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風鈴の音。  作者: 椎羅儀 経
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鳥居。

「...?」


鳥居の向こう側から何か、何かを感じる。


薄く霧がかって見えるそこに、ちぃーと足を踏み入れる。


「ッ...。」


クラッと目眩がした気がした。

ちぃーの方を見るが、ちぃーは何食わぬ顔で薄霧を突き進んでいる。

私は溜息を吐きながらも後を追う。



「ちぃーっ、待ってっ、ち__」


霧が晴れた。


「な、何、此処...。」


そこには、

まるで世界がそこからぽっかり変わったかのように

青々とした野原が広がっている。


「ナーン」


どんどん野原の中心に行くちぃーを追いかけると

小川も見えてきた。


「あれっ...?」


ちぃーが止まったそこには

人工的のような木のレンガの道のようなものがあった。


その道を目で辿ると、小さくも大きくもない

そこに馴染むような一軒の平家が建っていた。

丁度大樹の下でいい感じの日陰になっており此処よりもっと涼しそうだ。


「ちぃーっ行くよっ」


ちぃーを連れ、木のレンガの道を通りその平家に歩いていく。


すると、

丁度家の中から見たことのある癖毛頭の男の人が出てきた。


「あっ、あのっすみませんっ!」


少し離れているので少し大声で声をかける。


男の人がバッと振り返った。

その時、チリーンと風鈴の音が鳴った気がした。


「やっぱり、貴方旅館にいた人ですよねっ?」


そんな私の言葉も届いているのやら

目を見開いてポカンとしている。

何に対してポカンとしているのだか。


男の人はハッとすると

私に手招きをした。


「なんですか...?」


ちぃーと男の人の下へ行き小首を傾げると

グッと両肩を捕まれ、この前より少しすっきりとした顔が近づく。


前と違い、隈と無精髭がない。

見た目も軽く五、六歳若返ったかのようだ。

肩を掴まれたことに対するビックリも忘れ、

男の人のその綺麗な深緑の片目に目が行ってしまう。


「ッ...。」


綺麗だな。そんなことを思っていると

肩を掴んでいる手に力が込められた。


「お前旅館の女将さんの親戚だよなッ?どこから此処に入ってきたッ」


「えっ、ちぃ、私の猫が竹林に入ってったから追いかけたら、」


「此処に来たのかッ?」


「途中に鳥居あって、それ潜ったら、此処に繋がってて...」


ズバズバと言われている間にも男の人の顔が近づき

私は背中を逸らせていったので体制が辛い。


この人は何をそんなに焦っているのだろうか。


「あのっ、肩っ。」


そんな私の言葉に正気に戻ったのか

わるいッと言いバッと離れる男の人。


「此処って何なんですか?、パッと見はいいけど、

 どこかおかしい気がするんですけど。」


掴まれていた肩をさすりながら言うと

男の人は私の足もとにいたちぃーの前にしゃがみ込んだ。


「...本来此処には人は入れないんだよ。」


*





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