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逆さ蛇は涙する~血の境界線~  作者: 酸素BOX
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蔵呈器箱

拙い文章ですが、努力していきますのでよろしくお願いします。


更新は不定期です。

 連休で賑わうとある街の喫茶店。


 私は店の入口から一番離れた禁煙席で待ち合わせをしていた。待ち合わせ相手は大学を卒業して以来、あ会っていない妹だ。先日、久しぶりに連絡をよこしたと思ったら、会って話がしたい、と言って喫茶店(ここ)を待ち合わせ場所に指定して、一方的に電話を切られてしまった。


 何か、相当焦っている様子だったからお金にでも困っているのだろう。


 大学時代も、一人暮らしの私の元へとわざわざお金を借りに来たこともあったほどで、彼女は少し金遣いが荒いところがあるのだ。


 まぁ、姉としては叱らなかればいけないが、頼られるのが嬉しくてつい、お金を渡してしまう。現に今もこうして銀行から下ろしてきたお金をながめているわけで。


 そんなことを考えていると、ドアのベルがカランカランと音を立てた。入口の方に目をやると派手な髪色の顔をマスクとサングラスで隠したダウンジャケットの女が入ってきた。


「こんな時期にダウンジャケット?」


 まだ夏に入っていないとは言え、外は汗ばむくらいには暑いのだ。いくら寒がりだとしても、少し不自然に感じた。


 女は店内を見渡すと、私の方へと小走りで近づいてくる。すると大して距離ではないのに女は酷く息を切らした様子で一度立ち止まり、呼吸を整えると、ゆっくり私の座る席へとやってきた。


「ひ、久しぶり、お、お姉ちゃん」


 女にそう声をかけられて初めて、彼女が妹だと気がついた。顔をほとんど隠した状態だったので気がつかなかった。私は気恥ずかしさをごまかそうと妹に声をかけた。


「あ、うん。久しぶりだね。顔がほとんど隠れてるから、私気づかなくてさ、ごめんね。あっ、ジャケット脱いだら?あついでしょ」


「ううん、いいの、私、平気だから」


 そうゆう妹はジャケットを脱ぐことなく席へと座った。


「あははは…えっと、何か飲む?確か、コーヒーは嫌いだったよね?」


「ううん、何もいらない。今、喉がとっても痛くて、水を飲むだけでも辛いの、ごめんね」


「そっか…うん…」


 会話が途切れてしまい、私たちの間に無言の壁が生まれる。


「その、えっと…相談したいことって、その、なっ、何かな~?おねえちゃんに出来ることならしてあげるよ?」


 精一杯の姉スマイル(意味不明)で件のことを切り出してみた。


「話す前に、まず私の最近あったことを聞いてもらっていいかな?…驚くかもしれないけど、覚悟しておいてね」


「勿論、バッチ来なさいな!!どんな事でも、ドーンと受け止めてあげる」


 私の言葉を聞いた妹は静かな口調で語り始める。自分の身に起きた奇妙な出来事を……



ーーーーー


 雨は嫌いだ。洗濯物は濡れるし、水がはねて服や靴が汚れる。何より傘を持っていても多少濡れてしまうのが非常に腹立たしい。ボクの上にだけピンポインで晴天にならないだろうか?そうだ、確か某未来型青狸がそんな道具を持っていた気がする。


「つまり、ボクが今やるべきことは青い狸ロボを作ることだね、しとみん!」


「いえ、とりあえずハローワークにいって、自称探偵から会社員にジョブチェンするのが優先かと。あとレインコート買えばいいじゃないですか、アホな事言ってないで」


 雨に打たれ続けたかのような寒さに襲われた。あと、地味にこの仕事辞めろとゆうのはやめてほしい。


 引見探偵事務所。


 それがボク、引見蝶慈郎(ひきみちょうじろう)の仕事場であり自宅である。

 大画面のテレビ(ブラウン管)、高級ソファー(革剥がれまくり)、大きなクローゼット(趣味の服がいっぱい)冷暖房完備(絶賛修理中)と贅沢極まりない、広々空間(コンクリ丸出し)である。


 そして、美人助手のしとみんこと蔀美々子(しとみみみこ)の膝枕しながらの耳掃除が体験できるお得な仕事場。癒されること間違いなし。


「そんな夢あふれる、お仕事体験が、今なら税込二万円ポッキリで出来ちゃう、今なら、耳フーフーとオイルマッサージも付いてくr、痛い」


 後頭部を叩かれた、思いっきり。躊躇うことなく。痛い、とても痛い。


「なんですか?いつから、ここは風営法が適用されるような店になったんです?とゆうか、求人募集の動画ではなく完全に営業でしょこれは」


「更に、特典で可愛い男の娘のボクが君の妹になっちゃうよ☆」


 血走った目での無言のネックハンギングツリーはとても怖かった。命の危機を感じるくらいに。一歩間違えば、明日の新聞に載っていただろう。あと、彼女はもう名前をラーメン男とかにしたほうがいいと思う。


