年。
「凛火おかえりッ...!と、もう一人誰っ?」
「ただいまーっ。イナリだよっ友達。」
イナリが旅館まで送ると言い、お言葉に甘えて送ってもらうと、
合羽を着た上機嫌のライヤちゃんが外にいた。
「人魚か?」
今回も鼻が良いイナリ、ライヤちゃんの種族を一瞬で当てる。
「そうだよっ__って、ライヤちゃんこんな所で何してるの?」
合羽を着ていただけ良いがこんな朝早くからどうしてこんな所にいるのか不明だ。
「人魚は雨が好きなんだよ、
外国の人魚も同じならきっと雨につられて出て来たんだよな。」
相変わらず知識も多いイナリ、私は人魚に日本人も外国人もいることを知らなかった。
まず、人と言うの正解なのだろうか。
「そうっ、人魚は雨が好きっ、だから雨降ってるから外出てきたっ...!」
クルンっと回るライヤちゃん。
「雨も良いけど私はお腹が空いたなぁ...。」
きっと私にしか聞こえてはいないと思うがさっきから、
クゥ~...っとお腹が鳴っている。
「お前のその体系はそこからかっ。」
私の体を見渡しながらニヤッとしながら言うイナリ。
「はぁ?太ってるって言いたいのッ?」
少し声を低くして手を構える。
「別に太ってるとは言ってねぇーよぉ?その体系って言ってるんだよ。
隣の人魚さんはそうでもないみたいだけどなー?」
チラッとライヤちゃんを見るイナリ。
「イナリ、年上に失礼。」
「へいへい、どうもすいませんした。」
ムッと頬を膨らましたライヤちゃんの言葉が気になった。
「えっ年上?年下じゃないの?」
私の言葉にポカンとする二人。
「人魚は年を取るのが遅いんだよ。
いくら幼い見た目でも人間の年だとエライ年だったりするんだぜ?」
「へぇーッ、ずっと年下と思ってたッ。
ごめんなさいっ、言葉遣いとか直した方が良いですか?」
ライヤちゃんの方を向くとライヤちゃんはそのままでいいと言ってくれた。
「所で~、実際の所、何歳なの...?」
一応女の人なので控えめに聞く。
「多分...、二世紀くらい前、多分だけど、そんなだと思う、数えてないし。」
「っ...!」
「ッ...。」
驚きに言葉も出ず二世紀前ッ...!と固まってしまった、
きっとイナリも固まっているので同じことを思っていただろう。
「へ、へぇーっ!凄いねっ!にっ二世紀ッ!」
私の言葉に少し誇らしげにドヤ顔をするライヤちゃん。
「大したことない、人魚で言う12歳、私まだまだ成長するっ。」
ライヤちゃんの大人になった姿を想像すると一度見てみたかったなと思った。
「あっ、久子が今日の朝ご飯はいつもより美味しいよって言ってたッ。」
話を変えるライヤちゃんにお腹が空いている状態でそんなこと言われたら
たまらずまたクゥ~っとお腹が鳴った。
「ん?今のお前っ?」
イナリがこっちを向く。
「違う違う違う!」
またニヤァとするイナリ。
どうしてこの男はこんなにも意地悪なのだか、と言うか
なんで私も一緒にいるのだか。
「とっとにかくッ!旅館に戻ろッ?
イナリもうちで食べてきなよっ」
私の提案にニヤニヤするのを止め、頭を掻きながら考え出すイナリ。
「いや、いい。」
「え、なんで?遠慮しなくてもいいのに、イナリらしくない~。」
私の言葉に今度はムッとする。
「イナリらしくないってなんだよッ、俺は元から控えめだッ
まぁ、別に遠慮してるわけじゃねぇーよ。
また今度な、じゃーな。」
「えっ、ちょっ。じゃ、じゃーねっ?」
さっさと自分の家の方向に行ってしまうイナリを
ライヤちゃんと不思議に思いながら見ていた。