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推薦枠

俺たちがワイバーンと戦ってから一か月が経った。


この間に、領主軍により盗賊団の事が調査され、その情報はある程度まとまった。


殲滅の途中で聞き出した通り、ムードラの裏組織と繋がりのある組織だったようだが、既に大本の奴隷商が壊滅している状態ではあまり意味は無さそうだ。


ボスを確保できたことだけは大きな意味があったようだが、それもボスが口を割ればの話だった。


ボスは拷問を受けても何も喋らず、かといって生かしておいて何かあったら困るので早々に処刑されてしまった。


テイマーが死んだことで、まだ森に残っていた従魔も野生に戻る事だろう。




アレーナ村の二人は問題なく村に着いたとギルドの職員から教えてもらった。


二人の護衛依頼の依頼料は盗賊討伐依頼の依頼料から天引きされているので払い忘れることもない。


依頼を出すことには慣れていないので助かった。


意外にもカノンが知る事が出来た情報はこれくらいしかなかった。


領主軍ではもっと詳しく調べているのだろうが、流石にただの冒険者に情報を流すわけにも行かないのだろう。


ムードラの件については、既に現場で自白していた者がいたのでかなりの数の冒険者が知っていたこと、そしてカノンが組織の壊滅に役立っていたことなどから情報を教えてもらえたのだろう。


そしてこの一か月で、カノンは召喚術を集中的に練習していた。


そのおかげで持続時間も伸び、アイリスからもお墨付きをいただいたのでこれからは制限なしで俺が出てこられるということだ。


まぁ…そのおかげで……。


『なぁカノン?そろそろ離して欲しいんだが……』


カノンに抱きしめられた状態で呟く。


最近カノンは街中で俺を召喚し続ける訓練をしている。


とは言っても、宿の中やギルドなど、俺の事を知っている人にしか見せないようには気を付けているようだが……。


「……もう少し」


俺のささやかな願いはあっさりと拒絶された。


最近ではカノンの腕の中が定位置になりつつある。


流石に町の外では召喚されることはないので戦闘などでは今まで通り戦えるのだが、人目に付くところでこれはやめてほしい。


因みに今はロンに呼び出されてギルドに来ていた。


ギルドに着くなり召喚されてそのまま衆人環視の中で抱きかかえられた俺は竜の姿で諦めたようにうなだれている。


というか半分は諦めた。


そしてそれをうらやましそうに見つめるリーゼ。


それはいい。


いや、よくないけど、この際いいことにしよう。


問題はギャラリーの中にもリーゼと同じ視線を向けてくる冒険者がいることだ。


数少ない女性冒険者がカノンの事を羨ましそうに見ている。


その気持ちは全く分からないが……。


別にモフモフとかじゃないんだぞ?


普通に鱗が生えてるからざらざらしてそうなものなんだが……。


そんなものを抱っこして楽しいのだろうか?


いや、それはとりあえず置いておく。


まぁ、そっちは大した問題じゃないしな。


問題なのはなぜか俺に対して羨ましそうな視線を向けてくる奴だ!


お前ら、カノンに変な事したらブレスで焼くぞ?


前に封印とか言ったがそんな物解除だ!


カノンに変な虫が付くようなら全力で消し飛ばしてやる。



そんな暗い決意を固めつつ視線を感じる方を見ると、1人の冒険者と目が合った。


あ、なぜか後ずさりして逃げてった。


……そんなに怖かっただろうか?


この姿、あまり迫力はないと思うんだが……。


「ん?あいつどうしたんだ?」


そんな冒険者とすれ違ったロイドが首を傾げながら歩いてきた。


『なんか目があったら逃げてった』


一応弁解しておく。


必要ないとは思うが……。


「…なるほど?」


一応頷いてくれたがあまりよく分かっていないようだ。


仕方ないだろうが……。


俺自身よく分かってないしな。


「で、カノンちゃん。何度も言ってるんだが、そろそろハクを戻してやってくれ」


何故か俺に憐みの視線を向けながらそういうロイド。


ありがたいが、何でそんな目を向ける?


「……分かりました…ハク?」


カノンが渋々頷き、俺の体はカノンに吸い込まれるように消えた。


ふぅ~、これでようやくいつも通りだ。






















その後ロイドの案内でカノンはロンの部屋に来た。


「やぁ、態々済まないね」


「いえ、えっとどうしたんですか?」


最近呼び出されることのなかったカノンが首を傾げる。


「カノンさん達が王都に向かうって聞いてね」


あれ?ロンに話したっけ?


心の中で首を傾げていると、ロンが二枚の書類を取り出した。


「カノンさんと同じ村の子たちが受けようとしていた学校の試験の日程が丁度一か月後なん…」


「アインの護衛ならやりませんよ?」


ロンが言い終わる前に言い切ってしまった。


そんなカノンに苦笑するロンとロイド。


「いや、あの二人は関係ないよ?ただ、よかったら試験を受けてみないって話だよ」


そういう事か…。


しかし、何で突然そんな話を持ち込んだ?


しかも元々試験を受けるつもりのないカノンを選んで……。


『目的は?』


俺がそういうとロンの視線がさ迷いだした。


「な、何のことかな?」


そんなロンの横でロイドがため息を吐く。


「まぁ、今回は深い意味はねぇよ。ただ単にギルドの推薦枠を忘れてたってだけだ」


ロイドの話によるとアイン達が受ける予定の学校はかなり大きく、その中には特殊なクラスを集めてその能力の使い方を教える学科もあるらしい。


そして、そういった者が集まりやすいのがギルドなのでギルドには推薦枠が用意されているらしい。


ようはその推薦枠の事をギリギリで思い出したからこのタイミングで話をされているというわけだ。


『推薦にしても無茶すぎるだろ……勉強なしで試験受けろってか?』


「いや、カノンさんならなんとかなるかと…」


「無茶言わないでください」


ロンの言葉に呆れたような返事をするカノン。


しかし、特殊なクラス…か。


ん?


『その学校ってアイリスも通ってたのか?』


アイリスも封印者(シーラー)だ。



通っていたとしても不思議ではない。


「いや、彼女は少し違うよ。まぁ詳しくは本人に聞いてもらった方が良いかな?」


なんか歯切れの悪い答えだな?


まぁ、Aランク冒険者ともなれば秘密も多いだろうし聞かない方が良いかも知れないな。


「えっと、すみません。私は学校はあまり……」


そう言って言葉を濁したカノン。


全く興味がないわけじゃないだろうがアインと会う事を考えるとそこまでしていきたいわけでもないようだ。


カノンがそう決めたのならそれでいいが、出来れば後悔はしないようにして欲しいものだ。


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