綾辻穂香は感動する⑥
よりによってサッカー部だと!?
あ、あんなチャラついた連中の一人と綾辻が……。
うちの高校のサッカー部員はおよそ八十パーセントが彼女持ちで、半数以上が染髪童貞を喪失しているチャラ男集団だ。
部活と体育祭と文化祭にすべての情熱を注ぎ、親から貰った小遣いで同朋とカラオケに行き余熱原始を歌う生物だ。
なぁーにが部活だ、なぁーにが文化祭だ。古今東西学生の本文は勉強だっつーの! 染髪じゃないっつーの!
「……王子? どうかした?」
目の前の金髪美少女はワナワナと震える僕に向かって無表情で首を傾げる。
「江末! そいつは茶髪だったか!?」
江末はフルフルと首を横に振り、
「……金髪」
「ォマイガッ!」
ゴールデン! ナナメウエー!
江末はショックを受ける僕を見つめながら、淀みない口調で続けた。
「……両耳と顎に大きなピアスをして」
「ジィィーザスッ!!」
「……上半身裸で」
「パードゥンンンン!?」
なんてこった! こいつは僕の想像を絶するほどチャラ……、
「……右手に槍を持ってた」
……くない! 全然チャラくない! ただの部族!
「アフリカのぶぞぉぉぉぉッく!!」
とりあえずその場でブリッジをして叫んだ。
「……ウソ。金髪から先は冗談」
ブリッジをしている僕を冷めた視線で見つめる江末。
「この一大事に嘘をつくなよ!」
「……王子がおかしくなったから乗っかっただけ」
「ええい紛らわしい! つまりは金髪のサッカー部の輩が綾辻を連れて行ったってことか!?」
「……連れて行かれたかはわからないけど、まあそんな感じ」
サッカー部で金髪。自分本意でモラルも常識も無い人間に決まっている。大学のミスコン運営サークルくらいしょーもない輩だ。良くて社会悪。最悪の場合は性犯罪者。
うぬぬぬ。生かしてはおけぬ。
「よし決めた。もう殺そう」
「……お、王子。清々しい顔で言う言葉じゃない。できれば生かす方向で考えて?」
「ダメだ。どうせ性犯罪者だ。殺す」
「……偏見が爆発している。一度冷静になるべき」
「ぼくが冷静じゃないというのか?」
「……だいぶ。冷静な人間はブリッジしながらアフリカの部族ぅーって叫ばない」
……。
冷静に考えればそうである。僕ったら我を失っていたのかしら。テヘペロ。いやテヘペロは古い。
「……冷静になった?」
「最初から冷静だし!」
江末はやれやれといった様子でため息をつき、
「……王子と麗は本当にそっくり。全く同じ暴走のしかた」
僕と会長が似てる? あの学園の中心である女傑と勉強以外はヒョウタンゴミムシの僕が?
「もういい! とりあえず行くぞ江末!」
とにかく今は綾辻だ! サンタさんを信じている絶滅危惧種の女子高生がチャラ男の毒牙にかかる前に助けなくては!
「……どこに?」
首を傾げる江末。
「綾辻のところに決まっているだろう!」
「……確かに王子一人で行かせるととんでもない暴走をしそう。我も行く」
別にしないし暴走なんて。
僕と江末は勢い良く外に飛び出し、綾辻の後を追った。
一刻も早く綾辻を助けなくては!
「どっちだ!? 右か? 左か!?」
「……我の予想だと右」
よおし右か! 右なんだな!?
「突撃じゃあああーーっ!」
待ってろ綾辻! 今助けてやるからな!!




