろう。


「でもハクも気にならない?」


『うぅ……そういわれると……』


確かにカノンの言う通り、何がソルをここまで怒らせたのか気になって仕方がない。


「なら聞いてみてもいいんじゃないかな?」


こいつら……。


二人で俺を攻略しに来やがった。


『しかしだな……』


最後の良心が好奇心という名の誘惑を抑え込む。


「王都で私に何かさせるつもりだったとか?」


『よし、戻ったら三人で聞き出そう』


最後の良心があっさりと轟沈してしまった。


うん。


カノンに関係のある事ならアイリスのトラウマなど知ったことではない!


全て聞き出してやる。


「ちょろいね」


「というか……過保護過ぎじゃ……」


二人が何か言っているが気にしない。


アイリスが何かしただけなら好奇心があっても我慢するが、カノンを何かに巻き込もうとするのなら遠慮はいらないだろう。


カノン達は俺の変り身の速さに苦笑しているが、とりあえず今のアイリスからは距離を取りたいのかそのまま森の奥に進んだ。























「いないね」


『いないな』


あれから一時間ほど森の中を探し回ったのだが、魔物どころか動物や鳥の姿さえ全く見えない。


気配察知にはたまに反応があるのだが、少し近づいただけで逃げてしまうのだ。


「なんでだろ?」


カノンが不思議そうに首を傾げる。


まぁ、理由に関しては分かりきってるんだが……。


『アイリスの聖炎を見て怯えて逃げたか……魔物はどっちかというと巻き込まれて消し飛んだかもしれんが……』


あの聖炎の威力はかなり大きかった。


そうすると、それを見た動物は遠くの方まで逃げて近づいてくる者に過敏になっているだろうし、魔物はそもそもアイリスに消し飛ばされていても可笑しくはない。


根こそぎ狩りつくすとは思ってなかったが、この様子だと根こそぎ狩りつくしたと言われても納得できてしまいそうだ。


これは流石にやりすぎだろう。


「あ、あれはどうかな?」


リーゼが何かを見つけたようで木の枝を指さす。


そこには果実が実っていた。


『まぁ動物や魔物がいないし選択肢はああいった物になるのはしょうがないか』


「というかライバルがいないんだしむしろねらい目?」


確かにな。


「じゃあハク、お願いね」


『結局俺かい!まぁいいけども……』


確かに効率はいいだろうが……。


俺は蔓を伸ばして木の枝に実っている果実を掴み、収穫するのと同時に収納に仕舞う。


後はしばらくそれを繰り返すだけだ。


「でも動物までいなくなるって……なにしたんだろ?」


リーゼがそんなことを言いながら周りを見渡す。


今現在、気配察知の範囲内には魔物の気配どころか動物の気配すらない。


ここまで生き物の気配のなくなった森というのも滅多に見れるものじゃないだろう。


『戻ったら聞いてみるか?』


「アイリスさん、教えてくれるかな?」


カノンが首を傾げる。


『ソルにでも聞けば教えてくれるんじゃないか?』


むしろ今後の為にもぜひ教えて貰いたいものではあるのだが……。


これだけ長時間周りから生き物を遠ざけられるのであれば、いざというときに使えそうだ。


ただ単に考えなしに聖炎を撃ちまくったという線も考えられるのではあるが……。


そんな事を考えながら収穫するうちに、蔓の届く範囲の果実は粗方収穫し終えた。


『よし、こんなもんでどうだ?』


「いいんじゃないかな?後は似たような場所探す?」


「私は戻ってもいいとは思うけど」


『カノン、今戻っても恐らくソルのお説教は終わっていないぞ?』


確か2時間ほど説教すると言っていた気がする。


そうなると今戻ってもまだお説教の最中だろう。


「うん、だから戻りながら何か探す?」


あぁ、それなら確かに時間はつぶせそうだな。


『なら来た時とは少し別のルートで戻るか?』


俺がそういうと二人は頷いた。









とはいえその後、特に何が見つかるわけでもなく丁度ソルのお説教が終わってぐったりとしたアイリスの元に到着してしまったのだった。




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