有金駆は落ち目の逆を行く⑥
「じゃあ早速有金くんがギャンブルに代わって夢中になれることを探していこーう♪」
綾辻はそう言って自分で「おー♪」と右手を突き上げた。うん。元気があってとてもよろしい。
「高校生が夢中になること……。やっぱり部活かしら」
会長は顎の辺りに手を置き考え込む。
確かに高校生活を部活に捧げる学生はとても多い。特にうちの学校は部活動が盛んで、うちのクラスもほぼ全員が何かしらの部活に入っている。
「ちなみに一応聞くけど今は部活には入っていないんだよな」
「ああ」
んー。やっぱりそうか。なんかもったいないな。
有金は背がスラッと高く、手足も長いので運動神経が良さそうに見える。それに加えて模擬試験全国五位の頭脳だ。芸術系以外の部活だったら何をやっても上手く行きそうだけど。
「中学校の時は?」
と綾辻。
「中学の時は陸上部で走幅跳びをやっていた」
「ふぇー。スポーツマンだったんだね! だったらうちの学校でも陸上部に入れば?」
「一度は仮入部もしたんだがやっぱりギャンブルの方を優先してしちまって……」
有金の言葉に会長と綾辻はため息をついた。
まあそりゃそうだよな。そうでなきゃこいつは今ここにはいないよな。
「もったいないなぁ。でも運動自体は嫌いじゃないんだよね?」
「ああ。むしろスポーツは好きな方だ」
「そうなるとチームスポーツはどうかしら。周りのために頑張ろうという気持ちがギャンブルのことを忘れさせてくれるかもしれないわ」
「いやでも俺、協調性が皆無で……」
「なら卓球やテニスはどうかしら。基本的には個人競技だし、戦略的でやりがいもあると思うわ」
「いやでも俺、ラケットって苦手で……」
「じゃあゴルフは……」
「いやでも金がないし」
「じゃあスケート」
「いやでも氷が冷たいし」
「じゃあカバディ」
「いやでも喉に悪いし」
「じゃあラート」
「いやなんか酔っちゃいそうだし」
「……あなたは何だったらできるのかしら」
ここまで我慢してきた会長だがさすがに限界のようで拳を握りしめながらプルプル震えている。
ていうかカバディまではわかったけどラートって何?スポーツの最中に酔うの?そっちの方が気になっちゃうんだけど。
「いや、俺は自分にできそうなスポーツならなんだっていいんだけどな」
と悪びれた様子もなく言う有金。お前は何なんだ一体。どうしてそこまで空気が読めないんだ。
「ああそう。ならあなたは何もない部屋で一人でスクワットでもしてればいいわ」
「それはアメリカの囚人がすることだよ!?」
驚愕の表情で会長に突っ込みを入れる綾辻。
いや待て。そうとは限らないだろ。お前はアメリカの囚人にどんなイメージを持っているんだ。
「話にならないわ。なんでもかんでもダメダメ言って。やっぱりやる気なんて無いんじゃない」
会長は腕を組みフンッと有金から視線を反らした。怒り方が昭和だ。
「まあまあ八千草先輩。そう怒らずに。ね?」
綾辻は今にも帰ってしまいそうな会長をなんとか宥める。
「有金。自分で何かやってみたいこととかはないのか?」
「それがいざ何か始めようと思っても何も思い付かねえんだ。昔はこんなことは無かったんだが……」
「そうか。んー、序盤から大分困った展開になったな」
何かしら本人の興味があるものが見つかればと思ったが、現状はそれすら難しいようだった。
まあそもそもこいつは別のことに興味が行かない状態になっているからギャンブルにのめり込んでいるわけだもんな。
んー。どうしたもんか。
「あ!そう言えばね、この間ふみちゃんがいいものを教えてくれたんだよ」
「いいもの? 江末が?」
「うん。えっと……」
綾辻はスマホの液晶を指で突っつきながら何かを探しているようだ。
「あ、あった♪ これこれ」
「どれどれ」
綾辻がこちらに向けたスマホの液晶を見ると「趣味発見アプリ。ホビーマスター」とファンシーな字体で書かれていた。
アプリのトップ画面の下の方には「㈱悪ふざけ」と書いてある。この会社、江末に言われてやった宇宙人診断と同じ会社じゃないか。危険だ。危ない臭いしかしない。
「これで有金くんの趣味を探すのはどう?」
いやどうもこうも、僕は嫌だけど。これはきっとやる流れだろうな……。




