特別。
「じゃあ、私もうそろそろ行きますからねっ。
ご飯冷める前に食べちゃってくださいねっ」
お盆からお味噌汁と白米と焼き鮭とお茶を机に下す。
「お前、いや、凛火。
俺んとこに嫁に来ないか。」
「真顔で言わないでください全力でお断りします。」
えぇー。と言っている綾瀬さんをおいて
お盆を持ってさっさと部屋の外に出る。
「ちぃーお待たせっ、早くご飯食べに行こうかっ」
「ナァーンっ」
一足先を歩きだしたちぃーが嬉しそうな声で鳴いた。
*
「久子さん行ってきましたよっ...。」
「あららっ?凛ちゃんご機嫌斜めねっ?
綾瀬さんに何もされなかったかしら?」
キョトンとした表情で問題発言を言う久子さん。
「されましたよッだから怒ってるんですーッ!」
カタンッと音を立ててお盆を置く。
「良いじゃないの~っ。
あのそっけない綾瀬先生が心開いてくれてるんだからっ」
「えッ?そっけないッ?どこがッ?」
思わず久子さんの顔をガン見してしまう。
私はあの人に今まで一度たりともそっけなくされたことがない気がするのだが。
「知らないのっ?たまにいるのよー、
どっかからか嗅ぎつけて来たのか知らないけど
綾瀬さん目的で来る子達。
大体綾瀬さんそっけなく帰れって
どんなに可愛い見た目の子でも言うのよ~?
なのにあの綾瀬さんが自分から積極的に向かってくなんてっ、ふふっ
凛ちゃん貴方すごいのねっ特別なのよっ?」
「...。」
綾瀬さんの優しく微笑む顔が頭に浮かぶ。
「...別にからかわれてるだけですよっ。
私も朝食にしますね。」
「え、えぇ、?」
*
ちぃーと並び黙々と朝食を食べる。
此処は食堂的な場所で一人で泊まってる人は、わりと利用している人が多い。
今回は一人で泊まっている人がいないためちぃーと私一人だけ。
「...。」
シンとしているせいか、
遠くでお手伝いさんがバタバタとしている音までよく聞こえる。
「お、やけに大人しいなぁ、もしかしてまださっきのこと怒ってんのかっ?」
頭にポンッと手を置かれビクッとし振り返る。
「あっ、綾瀬さん...。」
目に見えて嫌そうな顔をし頭に置かれた手を払った。
「えっ、マジで怒ってる?」
片手で持っていたお盆を机に置き、
隣で膝立をして私の顔を除く綾瀬さん。
「別に怒ってるわけじゃないです。
ただ.....。」
「ただ?」
「...ムカつくだけです。」
「それを怒っているっていうんだよ。」
*