銀髪の男子。
少し寒いと感じるほど冷房が効いている誰一人居ない図書館にて
パラリとまた一ページ本を捲る。
今日は暇潰しに図書館に来ている。
小さいと思っていた図書館は奥の方へ行ったら意外と大きく、
マンガからマイナー向けの小説までぎっちりと
高くて大きい本棚に詰まっていた。
この村には意外とよく見ればかなり子供がいるためだろう。
またパラリとページを捲る。
「見ない顔だな?此処猫連れてきていいのか?」
ふと後ろから声がし振り返る。
そこにはどこか和風を感じる
銀髪の綺麗系の不良という雰囲気の男子が見下ろしていた。
「オイ聞いてんのか?」
男子の勾玉のピアスがキラリと光る。
「あ、此処の近くの旅館に夏休みだけ泊まってるんです。
猫は特別に許可をもらってっ...。」
変に絡んだら久子さんが心配すると思い
あまり好意的な目を向けないようにする。
「...?」
「な、なんですか、そんなに見て...。」
「いや、別に。」
あからさまにじっと見ていた銀髪の男子。
一体何が気になったのかと思っていると、
スッと当たり前かのように隣に座ってきた。
「んんっ!?」
「別に隣座るくらい良いだろ。席空いてんだし。」
「私、別に何も言ってないし。」
「顔に書いてある。」
「なっ...!?」
*
ちぃーが欠伸をし伸びながら起き上がる。
ふと時計を見ると夜の8時過ぎ、
久子さんに図書館に行くから少し遅くなるとは伝えていたが
流石に遅すぎである。
「やっば、帰んないとっ。」
ガラっと音を立て慌てて立ち上がると、
隣の銀髪が嫌でも目に入った。
「あ...ずっと居たんだ。」
長机に伏せてスゥスゥと静かに寝息を立てている。
こちらに顔を向けているので、
長い睫毛と子供のような寝顔もバッチリ見える。
「...はぁ。」
溜息をつき、しょうがないので体を揺すって起す。
「ほらっ、ねぇー起きてっ。」
「ん゛~っ...」
唸りはするものの全くと言っていいほど起きる気配がない。
置いて行くわけにもいかず銀髪男子の頬を少し強めに抓った。
「ッてぇなッ!!」
バッと起き上がった寝ぼけているであろう銀髪の男子の拳が振り下ろされそうになる。
「ッぁ...!?」
とっさに頭を守り目を閉じる。
だか、ビリッと電気が走ったような音が聞こえ
思っていた衝撃は頭に来なかった。
「えっ...。」
「ッ...!?
あっ、わっわりぃっ大丈夫かッ!?」
銀髪の男子が私の頬に手を添えて顔を覗き込む。
よく見ると男子の私を殴ろうとした方の手から血が出ていた。
「えっ、それ大丈夫なのっ?血出てるッ...」
両手で銀髪の男子の腕を掴む。
「あ、あぁ、....大丈夫だよ、...。」
目を逸らす銀髪の男子。
何かを隠しているようにも見えた。
*
「送ってく。」
手洗いに行き血を流してきた銀髪の男子が図書館の出入り口で言った。
「えっ、悪いよ。
なんかよく分んないけど私がケガさせちゃったみたいだし。」
「それだったら。」
先ほどまで血塗れだった手を見せる男子。
さっきまだあった焦げたような傷がほとんど治りかけていた。
「俺昔から傷の治り早い方なんだよ、だから大丈夫、送ってく。」
私がさっき帰ろうと踏み出した方向を歩いてく銀髪の男子。
「あっ、待ってっ」
ちぃーと小走りをし男子に追いつく。
「お前、名前何?」
そっけなく聞く銀髪の男子。
「宮野凛火っ。」
「凛火か。俺は、...イナリ。」
少し黙ってから言った名前。
「イナリ?」
「そ、イナリ。」
怠そうに頭の後ろに手を組むイナリ。
綾瀬さんといい、どうして此処の男たちは皆怠そうなのだろう。
*