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鵜久森優里は許さない④

*****


 私の名前は鵜久森優里。年齢は十四歳です。


 純粋無垢で清純可憐で前途有望で国士無双な中学二年生です。

 趣味は機械いじりで、好きなものはイチゴとお兄ちゃんです♪ 嫌いなものはお兄ちゃん以外の男子(ブタ)です。


 得意科目は理科と体育です。部活は陸上部に入っています。


 ほんとは運動は大大大っ嫌いなんだけど、お兄ちゃんが中学の時に陸上部で、一度大会を観に行った時に、とぉーーーってもカッコよかったから、私も陸上部に入りました。


 今も体を動かすのは嫌いだけど、部活自体は結構楽しいです。冬の走り込みとかは肥溜めよりも嫌いだけど、トータルで考えれば、まあ悪くはないかなって感じです。


 私がやっている種目は走り幅跳び。幅跳びはとっても楽しくて大好きです。一度大会に出てからというもの、走り幅跳びの魅力に取り憑かれています。

 大会独特のあの緊張感の中で、ユニフォームに着替え、アップシューズからお気に入りのスパイクに履き替えると、脚に羽根が生えたかのように跳べる気がしてくるんです。

 そして跳躍をする時の地面を蹴った衝撃と、地面から足が離れてフワッと体が宙に浮いた感覚。まるで空でも飛んでいるかのような高揚感を味わえます。


 もっともっと、遠くに跳びたい。

 

 だから私は毎日一生懸命練習をしています。


 そんな私は今日も一生懸命部活の練習をこなしました。

 今時刻は午後三時です。私は部活の友達と一緒に、部室で練習の格好から制服へと着替えています。


 夏休み中は朝から三時までずっと練習なので、もうくたくたです。


 私は汗をかいたウエアを脱いで、ロッカーに掛けてあった制服のブラウスに袖を通しました。日の当たらないロッカーの中にあったからか、少しひんやりしていて気持ちがいいです。

 更にデオドラントシートで身体を拭きます。

 うぅーっ!スーッとひんやりして気持ちいい♪ 女子中学生が汗くさいのなんて絶対にダメだし、清涼感も味わえるし、まさに夏の必需品です。


「帰りに皆でアイス食べに行かない?」


 同級生の美咲が部室の全員に向けて言いました。

 さすが女子中学生。今部活が終わったばかりなのにすごい元気です。


「美咲、いいねそれ」


「行く行くー」


 部室内の至るところから声が上がります。アイス大好き女子の皆は既に行く気満々のようです。


「優里も当然行くでしょ?」


 最初に声を上げた美咲が隣にいる私に聞いてきました。


「う、実は今日はちょっと……」


 私は遠慮がちに言葉を濁しました。


 皆でアイスを食べに行くのは楽しそうだし、誘ってくれるのはとっても嬉しいけど、残念ながら私には皆と遊べない重大な理由があるんです。


「えー行こうよー。駅前のアイス、三十一日だから半額だよー?」


 美咲は私のブラウスを軽く引っ張りながら食い下がります。


「でも私、ちょっと用事が……」


 私がどうやって断ろうか考えていると、


「あ。優里、さては男でしょ!」


「え」


 視界の外から予想外のパンチが飛んできました。まさかそう来るとは。

 中途半端な態度をとったのが裏目に出たようです。中学生の女子はアイス以上に恋バナが好きなのを忘れていました。


「えー! 優里、ついに彼氏できたの!?」


「え! 私!? いや、待っ……」


「サッカー部の部長の本川先輩にこの間告られたんでしょ?」


 ぐ……。その話題には触れて欲しく無かったのに。


「えぇー!? あの超イケメンの!?」


 一瞬にして部室内が黄色い声に包まれました。さすが中二女子。餌をばら蒔かれた鯉のように食い付きます。恋バナだけに。


「ねえ優里! もう付き合ってるの!?」


「超うらやましー!」


 誰があんなブタ虫1号と。


 あんなサッカーだけやっていればいいと思ってる薄っぺらのペラペラ男は絶対にごめんなさいです。あんなやつよりお兄ちゃんの方が1を足して二兆倍素敵だもん。


「ち、違うよう! そんなんじゃないよ。ちょっと今日はおうちの用事で……」


 私はブタ虫とは付き合っていないことを皆に話そうとしましたが、


「ていうか向こうからってすごくない?」


「さすが学年一の美少女」


「ねえねえ、いつから?」


 と、矢継ぎ早に話が展開していきます。


 全くもう。皆して脳ミソがお花畑なんだから。これだと私が中身ゼロ太郎と付き合っていることになってしまいます。本当に困ったものです。


「もう! 本当に違うって。付き合ってなんかないよ。今日は家の用事!」


 私がハッキリと宣言すると、皆も「なぁーんだ」と諦めてくれました。こういうところはあっさりしていてちょっと助かります。


 しかし、美咲だけは私の言葉に敏感に反応しました。


「あぁー。そっか。優里には鵜久森先輩がいたか」


 美咲は納得したように言いました。

 美咲の言う鵜久森先輩とは当然お兄ちゃんのことです。私たちが一年生の時の三年生なので、美咲もお兄ちゃんのことは知っています。


「鵜久森先輩? 優里先輩のお姉さんですか?」


 お喋り好きの一年生の真紀ちゃんが私と美咲に聞きました。この子は話が始まってから着替えの手が止まってしまって、まだウエアのままです。


「違う違う。優里のお兄さん。私たちが一年の時の三年で、陸上部だった人」


「へぇー! お兄さんいたんですね! どんな人だったんですか?」


 ウエアのままの真紀ちゃんがグイグイ聞いてきます。


「え、えぇーっと……。うちのお兄ちゃんは普通のどこにでもいるありふれた蚊蜻蛉(かとんぼ)だよ?」


 嘘です。ほんとは世界で一番素敵です。でもそれを部活の皆に知られるわけにはいきません。

 しかし美咲はニヤリと笑って、


「まぁーたそんなこと言って。優里は超ーブラコンなくせに」


「な……違うし! 中二にもなってブラコンとか有り得ないし!」


「ふーん。そうなの? 去年の部活の時とか、優里があまりにお兄さんラブだったから」


 う……。確かに去年は学校でも一緒にいられるのが嬉しすぎてイチャイチャしすぎてしまいました。でも去年のことだし、今年は皆もう忘れてると思ってたのになぁ。


「あれは……兄妹(きょうだい)なんだから応援くらいするの当たり前でしょ?」


「そんなもんかなー」


「そ、そうだよ! そんなもんだって。はははー……」


「まあそれもそっか。中二にもなってお兄ちゃん好きとか言ってたらさすがにイタいか」


「うぐっ……!」


 さすがに仲良しの同級生にイタいと言われるのは傷付きます。


「優里?」


「なんでもないの! それじゃあ私行くねっ! 皆、明日も部活がんばろー♪」


 私は鞄を持ち上げ、皆に手を振り部室を飛び出しました。

 

 これ以上部室にいると、色々面倒なことになりそうだもんね。早く行かなくちゃ!


 私は駆け足で校門を出て、少し行ったところで鞄の中からいつも使っている例のアレを取り出しました。


 機械いじりが大好きな私が発明した、お兄ちゃん専用の居場所探知機! その名もお兄ちゃんレーダーⅢ♪


 私はレーダーの上についているボタンを押して、早速起動させます。


 ふふーん♪ さてさてー、お兄ちゃんはどこかなどこかなー♪ 

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