二体目の亜竜
カノンが飛び立った少し後、カノンの後方から爆音が響いていた。
どうやらアイリスが暴れ始めたらしい。
そしてそれに伴ってか、亜竜の移動速度が上がっている気がする。
ただし、音のする洞窟の入り口とは反対側に向けてだが……。
「逃げてる?」
カノンも気配察知でそれに気が付いたようで首を傾げる。
『竜が逃げるとは思えないが……』
もしくは、アイリスの中の白虎の気配を感じたのかも知れないが……。
どちらにしても洞窟の奥に行く理由は分からない。
もしかすると、他に出口があるのかもしれない。
とは言っても、この先には森が広がっているだけだ。
果たして竜なんて大きな生き物が通れる出入り口があるのだろうか?
「あれ?ハク、あれなんだろう?」
しばらく亜竜の後を追いかけていたカノンが、前方に何かを見つけて首を傾げた。
カノンが見ている方向を見てみると、一部森がなくなっている場所があった。
いや、正確には木々が楕円形になくなっているといった方が良いのだろうか?
確か前にも似たような光景を見たことがあったような……。
あぁ、ゴブリンの集落か。
あの集落もあんな感じで木々がなくなっていた。
あれは集落を立てるために周りの木々をゴブリンたちが伐採していたのが原因だったが……。
『またゴブリンの集落……いや……』
その場所が近づいてくると、そこに地面が無いことに気が付いた。
縦に巨大な穴が空いているのだ。
…………まさか。
「ハク、この穴って……」
『あの洞窟の行きつく先…ってか』
よくよく感知してみると、亜竜の気配もよく分かるようになってきた。
今は……崖をよじ登ってる?
あれ?
飛んで出てくるんじゃないのか……?
段々はっきりと分かるようになってきた気配察知によると、どうも飛竜の癖に穴のふちをよじ登ってきているようだ。
空を飛べないということはないだろうから、飛ぶために何らかの制約があるのか……。
いや、それ以前の問題か……。
確かに大きめの穴ではあるが、竜が通るとなれば手狭にも感じてしまう程度の大きさだ。
翼を広げたとしても当たったりはしないだろうが、それでも空を飛ぼうとしても穴のふちに当たった風が跳ね返ってバランスを崩してしまうだろう。
そう考えると、態々よじ登ってくるのも理解できる。
っと、その前に……。
『カノン、相手は亜竜だ。逃げるなら今の内だぞ?』
一応だがカノンに警告をしておく。
まあこれで素直に逃げる奴じゃないけど……。
そして俺の予想通り、カノンは首を横に振った。
「逃げないよ。ここで逃げちゃうと他の人たちに迷惑がかかっちゃう」
そんな事を考えず、自分の事を考えてほしい。
カノンはまだ子供なのだから……。
とはいえ、そういわれてしまっては仕方がない。
俺も全力で迎え撃つとしようか。
「グオオオオオォォォォォォ!!!!!」
その後すぐに飛竜らしき頭が見えたと思ったら、そんな咆哮が響いてきた。
多分、威嚇スキルのようなものを乗せた咆哮だろう。
もしくは、やっと外に出ることが出来た喜びの雄たけびだったのかもしれない。
しかし、喜んでいるところ悪いが穴の中に戻ってもらうとしよう。
姿を見ることが出来たおかげで鑑定も出来たしな。
因みにその鑑定結果がこれだ。
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種族・ロックワイバーン
HP・19689 MP・69874
状態・従魔
スキル
感覚系
遠目Lv3・気配察知Lv2・方向感覚Lv1
魔法系
地属性Lv1・火属性Lv1
状態・耐性系
魔法耐性Lv1・火炎耐性Lv1
特殊系
飛行Lv6
固有スキル
竜魔法Lv1
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前に戦った土竜と比べると、耐久性には難がありそうだ。
しかしその分、スキルのレベルは高めと言った感じか?
前に土竜と戦った時から違和感はあったが、亜竜種はやはりその脅威度に対してスキルレベルは低い。
スキルを使うまでもなく生態系の頂点付近に位置している生き物だろうし、元々の能力が高いという事なのだろうが……、
さて、スキルも確認できたし従魔って言うのも分かった。
さっさと穴の中に戻ってもらおう。
のんびり穴から出てこようとしているのに、大人しく待っている理由はないので既に魔法の準備は出来ている。
『バーンストライク!』
ボンッ!
俺が魔法を唱えると地面のふちにかかっていたワイバーンの足元から爆炎が生じた。
バーンストライク、火属性Lv6の魔法で、任意の地点に衝撃波を伴う爆発を起こすことが出来る。
有効範囲は目視可能で魔法を発動させたい位置までの距離がはっきりと分かっている状態ののみ。
そして、爆発を発生させるのに魔法を待機状態にしてから約1分ほど魔力を送り続けないといけないという、使い勝手の悪い魔法だ。
一応火属性がレベル9になると、有効範囲は狭くなるが任意の場所を瞬時に爆発させることのできるエクスプロージョンという魔法が使える。
ただしこちらは燃費も悪いし、精々中距離までしか届かない。
こういった待ち伏せできる状態でならこちらの魔法の方が真価を発揮する。
さて、いくら亜竜とはいえ足の真下から爆発されれば手を離すだろう。
案の定、ワイバーンは爆発のせいで足を離し、そのまま飛び上がった。
…………あれ?
「ハク?普通に飛んじゃったけど?」
『あ、あぁ……』
可笑しいな……予定だとそのまま落ちて行ってくれるはずだったんだけどな……。
ワイバーンは上空で静止してこちらをじっと見つめている。
見た目はそのままイメージ通りのワイバーンだ。
前足と一体化した翼をもち、それ以外は俺と大して差はない。
ロックワイバーンというだけあって、体の表面は岩のようなごつごつした鱗で覆われており、岩のような色をしている。
もし体を丸めて寝ていれば岩と区別がつかないだろう。
俺がそんな分析をしていると、不意にワイバーンが大きく口を開いた。
「ハク!」
カノンに返事をする時間が惜しい!
俺はすぐにスライムを出してカノンの前に盾を作る。
そして物理無効と魔力捕食を発動させる。
それと同時に、スライムの盾にものすごい衝撃が伝わり、カノンの体諸共後ろに吹き飛ばされた。




