忘れた頃に。
「....。」
「ッ...。」
帰り道の山の一本道の中、同じ青い顔、表情をし止まった私と綾瀬さん。
「...どうした。」
「オイッ、置いてくぞお前らッ!」
もちろん皆はそんな誰かが止まっていればなんだと思い声をかけ振り向く、
だが、
「いや、うん。」
現在私達の前には久々にほぼ存在を忘れかけていたその、なんだ、
モノ がいた。
「いっそのこと俺らだけ置いて行ってもらった方が動きやすい...。」
「ハァ?」
此処に居る私達を除いた人達は見えない。
私達だけ見えるということは私達だけ知らぬ振りをしようと
皆と違い透けては通れないからその体にぶち当たってしまう。
かと言って、目の前で逃げまどったり争った日には...うん。
そんなことを悶々と考えていると綾瀬さんのスマホがタイミング良く鳴った。
綾瀬さんは画面を見た後、顔をさっきよりさらに青くし電話に出た。
あぁ、多分この顔見たことある電話してきたのは
綾瀬さんの担当の佐藤さんだろう。
「あ、...あー...、はぃ、すいません。はぃ...。」
私達に背を向けまるで営業マンかのようにペコペコした後電話を切り、
此方を向いた。
「凛火、...後は任せたッ!!!!」
そう言ってすごい速さで私達とモノを避け山を下りて行ってしまった綾瀬さん。
「ェエッ!ハァアアアッ!?!?!」
そんな私達二人の不可解な行動を呆然と見る皆。
「こんな時にッ、
あー、また佐藤さんに綾瀬さん取られたー...。」
タイミングが良いんだか悪いんだかわからない佐藤さんの電話に肩を落とす。
「彼氏が友人との遊びを優先して行っちゃった時みたいなこと言うのね。」
優美があ、これ見たことあるわ。というような表情をして言う。
「いや、何言ってんの?」
「え...。」
「え、お兄ちゃん何本気にしてんのッ。」
*
あの後、一番真面な優里に皆を任せ先に帰ってもらった。
「さぁー...って、...どうするか...。」
『お前は逃げ足と腕が強いから大丈夫だよなッ。』
そう任されたが。
「綾瀬さんホントいいかげんなんだからッ、」
でも、
「伊達にこの数か月追い掛け回されてないっつーのッ...、」
ほぼ無傷で殆ど一人で行動してきたんだ、
今更こんな図体だけっぽい奴にやられててたまるか。
「やってやろうじゃないのッ、
ッこっち来いよバァァァーカッ!!!」
挑発に乗って段々と速度を上げて此方に来るモノ。
皆に被害が及ぶ前に早く奥へ行こう。