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マンイーターとの遭遇

途中何度か魔物と遭遇したが、同時に二か所以上で魔物が見つかることはなく、順調に進んだ翌日、あと少しで盗賊が居るであろう崖に到着するというとき、俺の鑑定にマンイーターが写った。


『カノン、マンイーターだ』


「うん、ロイドさん、マンイーターが出ました」


「よし!全員止まれ!」


カノンがロイドに伝えて直ぐ、ロイドが声を張り上げた。


ロイドの声が響くと、すぐに冒険者たちが反応して隊列が停止する。


そしてその中から数人の冒険者が出てきた。


Cランク以上の冒険者が数人。


擬態をしていれば別だろうが、擬態なしのマンイーターなら充分だろう。


「ハク、お願い」


『よし』


カノンが冒険者が揃った事を確認して俺に言う。


マンイーターの擬態が分かるのは俺たちしかいないので、まずは俺が擬態を解く必要がある。


『フレイムアロー!』


俺の声と共に炎で出来た矢が一本の木に向かって飛んでいく。


とりあえず攻撃してしまえば擬態は解けるはずだ。


炎の矢は一本の木に直撃し、その幹に風穴を開けた。


「ギャァァァァァァァァ!!」


悲鳴に近い声が上がり、そのまま木が変形して胴体に風穴があいたマンイーターの姿になった。


「こっちは大丈夫だ」


「こっちもです」


両隣のイリーナとシグリッドから声が聞こえる。


二人の索敵範囲にもマンイーターはいないらしい。


そしてそれを聞いた冒険者たちは、マンイーターに向かっていった。


「私も行っちゃダメ?」


後ろにいるアイリスからそんな声が聞こえてきた気がするが無視する。


何で切り札を序盤の敵相手に使わないといかんのだ……。


せめてボスか、イベントまでは温存するだろう。


というかアイリスが出たら明らかにオーバーキルだ。


「しかし、よく分かるな……俺も気配は探ってたが……」


ロイドがそう漏らすと、その近くにいた数人の冒険者が頷いた。


「私も気配察知じゃ分かりませんよ?ハクが鑑定で見つけるやり方を考えてくれたおかげです」


カノンに向けられた視線を、苦笑しながら否定するカノン。


「ふん、どうせ何も出来ないガキってことだな」


そうやっていちゃもんをつけてくるのはフィルマンだ。


ここまでの道中でも散々文句を言ってきたが、カノンも慣れたのか途中からは無視するようになった。


それが気に食わないのか余計ひどくなったが……


なのでカノンは全く気にした様子を見せていないのだが、カノンの事を大事にしているらしい冒険者たちは話が別だ。


殺気の込もった眼でフィルマンを睨みつけている。


それに動じないのは、強いからか、もしくは眼中にないのか……。


すると、隣にいたカリムの顔から表情が消えた。


「フィルマン…」


「はい、どうされました?」


のんきに返事をするフィルマン。


「お前、先頭歩け」


「は?それは冒険者の仕事ですよ?」


「それを馬鹿にしたのはお前だ。なら自分でやってみろ」


「……はい」


有無を言わせぬ迫力に、フィルマンは渋々頷いた。


そしてマンイーターを倒した冒険者が戻ってくると、そのままフィルマンが先頭に出て再び進み始めた。


それから間もなく、カリムがカノンに近づいてきた。


「カノンさん、申し訳ない」


頭を下げて謝罪するカリムに、カノンは少し驚く。


「い、いえ、大丈夫です……」


苦笑いで答えるカノン。


「もしマンイーターや魔物を見つけても、あいつが気が付くまでは教えないでほしい」


それは……危険じゃないのか?


あいつが人を馬鹿にできるほどの索敵能力を持っているのならともかく……。


カノンも同じことを考えたのか、少し顔色が暗くなった。


「あぁ、大丈夫だ。いざとなれば俺が助けに行くから」


あぁ、駄目なこと前提なわけだ……。


因みに鑑定は続けているが、フィルマンの近くにマンイーターの反応はない。


その代わり、前方からゴブリンらしき気配は近づいてきているが……。


「……ハク?」


カノンが心配そうに呟く。


あぁ、自分でも気配察知を使ってゴブリンに気が付いたらしい。


『あぁ、でも流石に気が付くだろ?』


道の真ん中をこちらに向かって歩いてくる気配だ。


ゴブリンの気配で間違いは……ん?


ゴブリンってこんな行動したっけ?


大体は道のない場所から襲撃してくる場合がほとんどのはずなのだが……。


まさか……従魔にされた魔物?


『カノン、ロイドに近づいてくれ』


俺がそういうと、カノンはわずかに頷いてロイドのそばによる。


『ロイド、少し聞きたいことがある』


「ん?前にいるゴブリンか?」


ロイドも気が付いていたようだ。


『あぁ、ゴブリンって道の真ん中を迷わずに進んでくるものなのか?』


「いや、滅多にないな。たまたまって可能性はあるだろうが……ん?まさか前にいるゴブリン…」


ロイドの気配察知ではそこまで分からなかったらしい。


『道をまっすぐにこちらに向かってきている』


俺がそういうと、ロイドの表情が変わった。


「カノンちゃん、ゴブリンに気が付かれないように倒せるか?」


「えっと……魔装でなら……」


少し悩んでからそう答えるカノン。


「そんな事なら私が行くわよ?」


近くにいたアイリスも近づいてきた。


しかし……。


『それはやめた方がいいだろう……』


ここでアイリスが出るのは得策ではないだろう。


『そうですね。アイリスの行動は目立ちすぎますから』


ソルも同意してくれた。


アイリスは不満そうにしているが無視する。


「すまんがカノンちゃん、頼むぞ。できれば鑑定で従魔かどうか確認してくれるとありがたい」


中々無茶を言う……。


いや、やっては見るが……。


「じゃあハク、行くよ?」


『よし、いつでもいいぞ』


そう言って魔装を発動する。


そしてカノンは魔装の魔力の一部を足に回してその場から消えたような速度で移動する。


この速度を維持できるのは精々数秒だが、気配察知の範囲内に捉えたゴブリンを倒すには充分だろう。


そしてカノンは、少々怯えながら前を歩くフィルマンを追い抜き、そのままゴブリンを目指す。












数秒でゴブリンを視界にとらえたカノン、そして次の瞬間には頭と胴体がお別れしているゴブリン。


うん。


相変わらず速い。


そのせいで一体分しか鑑定できなかった。


----------

種族・ゴブリン

HP・43 MP・16

状態・従魔

スキル

気配察知Lv1

----------


気のせいか前に戦った事のあるゴブリンと比べてもはるかに弱い気がする。


ついでに言えば、しっかりと従魔の状態になっていた。


気配察知を持っている段階でこちらの気配はばれていただろう。


ゴブリン数匹の気配より、人間百人の気配の方が大きいのだから……。


「ハク、戻るね」


持続時間のせいかカノンは早口でそういうとすぐに身をひるがえした。


というか、いくら時限式とはいえあんな高速戦闘が出来るのなら、数秒に限って言えばアイリスとも渡り合えるのではないだろうか?


それと、最近疑問に思い始めていたのだが、カノンの成長は速すぎる気がする。


いくら俺の存在があるとはいえ、ここまで急速にスキルが伸びるのだろうか?


帰ったらロンにでも確認した方が良いのかもしれない……。


成長自体は喜ばしい事なのだが、何かないとも限らないしな……。









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