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八千草麗は貫き通す④

 私は走って校門を飛び出し、商店街を抜けてハルくんの家へと向かった。

 またお家に遊びにきてって言っていたし、行っても大丈夫よね。一秒でも早くハルくんに会わなくちゃ♪


 早く早く、ハルくんに♪


 高鳴る気持ちを抑えながら商店街を走っていると、目の前に背がすらっと高くて一人だけ眩い光を放っている高校生がいるのがわかった。

 あ、あれは!

 あんなに輝いている人間なんてこの世に一人しかいない……!


「ハルきゅうううん♥」


 町中で偶然会うなんて!さっすが誕生日♪やっぱり今日は良いことがたくさんたぁーくさんだわ。

 どうしようどうしよう!なんて声を掛ければいいかしら。後ろから目隠しをして「だぁーれだ?」かしら。それとも積極的に抱きついちゃおうかしら。いやぁーん♥ダメよ!さすがにそれは破廉恥だわ…………!


 ……ってあれ?


 よく見るとハルくんの後ろにどす黒い塊がくっついているのがわかった。


「あれは何かしら……」


 目をよーく凝らして確認する。


 どうやら人のようだわ。


 さらに詳しく見ていくと、うちの学校の制服で女子生徒で……。


 あれは…………綾辻穂香だわ。


 あ、綾辻穂香とハルくんが一緒に帰っている……!? ウソウソ!どうして? もしかして、やっぱりあの二人って……!


「あんの泥棒猫ビッチぃ……」 


 き、きっと騙されているんだわ。ハルくんは転校して来たばかりのあの淫乱ビッチに言い寄られて、優しいから嫌々付き合ってあげているんだわ……!それなのにあの泥棒猫は図々しく……。


 私は二人に見つからないように物陰に隠れ、少し離れたところから改めて二人の様子を確認することにした。


 えっと……双眼鏡はと。いつでも校内で遠くからハルくんのことを確認するために持ち歩いているやつが鞄の中に……。あったわ。

 

 鞄から取り出した双眼鏡を構え、二人の様子を拡大する。すると私の目の中に衝撃の映像が飛び込んできた。


 綾辻穂香がニコニコしながら図々しくハルくんの袖をちょこんとつまんでいるっ……!!


「はい破廉恥いいいいいい!! ビッチィィ、ビッチャァァー、ビッチェストオオオオオオ!!」


 破廉恥破廉恥破廉恥いいいいいいい!!ビッチェストまではいかなくても、ビッチャーは確実!綾辻穂香はビッチャーよ!ビッチでは収まらないわ!アブドーラザ・ビッチャーよ!!


 地べたをのたうち回る私の横を、手をつないだ子どもと母親が通る。


「ママー。あのお姉ちゃん急に叫びながら倒れちゃってどうしたのかなぁー?」


「み、見ちゃダメよたっくん!」


 公道で一通りブレイクダンスのようにのたうち回った後、私はフラフラと立ち上がった。やるわね……。綾辻穂香。行動の一つ一つに中々破壊力があるわ。 

 私を見ていた親子が何か言っていた気もするけど今はそんな場合じゃない。早く、早くあの二人を引き剥がさなきゃ。


 と、飛び出そうとしたところで足が止まる。


 さ、さすがに急に目の前に現れるのは不自然かしら。ハルくんに変な女と思われることだけは絶対に避けたいし……。

 と、とりあえずもう少し近くで様子を。


 気付かれないギリギリまで近づき、手頃な物陰から二人の会話に聞き耳をたてる。

 もし二人がイチャイチャしてたら生徒会長として二人の間に割り込まなきゃ。うちの生徒が商店街で破廉恥な会話をしているやんて噂されたら大変だもの。


「普段から話すようなヤツだと部活に入っていないヤツは一人もいない……」


 聞こえてきたのは良く通るハルくんの声だ。どうやら二人で先程の部活の話をしているらしい。


 これはチャンスだわ!二人にはやっぱり三人目のあてはいないみたい。今の時期から部活に入ろうなんて生徒は見つかりっこないもの。

 これを上手く誘導すれば私の思惑が……。


 私はハルくんに向かって念じた。

 ハルくん!いるじゃない!あなたの知り合いでも部活に入っていない人間が!頭のいいハルくんならきっと思い出せるわ!頑張って思い出して!


「どうしたの? ハルくん」


 綾辻穂香が覗き込むようにハルくんに聞く。


「いや、一人だけ部活に入っていない知り合いがいることを思い出したんだけど……」


 やった!奇跡だわ!私のテレパシーがハルくんに通じた!?すごいすごい!ハルくんすごい!


「ええー!やったやったぁ!その人を誘ってみようよ!」


「でもその人はすごい忙しい人だし、多分入ってくれないと思うんだよな」


 これは間違いない……!ハルくんの思惑と私の思惑が一致しているわ。後は上手くタイミングを見つけて出ていくだけ!


「そんなの聞いてみなきゃわからないじゃんっ!」


「いや、でもなあ……」


「いいじゃんいいじゃんっ!とりあえず誘ってみようよっ!」


「まあじゃあ声だけ掛けてみるか」


「やったぁーっ!さっすがハルくん!もう部員が見つかっちゃったね♪」


 ふふふ。綾辻穂香。自ら茨の道に飛び込もうとしていることも知らずに……。


「いや待て。期待しない方がいいと思うぞ。僕の予想では八割方入らないと思うし」


 大丈夫よハルくん。本来なら絶対に部活なんてやらないけど状況が状況なの。


「そんなに入る可能性が低いの? うちのクラスの人?」


「いや、先輩。二年生」


「え? ハルくんの先輩の知り合いってもしかして……」


「そう。生徒会長」


 さぁっすがハルくん♪やっぱり同じことを考えていたのね!タイミングは今しかない!


 私は地面を強く蹴り、二人の前に飛び出した。


「話は聞かせてもらったわ!」


「か、会長!?」


「あーっ!おっぱい会長!」


「なっ……!おっぱっ……!だ、誰がおっぱい会長よ!」


 またハルくんの前で破廉恥な言葉を……!やっぱりこの女をハルくんと二人っきりになんて絶対にしちゃダメだわ。


 私の作戦は二人が作る同好会の三人目に私がなること。


 私が二人の同好会に入ってしまえば、ハルくんと綾辻穂香が二人っきりになることは無いし、部活という名目でハルくんともたくさんたぁーくさん会える。


 まさにこれこそ一挙両得の作戦だわ!


 私が綾辻穂香を睨み付けると向こうも「むーっ!」と睨み返してきた。


 ふふふ。上等だわ。ぜったいぜぇーったいにハルくんは渡さないんだからっ!

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