意識。
「人間じゃない...?」
綾瀬さんがありえないという顔をする。
「ほらっ、あれ、」
優々と泳いでいるライアちゃんを指指すと綾瀬さんは視点をそこに定めた。
「っ...、」
綾瀬さんが眉間にしわを寄せ、苦虫を噛み潰したような顔をする。
「凛火、行くぞッ...。」
「えッ...、」
急に手首を掴まれ此処から連れ出そうとする綾瀬さん。
「まっ、待ってくださいッ__」
そんな時、
ヒタリと何か冷たい感触が足首に絡みついた。
「ヒィッ...!!?」
もの凄い力で引っ張られ湖に引きずり込まれる。
綾瀬さんの目を見開いた焦った表情が見える、
あぁ、綾瀬さんもあんな表情するんだ。
そんなことを考えながら段々苦しくなる息でやっと自分の状況を理解した。
私はライアちゃんに湖に引きずり込まれたのだろう。
薄くなる意識の中、
綾瀬さんが私をライアちゃんから強引に引き剥がしたことによって意識が再び戻ってくる。
綾瀬さんに抱きしめられながら地上に上がる。
「ゲホッ、ゴホッ、」
「ゴホッハァ、ハァっ、オイ凛火大丈夫かッ?」
荒い息の綾瀬さんが私の頬に自分の手を当て私の顔を覗き込む。
「ッ..、だ、大丈夫ですっ、それよりッ」
綾瀬さんから離れ、湖に自ら手を突っ込む。
「オイ馬鹿ッ_」
「っ...、」
スゥっとライアちゃんが泳ぎ上がってくる、
その手を掴まれる前に掴み、
「そいやぁッ!!!」
「あぅッ!!」
「はぁッ!?」
火事場の馬鹿力で引き上げた。
ザバッと水音を立て地上に上がったライアちゃん。
「ッ...、」
警戒をしながらこちらを睨みつけている。
綾瀬さんが私の前に出て庇おうとするが
その胸を押し綾瀬さんより一歩前に出た。
「私は凛火、こっちが綾瀬さん、
それでさ、...なんで私を湖に引き込んだの?」
外国人のため言葉が通じるか不安だったが、なるべく優しめの声で問いかけると、
ライアちゃんが目を泳がせながらポツリと喋った。
「わ、私のお父さんとお母さんが、
他の人には見られちゃいけないって言ったからっ、その、」
そう手元を弄りながら言うライアちゃん。
「ふふっ。」
言葉が通じたホッと感と、
何処にでもいるような女の子らしさに
ついクスクスと笑いが込み上げてきた。
「な、何...?」
「はぁ~、なんでお前こんな時に笑ってんだよ...。」
綾瀬さんが呆れたような表情をして溜息を吐く。
「だってっ、普通の女の子なんだもんっ。」
私が笑っている間も首を傾げているライアちゃん。
「ねぇっ、ライアちゃんっ一緒に帰ろっ?」
そう言って私はそっとライアちゃんに手を差し出した。
*