父。
「ただいま〜。」
「ただいハックシュンッ!」
旅館に共に戻った俺達は
俺はアレルギーでくしゃみ出、
凛火が疲れきったかのように言葉を吐く、すると、
ドタバタと騒がしい音を立てて久子さんが玄関まで迎えに来た。
「おかえりなさい二人共っ、あらっ?」
キラキラした顔でいつも通りの言葉が飛ぶかと思ったが、
久子さんはポカンとした顔をした。
「あらら?犬だけだったわよね?
その猫ちゃんは?」
俺の腕に抱かれている小汚い子猫を指差す久子さん。
「...。」
「っ、じ、実は帰り道捨てられてまして、」
「あーっ!だから凛ちゃんの機嫌が悪いのね!」
凛火の代わりに俺が言うと、
久子さんは納得したようにポンッと掌に拳を置いた。
「ちょっと猫ちゃん見せてちょうだいっ?」
「えっ、でも着物、」
気を使う凛火に対し大丈夫大丈夫と言い俺が抱いていた子猫を抱く久子さん。
「ふふっ、猫ね〜、懐かしいわね〜、」
シトリーを目の前にしてそんなことを呟く久子さん。
「ふふっ、久子さんはねー、凛ちゃんにも兄さんのようにパートナーが出来て、
結婚して、赤ちゃん産んで、幸せな家庭を築いてほしいと思ってるのよーっ、
今の凛ちゃんにはそれができるのよっ。」
急にそんなことを言いだす久子さんに凛火が戸惑いの表情を浮かべ、
適当に話をはぐらかし部屋に戻って行ってしまった。
*
子犬と子猫を連れ自分の部屋に戻った凛火が
忘れ物をしたと俺の部屋に来ていた。
「なぁ凛火、...聞いて良いか、」
「...うん。」
人の布団をゴソゴソとし物を探す凛火に声をかけると、
察しの良い凛火は静かに頷いた。
「...前から気になってた、お前の家族、お前の父さんのこと。」
凛火の手が止まる。
「お父さんはね...、私が、...殺したの...。」
振り向きもせずそう答えた。
*
「オイ、凛火、それ炊飯器だよな。」
いつも通り久子さんによって俺の部屋での夕飯になると思っていたが、
俺の予想とは遥かに違うものだった。
「そうですけど...?」
俺の部屋ということは変わらないが明らかに視覚的に、
目の前で可笑しなことが起こっている。
「そんな炊飯器ごと持ってこなくてよくね?」
可笑しなこととは目の前の凛火の飯の量だった。
「今日はいっぱい食べたい気分なんです。邪魔しないでください。」
そう淡々と言い黙々と食べ始める凛火。
「はあ...?」
*