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デジャブ

「じゃあ一緒に行かない?」


カノンは少し首を傾げた。


『アイリス、仕事は?』


俺も気になって聞いてみる。


このタイミングで態々王都に用事があるとは思えない。


「あ、大丈夫よ。依頼ならあるから」


「毎年毎年受けない依頼だよね?」


ため息を吐きながらそういうロン。


毎年ということは、季節的な依頼なのだろうか?


「態々王都まで行くのも面倒だしね。でもカノンちゃん達と一緒なら行ってもいいし、どうせならカノンちゃんも巻き込んじゃえって……」


「私達だけで行きます」


不穏な言葉を聞いてしまったカノンが即答する。


「じょ、冗談!冗談だから!王都まで一緒に行くだけだから!!」


カノンに拒絶されて慌てるアイリス。


『因みにどういう依頼なんだ?言えないのなら別にいいが……』


流石に機密事項を聞き出そうとは思わない。


「あぁ、別に言えないことはないよ?アイリスさん、というか、Bランク以上の特殊クラスの冒険者に、臨時講師の依頼が出るだけだから」


ロンが言うには、特殊クラスの事を生徒に教えるために高ランクの冒険者を招いて授業をするらしい。


なので毎年アイリスにも指名依頼が出ているらしいのだが、危険のない依頼のため依頼料は少ないし、強制というわけでもないので王都に行く用事でもないとアイリスは受けないらしい。


『つまりカノン達と行けばそのついでで依頼も受けるってか?』


呆れたような声が出てしまった。


『その認識で間違いはありませんね』


ソルも肯定してくれたので正解らしい。


「えっと……いいんですか?」


カノンがアイリス…ではなくロンに聞く。


ロンは苦笑しながら頷いた。


「うん、それでこの依頼を受けてもらえるのなら僕は全然かまわないよ?」


それを聞いたカノンはリーゼの方を見る。


「私もいいよ。それにカノンさんもその方が良いんでしょ?」


「……巻き込まれなければ…」


そう言ってジト目でアイリスを見るカノン。


「だ、大丈夫よ……多分…」


なんか信用してはいけない雰囲気だが……。


「巻き込まないでくださいね?」


「……ダメ?」


可愛く言えばいいってものじゃないぞ?


「…………少しなら」


珍しくカノンが折れた。


まぁ、訓練を見てもらってるしカノン自身、アイリスの事は好きだろうしな。


多少ならいいか……。


カノンの返事を聞いたアイリスは顔を輝かせる。


「ありがとうカノンちゃん!!」


そういいながら抱き着こうとしてきたアイリスを軽くいなすカノン。


段々とアイリスの扱いがひどくなってきたな。


いざというときは頼りになるんだが、普段のこれは如何にかならない物だろうか……。
























翌日、カノンとリーゼは町の入り口でアイリスを待っていた。


時間は日の出前で、空がわずかに明るくなり始めた頃だ。


確か、前もこんな時間にアイリスを待っていたことがあったような……。


「なんか前もこんな感じだった気がするんだけど……」


『確かに前もそうだったな、リーゼはいなかったが……』


「また走るのかな?」


『無理だろ?少なくともリーゼは……』


「え?走るくらい行けるよ?」


俺たちの会話を聞いていたリーゼが首を傾げる。


確かに普通に走る分には大丈夫だろうが……。


『リーゼ、走ったとしてムードラまでどれくらいかかる?』


俺がそういうとリーゼは少し考えてから口を開いた。


「え~っと、馬車で10日だから……4日もあれば行けるかな?」


まぁ、休憩とかその辺りを考慮すればそれくらいだろう。


それでも十分に速いとは思うが……。


『前にカノンとアイリスが走った時には次の日には着いたな』


「…………」


それを聞いたリーゼが固まる。


「ごめん、私の事は置いて行っていいよ……」


話を聞いただけで心が折れたらしい。


「だ、大丈夫です!ゆっくり行きましょう!!」


遠い目で虚空を見つめるリーゼを見てカノンが慌ててそういう。


しかしカノンよ……。


『アイリスの暴走が無ければだけどな……』


「……うん」


アイリスの事だ。


いつも通りに突っ走ってしまうに違いない。


『最終手段だが、空から追いかけるか?』


「そうだね。それなら何とか?」


多分前回と同じペースなら問題はないだろう。


アイリスが全力を出した場合はどうしようもないが……。






















『来ないな……』


「来ないね」


「何かあったのかな?」


既に日が昇り始める時間になったというのにアイリスは来ない。


リーゼは少し心配するそぶりを見せるが、アイリスに限って問題はないはずである。


そして少しして、ようやく町の方からアイリスが走ってきた。


「ごめんなさーい!!」


半泣きでそう叫びながら走ってくる姿は見覚えがある気がする。


「ハク、前にもこんなことなかった?」


カノンから呆れたような声が聞こえた。


『あぁ、あったな』


簡潔にカノンに返してアイリスの方を見る。


最小限の荷物だけを持って慌てて走ってくる姿は、どう見てもこれから王都に向かうとは思えない。


荷物は大丈夫なんだろうな?


「あれ?アイリスさん、荷物はどうしたんですか?」


カノンもアイリスの荷物が少ないことに気が付いて首を傾げる。


「え?寝坊したから準備してないだけよ?」


あっけらかんと言い放つアイリスだが、それでいいのだろうか?


『ご心配なく、必要最低限の物は持ってきていますし、ある程度は向こうでそろえることが出来ますから』


ソルがそういうのならいいのだろうが……。


「じゃあ出発しましょ!」


誤魔化すようにそういったアイリスに、リーゼが絶望したような顔を見せる。


「アイリスさん、どうやってですか?」


「え?リーゼちゃんもいるから小走りで行くつもりだけど……」


そう言ってリーゼの表情に気が付いたのかアイリスが気まずそうな顔をする。


「だ、大丈夫よ!リーゼちゃんのペースに合わせるから!!」


そう言われてようやくリーゼが安堵したような息を吐く。



今回、大丈夫か?





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