有金駆は落ち目の逆を行く⑦
「綾辻さん。これは何かしら」
スマホの画面をこちらに向ける綾辻に会長が聞いた。
「ふみちゃんが教えてくれたアプリだよ。質問項目に答えていくと自分に合った趣味を見つけてくれるんだって!」
「……本当に大丈夫か? このアプリ」
僕は前回この会社のアプリで突起物の生えた地球外生命体にされちゃったんだけど。
「わたしもまだ使ったことないんだけど、もしかしたら有金くんのやりたいこと探しの手掛かりになるかもと思って」
「まあ確かに何もやらないよりはいいかもしれないわね」
「俺もそれが手掛かりになるなら是非やりてえな。そのアプリを教えてくれ」
どうやら僕以外の三人はやる気のようだ。まあ部活の線は煮詰まっていたし、会長の言う通り何もやらないよりはましか。
「じゃあそれで探してみるか」
「よーし! じゃあせっかくだしみんなでやろー♪」
「私たちもやるの?」
「だって有金くんがアプリをやっている間することないじゃん。だからみんなでやろう?」
「……まあいいけど」
会長は渋々スマホを取り出した。何だかんだで会長は綾辻の押しに弱かったりする。
「ハルくんもだよ! なに自分は関係ないみたいな顔してるの!」
チッ。バレたか。まあこういう流れになることはなんとなく予想してたけどな。
*
さて、そんなこんなで全員アプリのダウンロードを終え、一斉に「趣味発見アプリ。ホビーマスター」を開始する。
僕はアプリのアイコンを指で押してアプリを起動させた。
すると天使みたいなファンシーなキャラが出てきてその横に吹き出しが現れた。どうやらこのキャラがこれからこのアプリの説明をするらしい。
『これからあなたにいくつか質問をするよ☆その質問に正直に答えてねっ♪質問はぜーんぶ二択で最大で百個まであるよ!すべての質問に答え終わると今のあなたにピーッタリの趣味が見つかるよ!楽しみだねっ♪』
うん。全然楽しみじゃない。ていうかまた質問百個もあんのかよ。もう既に止めたいんだけど。
ネガティブな気持ちで他の三人を見回すと、僕の予想に反して三人とも集中してアプリに取り組んでいた。なんでお前たちはそんなに積極的な姿勢でこのアプリができるんだよ。この変人共め。
はぁーあー。また僕だけやらないわけにもいかないし、頑張ってこの苦行に耐えるとするか。
さて、診断スタートと。
『まず最初に生年月日とニックネームを教えてね!』
早速二択じゃないのかよ面倒くさい。んー、ニックネームって言われてもなあ。とりあえず「ハル」でいいか。本名だけど。
『エラー ニックネームに本名は使えないよ(;_;)』
……だったら先に言っておけよ。ていうか何でこのアプリ僕の名前を知ってるの!?恐っ!このアプリ作ってる会社恐っ!
恐怖を覚えながらもこのニックネームを入力しないとはじまらないようなので、仕方なくハルに一文字付け加えた「ハルオ」にして再度完了を押す。
『エラー ニックネームは常識的に考えて四文字以上だよ(;_;)※もう一度エラーを出すとニックネームが自動的に「クソムシ」になるからね(^-^)/』
だからまとめて先に言っておけって。しかも何その無駄な機能。別に僕はこんなクソアプリのニックネームはクソムシでも何でもいいけどな!
ただまあとりあえず「はるぴょん」と。
『登録完了だよ。あなたの名前は「はるぴょん」。よろしくね、はるぴょんww』
一々草を生やすな。僕だって入力した後に「はるぴょん」はちょっと無かったかなと思ったんだから。
『それじゃあ早速診断を始めよう!頑張ってね♪』
Q1 いい趣味を持つことはあなたの人生を豊かにすると思いますか。
意外と普通の質問だった。この間の宇宙人診断アプリは一問目から大分ふざけていた気がしたけどな。もしかしたらこの会社と反省をしたのかも知れない。とりあえず「はい」と。
Q2 外の趣味と家の中の趣味、どちらが好きですか。
んー。外の趣味は天気悪いとき出来ないし僕は基本的にインドア派だからな。これは「家の中」と。
Q3 趣味は一人でやりたい派ですか。みんなで楽しみたい派ですか。
みんなでやる趣味だと人数が集まらなくて出来ないこともあるからなあ。ここは「一人でやりたい派」だな。
『質問は以上だよ。お疲れさまー☆』
早っ!僕まだ三問しかやってないよ?最大で百問まであるんじゃないの?身構えていただけあってものすごい肩透かし!
質問が終了した画面には「ただいましんだん中♥」の文字とその下で先程の天使が必死の形相でヒンズースクワットを繰り返す謎のグラフィックが表示されている。何このシュールな世界観。
まあ終わっちゃったもんは仕方ないか。テスト前だし日本史の暗記ハンドブックでも眺めながら他の三人が終わるのと診断結果を待つことにしよう。




