安心感。
覚えのある少し圧迫感を感じる感覚に目が覚めた。
「ん、...あ。」
その圧迫感に覚えがあるのは当たり前だった。
私は綾瀬さんの腕の中にいた、
けど前に一回やられたとはいえやけにその感覚に慣れていた、
何故か懐かしいとも感じた。
「最近会ったばかりなのにな...。」
顔だけ少し上に向け暗い中ちぃーの姿を探す。
微かに寝息が聞こえる、まぁもしかしたら綾瀬さんのかもしれないが。
私が動いたせいか、綾瀬さんの腕の力が強まる。
普通だったら、
仮にもイケメンとこんな状況普通だったら恥ずかしくて死にそうになりそうだが、
何故か謎の安心感で不思議な感覚だった。
ある意味人肌恋しい年頃の思春期17歳と独り身長い27歳、
よくよく考えればこの状況は互いを慰める的な何かに該当するのか?分らないけど。
元を辿れば何故私は年の離れた綾瀬さんと一緒にいることが多いのだろうか、
綾瀬さんから来るから?いや、私から綾瀬さんの所に行く時も多々ある、
第一こんなに一緒に居るのにこんなに抱き着かれて寝ているのに恋人でも何でもない、
ボディータッチの多い友達なのか将又ただの旅館の女将の姪っ子とその旅館のお客なのか、
私達の関係は何に当て嵌るんだろう、
私達の関係に名前はあるのだろうか。
*
少し肌寒さを感じ目が覚めた、
あぁ、迷走中にまた寝てしまったのかと
まだ寝起きで回転していない頭で考える。
隣を確認するもすでに綾瀬さんは居ない、
先に起きて何処かへ行ってしまったのか、
「...。」
ふとエアコンの温度を見る、24と記されていた、
綾瀬さんも居ないし、だから寒かったのかと納得した。
「ナーン。」
ちぃーがまだ眠いのか目を瞑ったまま静かに鳴く。
「まだ寝てな。」
エアコンの温度を27まで上げ、バスケットに入ったちぃーに
タオルケットをかけた。
*
「おはようございま〜す...」
いつも通り暖簾を開いて挨拶をする。
「あらっ!凛ちゃん!おはよう!」
いつもより元気な久子さんが挨拶を返してくれた、
その顔は昨日何かあったッ?と書いてあるかのように感情が読み取れた。
「別に、昨日は特に久子さんが喜ぶようなことはありませんでしたよ...。」
真顔で言う私に久子さんが口に手を当ててハッとした。
「他心通_」
「顔に書いてありますから。」
「まぁっ!顔に出てたの〜、久子さんやっちまったぜっ」
舌をぺろっと出して頭をコツンっとする久子さん、
あれ、この人何歳だっけと考えてしまった。
「あっ、そういえばっ!綾瀬さんもう外出たわよ〜っ」
「そうですか。」
どうせ仕事家だろうと興味なさそうにしている私に久子さんがまたニヤニヤとし始める。
「なんですか...。」
「うふふっ、綾瀬さんねーっ出かける前にわざわざ此処に寄って、
凛火はまだ気持ち良さそうに寝てるから
起こさないでやってくださいって言いに来たのよ〜っ」
楽しそうに私の反応を見ている久子さんを他所に私は
じゃあエアコンの温度上げといてよ。
と、辛辣なことを考えていた。