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鵜久森優里は許さない⑤

 いつもこの時間のお兄ちゃんはお家にいるはずだよねーっと♪


 ちなみにお兄ちゃんの居場所は私のレーダーにピンク色のハートマークで表示されます。我ながら二人の兄妹愛(きょうだいあい)を良く表した素敵なマークだと確信しています。


 私がレーダーを確認すると、いつもは自宅の位置にあるはずのハートマークが、今日は定位置に見当たりませんでした。


 あれ? おかしいなぁ。お兄ちゃん今日はお家じゃないみたい。

 レーダーの範囲を広域に広げてみます。


 あ、お家からちょっと離れたところにいた♪ 今日はお出かけしているのかなぁ。距離はだいたい大体二キロくらいかぁ……。むー、この倍率じゃどこかわかんないや。


 今度はお兄ちゃんレーダーⅢの上に付いているボタンをカチカチと二回押して倍率を低くします。


 場所は図書館の近くの住宅街でした。

 あの辺りでお兄ちゃんが行きそうなところなんて無いはずだけどなぁ。お兄ちゃんが休みの日に行く場所なんて、駅前の本屋さんかコンビニくらいだもん。


 誰かお友だちのお家? あ、でもお兄ちゃんに休日に遊ぶお友だちなんていないや。


 んー。わかんないなぁ。何してるんだろ、お兄ちゃん。


 図書館の近辺は閑静な住宅街で、知り合いもいないのにわざわざ行くような場所ではありません。

 うーん。図書館でお勉強でもしてたのかな。それでその帰りとか。お兄ちゃんが寄り道するなんて珍しいけど。

 でも私もあの辺りは小学生の頃しか行ったことないから良く知らないし……。


 ぐるぐる頭の中で考えていると、私はある人の家があそこにあることを思い出しました。


 そうだ。図書館の近く住宅街って、麗お姉ちゃんのお家があるところじゃん。

 じゃあ今日お兄ちゃんは麗お姉ちゃんのお家に行ってるってこと?

 お兄ちゃんが自ら八千草家へ足を運ぶとは考えにくいので、麗お姉ちゃんがお兄ちゃんを呼んだとしか思えません。

 

 だとしたら、これは由々しき事態です。だって麗お姉ちゃんは私と同じで、昔からお兄ちゃんのことが大好きなんです。そんな麗お姉ちゃんが、わざわざお兄ちゃんをお家に呼び出してすることといったら……。

 

 うぅー! 完全に油断していました。あの二人が仲が良かったのは小学生の時のことだったから、同じ高校に入っても何も起きないだろうと安心していたんです。


 むしろ最近は、お兄ちゃんのことを毎日迎えに来る綾辻さんという美少女が現れたため、そっちと何かあるんじゃないかと探っていました。

 綾辻さんとの関係は、お兄ちゃんに嘘発見機を着けて尋問をしたので、彼女ではないことはわかっています。

 でもあれだけの美少女と、毎日登下校をしていたらいつ好きになってもおかしくありません。


 だから私は綾辻さんのことを一番警戒していたのに、ここで大外からまさかの麗お姉ちゃん。


 うぅー……。最近のお兄ちゃんはちょっとモテすぎだよう……。


 少し辛い気持ちになりましたが、私はとにかく今は現場に行かないとと思い、レーダーが示す場所に向かって走りました。


 お兄ちゃんは私のものなんだから! ぜぇーったいに渡さないんだから!


*****


 そんなこんながあり、私は九時に八千草邸に乗り込んでお兄ちゃんを奪還し、今現在に至るという感じです。


 私は大好きなお兄ちゃんの隣に並んで、お家に向かって歩いています。

 

「じゃあ、何もしていないんだな?」


 お兄ちゃんが私に聞いてきました。お兄ちゃんは私が麗お姉ちゃんの家にやってきたことを不審に思い、何かしているのではないかと疑っています。


「ゆーはお兄ちゃんに迷惑をかけることは絶対にしないよ?」


 私がやっていることはあくまでもお兄ちゃんのためです。感謝されることはあっても疑惑の目を向けられる謂れはありません。

 制服のスカートのポケットに入っているお兄ちゃんレーダーⅢだってお兄ちゃんのために試作を重ねて、やっと三つ目で完成させたんだから!


「……だったらいいけど」


 いまいち半信半疑な様子のお兄ちゃんです。

 でもそんなことより大切なのは、今日お兄ちゃんと麗お姉ちゃんの間に何があったかです。

 もしかしたらもう付き合っていたり……。ダメ! そんなことは許されません。お兄ちゃんは私と結婚するんですから。


「ねえ今日はどうして麗お姉ちゃんのお家に行ってたの?」


 私がそう言うと、お兄ちゃんの表情がピシッと固まりました。

 やっぱり。これは何かあったに違いありません。


「……いや、一緒に勉強しようって話になってな」


「それだけ?」


 それだけじゃないことはわかっています。さっきの麗お姉ちゃんの表情と、お兄ちゃんの地に足つかないフワフワした様子。何かあったに決まっています。


「後は久しぶりに夕食もご馳走になってな。何だか昔に戻った気分だった」


「ふーん……」

 

 どうやら遠回しに聞いても核心の部分は聞き出せないようです。さて、どういった切り口で聞いていくべきか……。

 やっぱり単刀直入に「麗お姉ちゃんと付き合っているの?」かなあ。でもそう聞いてもはぐらかされそうだし、やっぱり嘘発見機を使って尋問なかあ……。


 そう考えながら歩いていると、


「あれ? 優里ちゃん?」


 と、突然私を呼ぶ声が聞こえました。急な呼び掛けにビクッとして、声のする方を向くと、


「あ、やっぱり優里ちゃんだ。偶然だね、こんなところで」


 なんと現れたのは……えーっと、確か何かしらのクリケットとか球技の部活の副部長か何かの……本木? いや本村……? 本平?

 えーいわからい! とりあえずこの間、大して知りもしない私に告白をしてきたペラ太郎です。


「優里、知り合いか?」


「うん……。一応」


 あぅ……。気まずいです。大好きなお兄ちゃんの前で苦手な男子と会うなんて……。


「あ、お兄さんですか」


 ペラ太郎は私の気持ちなんて露知らず、お兄ちゃんと話すつもりのようです。

 どうしよう……。嫌な状況だなぁ……。


 と、思っていたところに、


「お兄さん……? 君にお兄さんと呼ばれる筋合いは無いんだが。そもそもうちの優里とどういう関係なんだね」


 冷徹な目でペラ太郎を問い詰めるお兄ちゃん。

 まさかの救世主が登場しました! お兄ちゃん、超シスコン! もう本当に大好きっ♥


 さてさて、この後一体どうなるんでしょうか!

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