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プロローグ

初投稿です。よろしくお願いします。

自分で言うのもあれだが、俺は冷静な人間だ。余程のことが無いと動じないし、少し慌ててもすぐに頭が冷える。無感動などと言われたことも…無かったか?


さて、余計なことを考えているうちに頭も回るようになってきた。少し状況を整理してみよう

目の前には青いアメーバみたいな生き物がいる。それはどうでもいい。いや、よくないか……。アメーバ自体はどうでもいいが問題は()()()()()だ。なぜかその生き物を見上げてしまう。つまりそいつは俺よりも大きいってことだ。


よくゲームとかでチュートリアル的なものでやられ役になっているスライムに似ている。というかもうスライムでいいだろう。そしてそのスライムは俺を食べようとしているのか、ゆっくり近づいてきていた。


因みに言っておくと、このスライムは別に何メートルもの大きさがあるような奴じゃない。精々が20~30センチくらいのサイズなのだろう。別に普通のスライムだ。ではなぜ俺がこいつを見上げているのかというと、俺が小さくなってしまっているからだ。


と、そんなことを考えている間にもスライムはゆっくり近づいてきやがった。とにかく今はこいつから全力で逃げるしかない。


そう結論付けた俺は、全速力で逃げ出した。



どうしてこうなった……

逃げながらだが思い出してみるか。













~~~~~~~~

俺は普通のサラリーマンだ。その日は急な仕事が入って遅くまで残業をして、帰路に就いたのは日付が変わる少し前だった。いつもは定時かせいぜい1~2時間の残業で帰れる俺は初めて深夜まで仕事をしていたこともあって半分眠りそうになりながら歩いていた。


俺は電車通勤をしていて会社は駅の近くなのだが、家は駅から20分ほど歩いたところにある。道中には古い橋があり、いつもは何の気なしに通っている道なのに今は迂回したい気持ちがあった。


何のことはない、不気味なのだ。いつもは明るいうちか、精々夕方、遅くても深夜とはいかない時間に通っているのだ。その時には何とも思わなかったというのに、時間が違うだけでこうも不気味なのかと思ってしまう。


「…………回り道するのもめんどいし……大丈夫……行ける」


何が(行ける)なのかは自分でもわからないが、俺は自分に言い聞かせるようにつぶやくと、速足で橋を渡り始めた。俺は幽霊などという非科学的なものを信じているわけではない。ただ、そんな雰囲気の場所が嫌いなだけだ。


そういえば今日はまだ何も食べていなかったな……。家に食うものあったかな?カップ麺くらいはあったか……


気を紛らわすためにどうでもいいことを考えながら、橋の中ほどに差し掛かった時だ。


ミシミシミシッ


何やら嫌な音が聞こえてくるとほぼ同時に、俺を浮遊感が襲った。

あっけにとられる俺が最後見たものは、がれきと化した橋が俺に向かって落ちてくる光景だった。


















俺は死んだのか?


いや、そのはずだ。思い返してみると、俺は橋の崩落に巻き込まれたってことになる。あの橋は高さが30メートル近くあるかなり高い橋だ。しかも川があるのはその一部、残りは畑だったり道路だったりがあり、その上を渡っている橋だ。しかし痛みは全く襲ってこない。


あぁ…そうか、痛みを感じる間もなく即死だったんだろう。それならまあいいか、なぜなら俺の人生の最終目標は、『苦しまずに寿命で死にたい』だったからな。


……自分で言っておいてなんだが、もう少しまともな目標はなかったのだろうか?しかもどう考えても事故死だし、寿命ですらないし!


(しかし、死んだ後もこんなにいろいろ考えられるものなのか)


俺はそんなことを考えながら、自分の思考回路が段々嫌になってきた。よりによって、死んですぐに考えるのがそれかよ、俺……


ふと、俺は自分が目を閉じたままだということに気づいた。そういえば橋が崩れた時、思わず目を瞑ってそのままだった。まあ死んだということならこのまま真っ暗なままなのかもしれないが、ありえない可能性として助かっているかもしれない。


運よく川の深いところ(といっても精々水深1メートル、どう考えても助かるわけない)に落ちたとか、偶々耕したばかりの畑に落ちたとか……どっちにしてもその上から瓦礫が降ってくるんだからそれで生き残れる奴はいないと思うが……


俺がゆっくり目を開けると、そこには奇妙な光景があった。目の前にあったのはごつごつした岩の壁だ。首を回しながら周りを見ると、ドームのような部屋にいた。


『洞窟の中』こう言ってしまうとわかりやすいだろうか?いや、俺も洞窟に入ったことはないのでテレビや漫画で見たことがあるだけだが……


「……ん?」


そしてふと後ろを見たとき、二つの違和感が俺を襲った。


一つ・まず俺は()()()()()()()()()()。なのに何故真後ろまで見えているのか?


二つ・後ろを見たときに、変なものが目に入った。それは蝙蝠の羽のようなものだが、蝙蝠と比較すると少し分厚くて何より色が真っ白という違いがある。


そしてどうやらその羽は俺の背中から生えているような気がするのだ。俺は若干嫌な予感がしつつも、恐る恐る自分の体を見てみた。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」


