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作戦準備

あの後まだ作戦会議を続行していたセレンとリーゼに、ロンの部屋であったことを説明した。


多少の依頼料はかかるがアインの移動に関しては他の冒険者が護衛に付いてくれる事になったと聞くと、二人は安堵した表情で会話を終わらせた。


そして詳しくは翌日ということでその場で解散して、その次の日、カノンは再びギルドにやってきていた。


時間の指定はされていなかったので、もしまだ詳細が分からないようなら適当に狩りでもして出直す予定だ。


というわけで受付に来たが、受付嬢の姿がない。


珍しいな。


普段から、たまに用事で席を外すことはあるはずだが、今の時間は早朝だ。


混雑する時間に受付にいないのは初めてではないだろうか?


「あの、すみませーん」


カノンが控えめな声で人を呼ぶ。


「はーい!」


どうやら奥にいたらしく、返事と共にいつもの受付嬢が小走りで近づいてきた。


「あ!カノンさん、指名依頼についてですよね?」


どうやらギルド職員には話が行っているようだ。


「あ、はい」


「ではこちらにどうぞ、あ、お連れの方も一緒で大丈夫ですよ?」


カノンの後ろにはいつも通りリーゼもいる。


気を使ってくれたようだ。


「はい、リーゼさん、行きましょう」


「え?私もいいのかな?」


当人は首を傾げているが、問題はないだろう。


『今回はカノンの居るパーティとして受けるんじゃないのか?それならリーゼも当事者だぞ?』


「うん、分かった」


そんな会話をしつつ奥にある部屋に通されると、ロンが待っていた。


そして部屋の端っこには二人の騎士らしき人物と、冒険者の男性が控えている。


「カノンちゃん、態々済まないね。丁度情報も纏まったところだったからその説明から……っと、その前に、紹介しておくね」


そう言って視線を部屋の隅にいる冒険者に移す。


「まずは冒険者の彼だね、彼はブルーノ君、偵察が得意な冒険者なんだよ」


ロンがそう言って簡単な紹介をすると、ブルーノと呼ばれた男性が軽く会釈する。


見た目は20台の後半と言った感じだ。


ロイドのように筋骨隆々というわけではなくスリムな体型だが、何となく気配が薄いような気がする。


「初めまして、ブルーノだ。探索や偵察が得意なんだ」


そう言ってにこやかにカノンに手を伸ばす。


「カノンと言います、後ろにいるのはリーゼさん。パーティを組んでます」


カノンも手を伸ばし握手する。


「ブルーノ君は戦闘能力は低いんだけど、索敵や偵察はとんでもなく上手なんだ。だから今回も探りに行ってもらったんだ」


「そういう事だ。俺は気配を消すスキルに長けててな」


なるほどな。


そういうのも才能なんだろうな……。


「そしてそっちの二人が……」


ロンが続けて騎士らしき二人を紹介しようとすると、二人はロンを手で制して一歩前に出た。


「初めまして、レセアールの領主軍のカリムという。今回の作戦の領主軍側の指揮をとることになっている」


「領主軍のイリーナです。鑑定が使えますので索敵要員として参加します」


お?


最初に挨拶したカリムは渋い、厳格な男と言った感じの声だったが、もう一人は女性だったらしい。


というか騎士じゃなくて領主軍か……。


「は、はい!よろしくお願いします」


領主軍と聞いてカノンが少しだけ緊張しているようだ。


「今回の作戦は道中ではギルド側、実際に盗賊を捕縛するときには領主軍側が指揮を取ることになるんだ」


それぞれの自己紹介が終わったのを見計らってロンが口を開いた。


「で、カノンさんたちには道中の索敵をお願いしたいんだけど、ギルドからも鑑定が使える人を一人回すから、その三人でマンイーターの索敵をお願いしたい」


「は、はい、それは分かりましたけど……、その、作戦中は……」


領主軍がいるからか、少し緊張した様子でロンに質問するカノン。


「ああ、その作戦中もカノンさんたちは索敵をお願いしたい。マンイーターは基本的に動き回ることは少ないけど、まったくないわけじゃないからね」


なるほど、ということはカノン達は本隊の指揮下からは離れているという事か?


「で、作戦開始は明日の早朝だよ。既にDランク以上の冒険者向けに依頼も出してるし、アイリスさんも待機してもらってるからね。できれば今日中にイリーナさんともうすぐ来る冒険者に鑑定での索敵を教えてもらいたいんだ」


「は、はい。多分教えるのハクになると思いますが……」


あぁ、それは仕方ないな……。


実際に索敵したの俺だし……。


「あぁ、それは構わないよ、でもいいのかい?ハクさんって親しい人以外にはあまり話しかけないみたいだけど?」


そういえば、初対面だとあまり俺から話しかけることはないな。


アイリスみたいな例外はあるが……。


『それはこの際いい。というか仕方ないだろう……』


「そうかい?ならいいんだけど。じゃあカノンさんとイリーナさんはそのまま待っていてくれるかな?訓練場は自由に使ってもらっていいからね。僕たちはそれぞれ打ち合わせもあるからこれで…」


そう言ってロンはブルーノとカリムを連れて出て行った。


多分ロンの部屋にでも行ったんだろう。


「えっと……」


三人だけになった部屋で、カノンが困ったようにイリーナを見る。


まだ緊張しているらしい。


『カノン、どうしたんだ?』


「えっと…領主軍の人って、偉い人だから……」


日本で言う警察のようなものだと勝手に思っていたんだが、どちらかというと昔のお役人様のようなものなのだろうか?


いや、そんな話を聞いた記憶もないし、カノンが暮らしていたのは小さな村だ。


それを踏まえると古い考えでそういった固定観念を持っているのかもしれない。


「あ、それについては気にしないでください。そもそも私はカノンさんに教えを乞う立場ですので」


俺の声は聞こえていないがカノンの声はしっかりと聞こえていたはずだ。


気を使ってくれたのだろうか?


そういえばそう一人もそろそろ来るのだろうか?


コンコン


その時、扉がノックされた。


「あ、えっと…はい、どうぞ」


カノンが自分以外の二人に視線を向け、返事をする。


「失礼します……ってあれ?ギルマスはいないのか?」


入ってきたのは40歳くらいの男性だ。


杖を持っていて体つきは前衛向きとは言えないので魔術師だろうか?


「ギルドマスターならさっき出ていきましたよ?」


「あぁ、いや、俺はこっちだからな。カノンちゃん以外は初めましてだな。俺はシグリッド。Cランク冒険者をしている」


「あ、リーゼです。カノンさんとパーティを組んでます」


「領主軍のイリーナです。よろしくお願いします」


「えっと、カノンです?」


『カノン、お前は自己紹介する必要ないと思うぞ?』


どこかで見たことあると思ったのだが、ギルドに溜まっている冒険者の中にたまに混ざっている一人だったはずだ。


当然カノンの事も知っているだろう。


「おう、よろしくな。俺も鑑定を持ってるんでこっちに来たんだ」


ロンが言っていた冒険者とはシグリッドのことらしい。


『これで全員ってことだな』


「うん、そうだね」


カノンは少し浮かない顔をしている。


『どうした?って聞くまでもないか……』


格上に教えるなんて経験、普通はないからな……。




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