口より先に噛が出る。
「久々に写真撮りたいんで
明後日どっか山の景色が綺麗な所連れてってくださいっ」
そう凛火が言ったのは昨日で、
あんな派手な友人達が来たことだ、自然派な凛火ならまだしも完全都会派な集団に見える、
此処は先延ばしにするべきだと思い、風呂あがりそのまま凛火の部屋まで聞きに向かう。
凛火の部屋の前に着くと部屋の襖が少し開いており中が見えた。
凛火はあんなにも仲が悪そうにも見えた銀髪の幼馴染の胡坐の中に座り
背凭れにしており、二人してスマホを弄り、
黒髪の方も銀髪の背中に寄りかかり本を読んでいるといった
普通では異常な仲の良さだった、
それと同時に凛火の男がくっ付いても抵抗がないのは此処からかと納得した。
部屋は男女で分かれてた気がしたが。
「凛火。」
俺がそう部屋に入り呼ぶと顔だけ此方に向けキョトンとする凛火。
「なんですか綾瀬さんっ。」
「この前言ってた写真撮り行きたいから連れてけってのはどうするのかと。」
喋っている間にもじりじりと凛火以外の視線を感じる。
チラッと視線の方を見るとやはり幼馴染たちが此方を見ていた、
銀髪の方はあからさまに獲物を取られないように睨みつけている獣のようで、
黒髪の方は眠そうな目だが、
何かを探るような何処となく鋭い目をしていた。
「もちろん行くに決まってますよ?
先に約束したの綾瀬さんだしっ。」
当たり前かのように言う凛火に再び目を向ける。
「そ、そうか。」
「...?」
どうやら凛火の優先順位によると俺は上の方らしい。
*
「ん゛ん...。」
いつの間にか止まっていたエアコンのせいで寝苦しさを感じ起き上がろうとするが
どうも体に圧迫感を感じた、
昨日は流石に寝る時は男女で分かれようとしたが、
『いい加減自分の部屋に戻ってよ。』
『ヤダって言ってんだろうがッ』
『まぁまぁ。』
こんな感じでそのまま二人が私の部屋に居座った。
あとの友人達は、偶には幼馴染水入らずなっと
訳の分からないことを言い銀達の要望に了承してくれた。
良い人達なんだか悪い人達なんだかわからない。
まぁ、つまりこの言ったら居心地良い圧迫感は二人の内何方かだ、
後ろからホールドされているので振り向けないからわからないが、
多分これは銀だ。
理由は一つだ、目の前に美しい寝顔の黒髪の王子様がいる。
とりあえず起き上がろうともがく。
「ッ!?イ゛ッイタッ!?」
銀に起き上がるなと言わんばかりに肩にガブっと
寝起きのためいつもよりかは力は弱いが噛みつかれた。
ホールドの力も強まった。
「口で言え、口で...。」
「...銀が、口で言うわけないだろ...。」
いつの間に起きていたのか私のもう片側で
いつも以上に眠そうに細く目を開けてボソボソと言う黒髪王子 兼 優里。
「だよね...、口より先に手が出るって例えがあるけど、
銀はリアルに噛みが先に出るもんね。」
「...諦めろ。」
そう言ってまた夢の世界へ旅立ってしまった優里、
私のことは助けないらしい。