「全く、遊んでるヒマがあるなら、仕事を見つけてきてくださいよ。私、先月の給料もらってないんですからね?」


 彼女のゆうことは最もである。ここ最近、素行調査どころかなくした財布を探して欲しいとかゆう、微妙な依頼すらないのだ。その結果、家賃を滞納し、光熱費も滞納、ライフラインは止まりかけ、携帯ゲームは大爆死ともう後がないのである。何か、金策を考えなければ非常にまずいのである。


「う~ん、しとみんって、ここ以外に勤務経験ってある?」


「あるにはありますけど、どれも一ヶ月ほどでクビになってます」


「どうして?」


「セクハラ上司をこう…ポキッとしてしまって」


 ポキッとゆう、表現が怖くなり、それ以上は聴くのをやめる。


 もしかしたらとんでもないのを、助手にしてしまったのではないかと後悔が頭を駆け巡る。


「どうせ、今日も依頼はないでしょうから、私、自分の部屋に戻ってますね。お昼になったら教えてください。前に行ったカレー屋に行くんで、あっ、先生も行くんですからね」


 断ろうとする前に釘を刺されてしまった。しとみんが階段から二階の自分の部屋に戻ろうとしたとき、コンコン、と事務所の扉をノックする音がする。


「すみません、依頼がしたいんですけど」


 扉越しに声がするが雨のせいでよく聞こえないが恐らく女性だろう。


 部屋に戻ろうとしていたのをUターンした、しとみんがドアを開けて、女性を事務所の中へと案内した。


「どうぞ、汚いところですが。あっ、そこに座っているゴスロリのオカマがここの責任者です。話なら彼にって、ずぶ濡れですね」


 女性は傘を持っていなかったのか、ずぶ濡れで唇が青くなっていた。


「私、タオル持ってきます。変態カマ男…じゃなくて先生、暖かい飲み物を準備しておいてください」


 女性を心配した、しとみんがタオルを取りに事務所の階段を登っていった。


 何故か、唐突にディスられた心のダメージをこらえながら、女性を綺麗な方のソファーへと案内する。


 ふと、女性の腕に目をやると、古そうな木箱を大切そうに抱えていた。


 その後、落ち着いた女性から話を聞くことに。


「依頼をしたいって、言ってましたよね。どのような依頼でしょうか?」


 女性は持っていた、木箱をテーブルの上に置くと、こう切り出した。


「えっと、ある店を調べて欲しくて。減量屋って、知ってますか?」


 減量屋、聞いたこともないな。裏の店だろうか。


「減量屋?なんですかそれ?」


「えっと、最近、一部で話題になってるみたいなんです。なんでも、どんなに痩せにくい人でも痩せられるって」


「ホントですか、ソレ!?」


 ボクを押しのけ、しとみんがものすごい食いつきを見せる。気にしてたのだろうか?


「え、えぇ、お金を払って、店の奥で寝てるだけで痩せられるって」


 その言葉にしとみんは目を輝かせ、ソファの端にいたボクの方を向く。


「先生、この依頼受けましょう!!そんな素晴らしい、いえ怪しい店を放置することはできません」


 明らかに私情百パーセントの正義感に少したじろいでしう。どうして、女性はこうゆうてのネタに弱いんだろ。


「あ、その、依頼を受ける前にこれを見ておいてほしんです」


 彼女は先ほど、テーブルに置いた木箱を目の前へと持ってくる。


「減量屋に行くと渡されるものらしいんですが、覚悟しておいてください。中身を見ても、責任は取りませんので」


 彼女は念を押して、この箱を開けることを止めたがっているようだった。外見は少し古びた木製の四角形で大きさは手で抱えられるくらい。重さは思ったよりずっしりしている、それにヌメっていて、時折、箱が揺れているような気がする。


 なんにせよ、中身は確認しなければ、依頼の受けようがない。


 蓋に手をかけると、しとみんも気になるのか、覗くような形で箱をじっと見ている。


 急かすような視線を向けられながら、ゆっくりと蓋を持ち上げる。すると糸を引きながら蓋が持ち上がりそして、


「「!!?」」


 箱の中身を見て、言葉を失った。


 中は真っ赤な液体にピンク色の脈動する物体と囲むように置かれた長細い物体、収縮を繰り返す物体が浸かっていた。僕らにはそれがなんなのか本能的に分かってしまった、いや、分かってしまったのだ。


 四角い箱にギュウギュウに詰め込まれたそれは生物であるなら持っていて当然である器官。


 それは、


「人の……内臓…」


 握りこぶしほどの心臓が絶えず、ドクンドクンと脈動した。 

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