条件。
竹林に入り進み、鳥居を潜ろうとした時、
綾瀬さんが目の前で止まり、その背中にぶつかった。
「ンブッ、何ですか急に止まって...。」
不満を言いながら見上げると、
その深緑色の片目と目が合った。
「此処を見つけられる条件覚えてるか。」
「え、確か、そうゆうのが見える人か
或はそうゆうのか?だっけっ?
それがどうしたんですか?」
私が首をかしげると心なしかホッとしたような顔をした綾瀬さん。
「それを覚えていればいい、」
「はっ?」
綾瀬さんはまた前を向くと
吸い込まれるかのように鳥居の中に入っていった。
*
「綾瀬さん、台所借りて良いですか?」
「あぁ。」
綾瀬さんに台所を借り、子犬達のミルクを作り出す。
「あ、そいやぁ、奥の部屋片付けた。」
「そうなんですかっ。」
短く返事をすると綾瀬さんが溜息を吐いて此方に来た。
何だと思いまた斜め上を見上げる。
「子犬とお前の部屋。」
私の頭をポンッポンッとしてから仕事をしにまた机に戻る綾瀬さん。
「...。」
私の部屋。
「い、良いんですか...?」
自分の部屋は初めてだから、思わず確認をしてしまう。
「クドイ。さっさと部屋行って子犬自由にしてやれっ。
ハッグシュンッ‼︎...俺は原稿を書く。」
「はいッ!ちぃー行くよ〜」
キャリーバックを肩に掛け、ちぃーと共に扉を開け部屋に入る。
中は特別広くもなく狭くもなく、丁度良い広さだ。
「ベッドもある!」
歓喜余って大声を出してしまい綾瀬さんがうるせぇーぞーッと
文句を言う声が扉の外から聞こえた。
「すいませーん!
さっ、早く出してあげよっ」
子犬を1匹ずつキャリーバックから出す。
「大きくなったなぁ〜、」
此処二、三日で子犬達は随分と大きくなってきている、
前まで目が開いてもなかったのに今は開いていて、
まだ動きは鈍いが、兄弟同士で遊び的なものまで出来るようにまでなっている。
「凛火〜っ」
「何ですかーっ」
扉を閉めているため声が届きにくいのでなるべく大声で返事をした。
「コーヒーっ」
淹れてくれということだろうか。
「...は〜い。」
子犬達を全て出し終わり、台所の戻る。
今日はよく返事をする日だと思う。
「インスタントがそこの棚にあるからお願いな。」
「了解でーす。」
さっき作り掛けていたミルクと同時にコーヒーを作りながら、
静かなキーボードの音だけが部屋に響く中、綾瀬さんの仕事をしている姿を盗み見る。
相変わらず綺麗な顔をしていると思う。
まぁ、今は無精髭が生えているが。
よくよく考えてみれば綾瀬さんの年は不明のままだ、
あの人も話さないし、私も聞かないし。
私は年は、
『ハァ〜ッ?
ガキじゃないんだけどッ
私だってもう17になってんだからッ‼︎』
我ながら恥ずかしいバレ方をしたものだ。
*