幼馴染。
「...悠里?」
挨拶しにもう一人久子さんの元へ行っていると兄が言うので、
皆で向かうと、そこには連絡はたまに摂っていたものの
だいぶ久しぶりに会う幼馴染の一人の
結城悠里が久子さんと一緒にいた。
「...よう。」
悠里は他の皆とは違い、
派手なのがあまり好きではなくシンプルイズベストみたいな性格で、
割と周り男子達より物静かな大人って感じで、
良い顔をしていてちょいちょいモテていた。
そして、
私が荒れていた時はかなり気を使って様子を見に来てくれていた。
信頼度はこの場では上位だ。
「あらっ綾瀬さんまでっ、
ちょっと綾瀬さ〜んっ幼馴染と言うライバルが凛ちゃんを迎え来ちゃったわよ〜っ」
ニヤニヤと綾瀬さんを見る久子さんにまた兄がイライラしだす。
「久子さんッ、
悠里はまだ認めてやるけど、この綾瀬って男は俺認めませんよッ。」
「あらその見た目でよく言うわお父さん。」
また始まった久子さんのお兄ちゃん弄り。
昔から久子さんは私の周りで目を光らせる兄をからかうのが好きだった。
「お父さんではなくお兄ちゃんですっ。」
「もはやセコムとかSPが正しいわね。」
その見た目も凛ちゃんのためだものね?と感心したように言う久子さん。
「ふふッ。このピアスも全部凛火に寄る虫を撃退するためさッ」
「広樹さんカッケー!」
目をキラキラさせる我が後輩にドヤ顔をする兄。
「その穴を開けるのは全部私だから勘弁して欲しいんだけど、
もう増やさないでね。」
ドヤ顔の兄にジト目で言う。
「あ、やっぱり凛ちゃんが開けないといけないのね。」
「はい、もはや殺意が沸く、3回くらい死んでほしいです。」
コレのせいで私がよけいに目立っていた事もあるくらいだ、
もう不良は卒業した身、良い迷惑だ。
「オイッ!!」
「ヒッ!!」
その後ろからの声に心当たりがあり震え上がる。
「あ、お前やっぱ来たのか。」
「...凛火が怖がるから来るなって言ったのに。」
そう兄と悠里が言う人物は私のもう一人の幼馴染の
田辺銀言ってしまえば幼馴染と言う立場が原因で私が手を挙げられない人だ。
私が母と住んでいるマンションの隣の部屋で、
昔から乱暴で私が女ってことを気にせず殴ってくる。
そのクセ何故かピンチの時は助けてくれる、
私が不良と言う立場になった時もバランスを見てたまに声をかける悠里とは違い、
お前は危なっかしいからとか言って一緒に付いてきた、
まぁ、大人で冷静で頭脳な悠里とは真逆な子供で乱暴で不器用な人なんだ。
決して悪い人じゃないと思う、...多分。
ちなみにマンションのもう片側隣に優里家だ。
「ゴラッ、逃げんなよッ。」
そう言いそろりと逃げようとしていた私の髪と腕を引っ掴み、
私の腕に歯を立て噛み付く。
「イダダタッ!!?だからっかっ、噛まないでよッ!」
昔から乱暴でと言ったが未だに私の髪を引っ張ったり体に噛み付いたりするのは
端から見たら異常なので辞めてほしくて避けている時もある。
「本当噛み癖直してって言ってるのに!」
「逃げるお前が悪いッ。」
「理不尽っ!!」
私の今の言葉にキレてかまた噛みつこうとした銀に
綾瀬さんが黙って止めに入ろうとするが、
スッと先にいつもの如く悠里が銀を後ろからホールドする。
「離せよッ悠里ッ、」
弱々しく抵抗する銀。
銀は小学校低学年の頃、私に殴りかかろうとしていた時に止めに入った悠里を
一度誤って大怪我させたことがあり、
それ以来何故か銀はトラウマみたいに悠里にはあまり逆らえなくなってしまっている。
「...綾瀬さんと久子さんが困ってるから止めろよ。」
「っ...たくっ、しょうがねーな...。」
一言で大人しくなってしまった銀。
綾瀬さんだけじゃなく皆んなして心の中で悠里に感心する。
そんな中私は、
銀は昔の罪悪感の反面本当に親友として悠里のことが大好きなんだなとも思った。