久しぶりに大声を出した気がする。いや~、やっぱり大きな声を出すのは気持ちがいいな。家でこんなことをすれば近所迷惑もいいところだが、ここは洞窟、気にすることはない……


さて、現実逃避はもういいか……。うん、分かってる。そろそろ目の前の現実に向き合わねば……。


俺は改めて自分の体をよく見てみた。真っ白な鱗に覆われた体、まるでトカゲのような3本の指?爪?かなり長くなった首、そして何より自分の背中から生えた羽……、いや、翼と呼んだ方がいいか?


「これって……ドラゴンだよな?」


そう、なぜか俺の体は真っ白なドラゴンになってしまっていた。


よく見てみると西洋の竜のような、二足歩行をするような、トカゲが進化したようなドラゴンだ。


「これって……夢じゃない…ッ!」


ためしにしっぽで自分の体を叩いてみた。うん、普通に痛い。


と、どうやら尻尾もかなり自由に動かせるようだ。


恐る恐る翼を動かしてみると、俺の思い通りに動いてくれた。そして手足を動かしてみて、ようやく俺はこの状況を飲み込めた。


「これは……ラノベとかでよくある転生ってやつか……。でも転生するならもう少し人型が良かったぜ…」


いや、人型でもゴブリンやオークになったのではたまらない。そう考えるとまだドラゴンでよかったと思うしかない。


しかしドラゴンと言えば空想上の生き物のはずだ。(それを言うならこの転生という状況も空想というかフィクションみたいな物のはずだが、それはいったん置いておく)つまり俺の過ごした世界とは別の世界に来たということか?もしこの世界が俺の知っている世界なら、俺が世に出たとたんに世界中の軍隊に追われることになるだろう。そして最終的に研究所とかで解剖されて……。


嫌な末路を想像してしまった。さすがに異世界であってほしいな……。どっちにしても命の危機に変わりないような気もするが。


だって考えてみても、主人公が無双するタイプのラノベもあるが、あれは神様とかに会ってチートをもらうか、元の世界で長年鍛え続けた技術がその世界で通用した、ということが大半だ。しかし今の俺は神様に会ってもいないし、元々しがないサラリーマン、武術など高校の時に授業で少し柔道を齧ったくらいだ。しかもこのドラゴンの体で一体どう柔道の技を掛けろというのか……しかもおそらく相手も人型ではないだろう。


まあ言ってもドラゴン、強さの象徴みたいな奴だ。最低限の能力はあるだろう。


俺はそう考えると息を大きく吸い込んでみた。ドラゴンの代名詞と言えばやっぱりブレス。もしかしたらいい感じに使えるかもしれない。


ひゅ~~~~~~~~


だが現実は無常だ。俺の口から出たのは高温の炎でもなければ光線でもない。ただの息だ。


「ただの深呼吸じゃねぇか!」


やはりいきなりは無理があったか。しかしまだだ!まだ俺にはこの翼がある。さすがにブレスは無理でも飛ぶことくらいは出来るはずだ。そう思いなおした俺は、今度は翼をはばたかせてみた。しかしある程度の風は起きるものの、俺の体を浮かび上がらせるには届かない。


「飛ぶのは無理か…いや、待てよ」


俺はふとした思い付きを実行すべく、周りを見渡してみた。そして俺の体の10倍くらいの高さはありそうな岩を見つけると、それに向かって歩いて行った。


歩いてみて分かったのだが、この体は基本は4足歩行のようだ。後ろ足だけで立つこともできるのだが、どうも安定しなくて疲れる上に長続きしない。しかし感覚的にはなんとかなりそうなので、練習すれば常時2足歩行もゆめではない!……かもしれない。


ともかく俺は岩にたどり着き、爪を岩の凹凸に引っ掛けながら上り始めた。しかし体を持ち上げてみて分かったが、この体はかなり小さいかもしれない。いや、歩く時の音とかでも感じていたんだが、この体の体高はおそらく50センチもない。下手をすると20センチ以下かもしれない。頭の先から尻尾の先まででもおそらく40~50センチくらいだろう。


体重もかなり軽いからほぼ間違いはない気がする。最も、ドラゴンの体が見た目より軽くできている可能性もあるのではっきりしたことはわからない。


ともかくそんなことを考えているうちに俺は岩の上にたどり着いた。


「あんまり疲れないな。スタミナがあるのか軽いのか……」


おそらくその両方な気はしているが、とりあえず俺は近くにあった石の破片を下に向かって投げてみた。


全ての物体の自由落下の速度は同じである。ここの物理法則が地球と同じなら、落ちる速度や落ちた時の音で大体のサイズがわかるだろう。おそらくあの石は人間サイズから見た時の砕石の中でかなり小さいものと同じくらいのはずだ。


多分2センチ四方に収まるサイズだろう。


コツーン



その予測を肯定するかのように、石は岩の地面に落ちていい音をだした。落下の速度から見ても俺の予想は大体正確であるようだ。そして俺はさっきの思い付きを実行すべく、翼を広げた。


「さてと、行きますか!」


といってもはばたかせるわけではない。俺は軽く助走をつけて、空中に飛び出した。


「おお~、これは行けるな」


俺は翼により空気を捕まえ、滑空していた。前に見たことのあるムササビやモモンガのように、はばたかせるのではなく空気を捕まえるという方法をとってみた。


そしてそれは成功したようだ。しかし少し心に刺さるものがある。


「鳥じゃなくてムササビの仲間かよ、ドラゴン…………」




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